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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第35回 農業の新規事業で必要な「資金調達」のノウハウ(その1)〜資金調達には、世界のトレンドを知ることから〜

食糧の安定供給に対する不安が高まりつつある昨今、食糧生産基盤である農業分野への新規参入が加速しています。今回は、新規参入する際の「資金調達」のノウハウについて解説していきます。

オーストラリアの成功事例

オーストラリアでは、収量向上、人手不足など不測の事態を防ぐ対策、環境負荷の軽減を実現できる「スマート農業」分野への新規参入が盛んです。一般的に、農業業界は他産業に比べて改革スピードが遅いと言われていますが、オーストラリアは他国と比較すると、改革スピードが早い傾向にあります。
また、スマート農業に投資を促進する民間〜政府機関が支援する「スタートアップエコシステム(※)」の動きも活発で、資金調達に成功し新規参入する企業が増加傾向にあります。
(※)民間企業、研究機関、公的機関などがネットワークを作り、スタートアップを生み出しながら発展していくシステム。

スマート農業を駆使して地球環境に貢献

インターネットが普及した現代では、「農業」という枠組みを超え、「グローバルビジネス」のトレンドを意識して事業を構築することが求められます。例えば、年に一度開催されている、気候変動枠組条約締約国会議で、決議された事項は、現在のビジネストレンドとなっていると言えるかもしれません。地球温暖化(脱炭素含む)、水不足を始めとする環境問題を巡り、まだ科学的に証明されているかどうか賛否両論がある段階ですが、明らかに世界の投資先のトレンドは、環境問題に貢献する事業だと言っても過言ではありません。「投資=お金の流れ」は、従来の化石燃料を必要とする「石油ビジネス」から「環境ビジネス」に移行してきており、農業業界も同じトレンドを否応なしに追っていかなければ、資金調達のチャンスを掴むことが難しいのは事実です。それには、スマート農業の技術を駆使して地球環境にどの程度貢献できるかが、資金調達の決め手となります。

資金調達時にPRするポイント

以下は、資金調達時にPRする際の重要ポイントです。これらのポイントを押さえることで、環境問題に貢献する姿勢を示し、投資家からの信頼を得ることができます。

プラスチック容器から紙容器にするビジネスモデルで、環境貢献をPRする場合の一例:
環境に優しい材質であるビジネスモデルだからとPRしても、そのビジネスモデルが名ばかりの環境問題解決のための提言ではないか、または「プラスチック素材=悪、紙素材=善」といったようなトレンドだけを追っている単純なことではないか。
本当に環境に優しい素材や活動が何なのかをPRする前に、「言葉」の裏にある意味について理解した上でPRするべきではないでしょうか?

例えば、オーストラリアの大手スーパーマーケットでは、リンゴの容器に約8割と言っても過言ではないほど「紙」容器が使われています。前述したように、「紙素材=善」という消費者のイメージ(ブランディング)も大きく反映されていると推測できます。しかし、紙の容器による環境問題があるか否かについての知識もPR側は理解し、それでも紙のパッケージが環境問題解決に貢献できるのであれば、消費者に啓蒙活動をするのが筋が通っているのではないでしょうか?

「紙」容器による、環境負荷として考えられる確認すべき事項

  1. 過剰な森林伐採の有無の確認

  2. 紙容器製造用に伐採されたことによるCO2量の増加の確認

  3. 消費者が購入後に実施する紙のリサイクル率(リサイクルのコストを考慮)

  4. 紙容器によるシェルフライフ(貯蔵期間)の短縮(プラスティック容器の方が長期間保存可能)で、廃棄率が上がる可能性の有無の確認

上記のような事項をPR側が認識した上で、それでも紙素材が環境問題解決に貢献できるのであれば、投資先に対して胸を張って、紙容器を使用するための環境貢献型の事業であることを主張できるでしょう。

結論(日本の農業者の皆様へ)

農業者が日本国外問わず資金調達を成功させるためには、環境問題への取り組みを強調し、スマート農業技術を積極的に導入することが不可欠かもしれません。自らのビジネスモデルを持続可能で魅力的なものに構築することが、資金調達の鍵となります。これらのポイントを押さえ、未来の農業を先取りする戦略を立てましょう。

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