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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第32回 農業版「トヨタ生産方式」(その2:作業者の評価制度の導入:「心理メソッド」を用いる教育方法)

前回に引き続き、農業版「トヨタ生産方式」の導入方法について解説します。オーストラリアのような多国籍国家において、作業者に新たなシステムを導入するための教育は容易ではありません。永続的に同システムを運用するには、作業者の心情を捉え、その上で同システムを導入~教育するようにします。

「トヨタ生産方式」を導入しても直ぐにシステムを運用できるわけではありません。長い間、作業者の入れ替わりがなく、ベテランの作業者で構成される現場は、新たなシステムを導入するには困難を極めます。一見、作業スピードに問題ないように見える現場であっても、「トヨタ生産方式」を導入することで、作業者の評価が変わることが多々あります。

ベテランの作業者が多い現場では、管理者はベテラン作業者に多くのタスクを丸投げしているケースは少なくありません。従って、どこで、どのように作業されているか分刻みでチェック・評価されておらず、「何となく」現場が回っていることがよくあます。長年掛けて蓄積された作業者の癖やルーティンを一掃して、「トヨタ生産方式」のような新たな仕組みを導入するには、管理者は導入するメリットについて作業者に根気よく教育しなければなりません。

また、システムを導入できたからといって、数日間しか現場では新システムが機能されず、数週間後には元の状態に戻ってしまうことがあります。誰が作業しても一定の作業クオリティが永続的に維持できなければ、システムを導入する意味がありません。導入後に管理側、管理される側、両サイドにとってWinwinで持続可能な環境を構築することが求められます。

Winwinな環境を構築させるための教育方法の実証

それでは、「トヨタ生産方式」を導入するには、どのような教育を普及させる必要があるのでしょうか?農業に限らず、作業者で構成される一次産業の現場では、管理者が作業者に対し、極端に監視、管理しようとすると、それに⑴反感を抱く、⑵モチベーションが下がる、などして逆に作業スピードが落ちてしまい、本末転倒となってしまいます。

まず、教育方法として挙げられる手法としては、「なぜ?」同システムを導入する必要があるのかを、現場の作業者に根気よく説明することが求められます。全ての作業者に対し、管理者は同調する必要はありませんが、作業員が抱く「なぜ?」と言う疑問詞の数が多ければ多いほど、現場の作業員は管理者の言うことに聞く耳を持とうとしません。また、実際に管理者が説明する際にも、現場レベルに合わせ図や絵を用いて分かり易く説明するとよいでしょう。

1ヶ月間(DAY0〜DAY30)で管理者が「トヨタ生産方式」を現場に落とし込むための「心理メソッド」

重要ポイント:
同情してもらう(重要な心理メソッド)→「なぜ」同システムが必要なのか?現在抱えている課題も踏まえ、正直にシェアする。特に人件費の増大で経営が圧迫されている点等。

DAY 0

➀現状の説明
②同情してもらう(同じ立ち位置になることを意識)
※➀&②が最重要。同ステップを怠ると、次の段階に進めない。
③現場での実践方法説明

④管理者側、作業者側、双方のメリットを説明
⑤実際に何のメリットがあるのかを理解する
・具体的な内容:
作業者側は、作業量が明確化し、評価に基づき、褒賞や時給アップの機会がある。管理者側は、同システムで収集したデータを基に、今後の経営、事業拡大に繋げることができる。
⑥管理者、作業者両サイドが同意したことを確認する

DAY 1〜10

➀作業前にホワイトボードを用いて、システムについて簡単に説明、確認。②その日の作業内容の確認(担当毎)
③管理者も実際に作業場所に行き、ホワイトボードで説明した通りの作業場所〜作業手順になっているか確認

DAY 11〜30

DAY10までに、既にに実施していることに加え、さらにプラスαのタスク ➀朝の作業前に前日の結果発表→(実際に評価に基づいた結果発表)
②最も優れた作業者の表彰を週に一回行う

・実際に行うことと実現されていると認識させ、作業員のモチベーションアップに繋げる。

DAY 30

①DAY1〜30で実施したことをルーティン化し、管理者側は、評価システムが正常通り機能しているか、常時チェックする。

日本の農業現場で

新たなシステムを導入することは容易ではありません。しかし、システムの導入は長期的に見て作業効率を向上させ、全体の生産性を高める大きなステップとなります。
システム導入するための、今回紹介した「心理メソッド」を用いる教育方法は、作業者の理解と協力を得るために不可欠なステップです。根気よく説明し、作業者の心情に寄り添いながら進めていくことで、農業現場でも確実に効果を発揮することでしょう。

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