見出し画像

オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第47回 ケーススタディで豪州市場の可能性を探る④ 〜マーケティング編その7 SWOT分析で〜

これまで「SWOT分析」を用いて、日本の「いちご生産者」が初めて海外(豪州)市場に展開する際の、以下のケーススタディを解説してきました:

  1. 冬いちごの「高値、高付加価値」の豪州市場展開

  2. 夏いちごの「高値、希少価値」の日本市場展開

その結果、豪州市場においては以下の点がネックであることが明らかになりました:

  • 弱み:①夏場のコールドチェーン、②品質管理

  • 脅威:①品種、ブランド名盗用のリスク、②市場参入の際のトラブル

まずは、豪州市場における「弱み:①夏場のコールドチェーン」に対処する具体的な対策方法を考えていきましょう。

弱み:①夏場のコールドチェーンの対策

海外輸送時のいちごを始めとする生鮮物のコールドチェーン構築は最重要事項です。コールドチェーンとは、低温度(Cold)での輸送が鎖(Chain)のように途切れない「温度管理」流通体系を実現させることです。

日本のいちごは長期輸送に適していない?

一般的に、デリケートな日本のいちご品種は、温度管理が難しく長期輸送に適していないと言われ、オーストラリアを始めとする多くの国では、長期輸送が可能で表皮が固い、アメリカ、ヨーロッパ品種のいちごを扱うパターンが主流です。また、それらは、温度を含めた輸送時のダメージを減らす目的で、花托(かたく)部の3分の1は赤色に熟す前に収穫して輸送します。そのため店頭販売時の品質は、日本いちごに比べ劣ると言われています。

オーストラリアの大手スーパーマーケットで、売られているいちご(アメリカ品種)の一例

しかし、近年では、海外での日本いちご需要が増え続け、それに応じる輸送環境、特に温度管理技術が向上し、海外輸出が可能になっています。ただ、コールドチェーンが整っていない国では、現地到着時に半数以上がロスしてしまうことが多くあります。そのため、入口(生産地)−出口(エンドユーザー)まで一定の温度管理が必要不可欠です。例えば、収穫後のパック詰め完了後からエンドユーザーに渡るまでの全工程を一定の温度「0℃」で管理したとします。その場合は最長で2週間程度の保存が可能になります。

店頭での保存期間が大幅減

輸送時にネックとなるのは、現地の空港に到着後から店頭までの温度管理です。例えば、いちごの貯蔵最適温度の知識が無い輸送会社が空港から出荷先まで輸送するとします。同社は、トラック積込時に30℃の環境下にパレットごと20分間放置して、その後10℃のトラックの庫内で出荷先まで3時間かけて輸送したと仮定します。適正温度は、「0℃」であるにも関わらず、到着時の温度の変化だけでも、10−30℃の温度変化があります。
出荷当日のいちご自体の見た目は輸送中に何も変化が無いとしても、店頭での保存期間が極端に減ってしまいます。また、カビの発生など、品質のダメージリスクが増大します。
この問題を解決するには、現地のパートナーへの教育が不可欠です。温度管理の重要性を理解してもらい、適切な取り扱いを徹底してもらうのです。また、温度管理ロガーを使用して、輸送中の温度変化を追跡することも効果的です。これにより、問題が発生した場合にその原因を特定し、改善策を講じることができます。

まとめ(日本の農業者の皆様へ)

日本のいちご生産者の皆様にお伝えしたいのは、コールドチェーンの構築と管理が海外市場での成功の鍵であるということです。特に豪州市場では、高品質な日本のいちごを現地消費者に届けるためには、一貫した温度管理が必要です。現地のパートナーと緊密に連携し、輸送プロセス全体で温度管理を徹底することが重要です。また、温度管理ロガーを活用し、輸送中の温度データをリアルタイムで監視することで、問題の早期発見と対応が可能となります。
さらに、日本国内でも同様の技術を応用し、国内市場での流通品質を向上させることで、より高い付加価値を持ついちごの生産と販売が期待できます。シンプルで柔らかいニュアンスのアドバイスとしては、常に品質第一を心がけ、技術の進歩を積極的に取り入れる姿勢を持つことが重要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?