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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第43回 日本の目標「2030年までに食糧自給率45%、輸出額5兆円」の達成ノウハウ(マーケティング編:その3)

農産物輸出促進の目標達成には、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。その戦略の一環として、「PEST分析」は非常に有用なツールとなります。今回は、このPEST分析を用いて、テストマーケティングに最適な市場であるオーストラリア市場を例に挙げ、市場参入のノウハウを詳しく解説していきます。

「PEST」分析は、オーストラリアを始めとする海外に農産物を輸出するなどの「新規事業」を始める際に、事業を取り巻くマクロ(外部)環境が、現在〜将来どのように変化するのか把握するためのマーケティングメソッドです。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの視点から分析することから、それぞれの頭文字をとり「PEST」分析と呼ばれています。コロナやインフレによる危機下に於いては、法改正や社会情勢・経済などの変化が著しく、マクロ環境が分析できる「PEST」分析は重要事項と言えます。

農業新規事業の「PEST」分析

「PEST」分析を用いてオーストラリア市場について考察する:

◇Politics(政治):

オーストラリア政府が打ち出す政策や法改正といった動向をチェックします。※オーストラリアでは連邦政府と州政府の関係はより対等な関係にあり、憲法上では、一部の権限以外は、各州政府に委ねられているため、優先的に州政府が打ち出す政策、州法を常時チェックすることも必要です。

「P」事例のまとめ:❶税制(法人税率)は30%であるが、❷補助金支援が手厚い上に、政府によるビジネス支援が容易に受けられます。農業事業は、農薬基準等の❸法・レギュレーションが頻繁に改正されることがあり、常に情報をアップデートするようにします。

◇Economy(経済):オーストラリア国内外の経済状況・活動の動向をチェックします。特に、農業事業の場合、原材料費や流通費用がインフレ、災害、為替変動の影響を極端に受け易いため注意が必要です。

「E」事例のまとめ:❶為替相場は中国経済の動向を受け易い傾向にあります。❷最低時給は$21.38(24.1豪ドル【2024年時点】)で休日・祝日は時給が倍増します。❸消費者物価指数(CPI)は沈静化する可能性も考えられ、景気後退を回避する可能性が高いとの見方があります。

◇Society(社会):オーストラリアでのライフスタイルの変容等の変化をチェックします。コロナ禍をきっかけに、SNSを活用する消費者の需要構造そのものが大きく変化しています。

「S」事例のまとめ:❶災害の影響を受け易いため、「ウェザーステーション」等、気象条件に応じた栽培管理が可能な技術の導入が急務となっています。❷人口動態(2022-3年)は、コロナで減少した移民労働人口は、コロナ前の水準に戻りつつあります(2024年は、移民が増えすぎている問題がある一方、農業現場の人材不足は依然課題となっている)。都市部では学生を始め単身世帯が多く、少量の商品の方が売れる傾向があります。65歳以上の高齢者は人口の約17%と年々高齢化社会になりつつあります。❸流行は、「ベジタリアン」、「ビーガン」、「環境保全」、「フードロス」であり、商品もそのトレンドに応じた商品が市場に出回っています。

◇Technology(技術):オーストラリアでのアグリテック(AgTech)を始めとする先端の農業技術革新などのトレンドをチェックします。
テクノロジーの変革や動向、日々の情報だけではなく、常に将来を見据えて予測・対策していくことが求められます。

「T」事例のまとめ:❶IT(ICT, IoT)を活用した、大規模な環境制御型農業技術が主流になっています。❷技術革新の面では、ドローンを活用することにより適宜に農薬・肥料の散布・施肥が可能になり、減農薬・減化学肥料栽培が実現できています。また、コロナ禍で深刻な人手不足となった生産現場へのロボットの導入が促進されています。❸インフラの面では、高速インターネットの普及による農場運営が可能になりました。最新のトレーサビリティシステムの導入により、農産物の流通がスムーズになっています。

まとめ(日本の農業者の皆様へ)

超多国籍国家であるオーストラリアでのマーケティングの成功は、他の国々でも同様のモデルが有効であることを証明します。つまり、オーストラリア市場はテストマーケティングの場として非常に有用です。この市場での成功事例を基にすれば、日本の農業者も革新的なマーケティング手法を効果的に活用し、海外輸出を増大させるという2030年の目標達成に向けた重要な一歩を踏み出すことができるでしょう。

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