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『#真相をお話しします』が令和のミステリすぎる



⁡長年、趣味を読書にしていると、社会が変わる度、また新しい作品が登場していくんだなと感じている。

振り返れば、ちょっと前はコロナ期間の人達のテーマが多かった。

きっとどんな創作物にも言えることなのだろうけど、何かが流行ればそれがテーマになる。
そうやって生きていればいるほど、たくさんの作品に出会えるんだなとしみじみ思うのだ

『#真相をお話しします』は2023年本屋大賞にノミネートされた5つの短編集。

とても今っぽい作品。
これを読めば令和初期のトレンドを知れる教科書的作品でもある。

マッチングアプリやリモート飲み会、YouTuber……など、
2023本屋大賞にノミネートされるのが
納得できるほど、令和の単語ばかりだ。

なにより本書はミステリ作品である。
トレンドの事象を巧みに利用し、物語を仕上げていく。1つのジャンルが時代と溶け込み合っていくこともまた、多くの作品で会える楽しみであるといえよう。


特に本書の特徴は「違和感をビシバシ感じさせる」ところにあると思う。

序盤から普通ではない「おかしさ」が散りばめられている。読んでいて思う。これが騙すためのポイントなんだろう、と。

しかし、その時点で作者の術中にハマっている。読者は騙されるまいと注意深く読むのだが、分からない。分からないからさらに注意深く読む。だが分からない。

違和感をあえてヒントとして読者に与え、しかし核心には頭で追いつけそうもなく、
モヤモヤした気持ちを抱えたまま最後の1ページへ向かっていく。その違和感の強さが本書を夢中にさせているように思う。

それと相まって、現代のトレンドを使っているのも恐怖に感じさせる。

きっとそんなことは起きないだろう、そう思いながらも片隅にもしかしたら起こり得るかもしれないという恐怖の予感を感じさせる。

身近すぎることで現実と虚構が中和していく
そんな体験をぜひ本書で味わってほしい。


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