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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第16回 持続可能な農薬管理(その2)

今回は「農薬」についての第2弾をお届けします。オーストラリアの農薬使用と管理方法について詳しく解説し、日本の農業者の皆さんに役立つ情報をお届けします。

農薬の特徴

農作物に使われる薬剤のタイプ(剤型)

農薬には多様な剤型があり、散布場所の広さや作物の種類に応じて適切なものを選ぶことが重要です。以下に主要な剤型とその特徴を紹介します。

  • 乳剤、水和剤、水溶剤:水で薄めて噴霧器で散布します。これらの薬剤は水に溶けやすく、広範囲に効果的に散布できます。

  • スプレー剤:特定の場所にスポット散布するのに適しています。特定の害虫や病気を集中的に防除するのに便利です。

  • 粒剤、ペレット剤:土に直接まいて使用します。これらはゆっくりと溶け出し、長期間効果が持続します。

使用する前に、農薬のラベルをよく読み、希釈倍数や使用時期、使用回数などの使用方法を正確に把握することが重要です。

病害虫の抵抗性

病害虫には同じ種類でも薬剤に対する抵抗性を持つものと持たないものが混在しています。同じ薬剤を連続して使用すると、抵抗性を持つ病害虫だけが生き残り、その薬剤が効かなくなることがあります。これを防ぐために、薬剤の種類や散布のタイミングをローテーションさせることが求められます。効果的な防除には、以下のポイントが重要です。

  • 薬剤のローテーション:異なる作用機序を持つ薬剤を使用することで、抵抗性の発生を遅らせることができます。

  • 適切な散布タイミング:病害虫の発生状況をモニタリングし、最適なタイミングで散布を行うことが効果的です。

残留農薬

農薬の効力と残留期間

農作物に使用された農薬は、葉や茎、果実に付着する一部が分解され、残りは土壌に吸着されます。日光や水、土壌微生物の作用により分解されていきます。農薬の残効性は、作物や土壌に留まっている有効成分の量により決まります。

  • 残効性:農薬が一定期間、作物や土壌に残留し続けること。適度な残効性があれば、望ましい防除効果が得られます。

  • 安全性:残留期間が長すぎると、環境や人体の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、多くの農薬は適度な残留期間を持つように設計されています。

オーストラリアの残留農薬基準

オーストラリアでは、食品の安全性を確保するために、農産物に残留する農薬の最大残留基準値(MRLs)が設定されています。この基準は、Food Standards Australia & New Zealand(FSANZ)とAustralian Pesticides and Veterinary Medicines Authority(APVMA)が策定しています。

  • 基準値の設定:農薬の製造業者が農産物を安全に消費できるレベルを設定し、それに基づいて必要な残留期間(withholding periods)を定めています。

  • 遵守の徹底:輸出または国内市場に出荷される農産物は、MRLsの基準をクリアする必要があります。

実践例と管理方法

オーストラリアの農業現場では、以下のような管理方法を徹底しています。

  1. AusChem Training社によるトレーニング:農薬を使用するためには、AusChem Training社のトレーニングを受ける必要があります。詳細はAusChem Trainingで確認できます。

  2. 登録農薬の使用:オーストラリアで登録されている農薬のみ使用可能です。詳細はAPVMAで確認できます。

  3. 定期点検:薬剤散布機器はメーカー基準に沿った定期点検が必要です。

  4. 残留期間の遵守:農薬の残留期間(0~14日間)を必ず守ります。

残留基準値の一例

オーストラリアの最大残留基準値の一例を以下に示します。

日本の農業者の皆さんへ

オーストラリアの農業における農薬使用と管理は、日本の農業者にとっても多くの示唆を与えてくれます。適切な農薬の選択、使用方法の徹底、残留基準の遵守など、これらの実践は環境保護と食品安全の両立を目指す上で非常に重要です。
皆さんの農業の成功を心より願っています。

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