見出し画像

『ジョニーぶらり旅』フィリピン編⑤

 やっと海外一人旅らしくなってきたのに、結局ドタキャンされて一人だ。正直、好きになりかけるくらい魅力的な女性だったので、かなりショックだった。
 その場であった人との交流こそが、一人旅の醍醐味である。ましてや、英語力を鍛えている身としては絶好の機会だったので、なかなかこたえた。

 二人で行く予定だった場所は、「Moalboal」というところで、バスで行く必要がある。彼女がバスの乗り方などを、簡単にメッセージで教えてくれたので、それを頼りに一人で行くしかない。

こんだけ離れてる場所に行くのだ。

 そんなことを考えながらラウンジでご飯を食べていると、ホテルの従業員の若い女性が「あなたは中国のモデルか何か?」と聞いてきた。なぜ中国なのかと思ったが、それよりもモデルと間違えられるのもあまりいい気はしなかった。
 自分は日本人で一人旅で来ているだけだよ、と伝えた。そこから二人でいろいろな事を話すくらい仲良くなることができた。
 彼女は26歳で、いつか海外で働きたいと考えているらしく、日本の事について聞いてきた。
 ある時彼女が自分の母親に、日本に興味があると伝えた事があるそうで、母親はあまりいい反応はしないばかりか、危ないよと伝えたらしい。なので彼女は日本は本当に危ない国なのかを知りたがっていたみたいだ。

 おそらく、戦時中にフィリピンを占領した日本のイメージが強かったのだろう。日本と東南アジアの負の歴史を肌で感じた瞬間だった。

 一人で海辺に行くことを伝えると、明るく送り出してくれた。
 準備を済ませてからまずバスを探した。そもそも目的地がどのくらい離れているのかすら知らなかった。なので、通るジプニー(軽トラ版トゥクトゥク)のドライバーに毎度聞くも、そこまでは行かないと言われてしまう。

 どうしようか迷っていると、ひとりの怪しめなおじさんが、目的地を訪ねてきた。場所をきくなり、わたしを誘導して一緒にジプニーに乗り、私の分も払ってくれた。助かるが、とても怪しい。みると、歯が一本も生えていない。

おじさんに会った通り。比較的綺麗な方角を写している。

 彼はひたすら話続けた。「俺は障害者割引がきくから、安いんだよ」と不気味な笑い声で。「日本のコイン持ってる?集めてるんだ」とにやけながら。
 これはたかりだと感じつつも、彼に頼る以外の策がその時はなかった。彼の案内で二本乗り継ぎ、本当に大きなバスセンターまでたどり着き、チケットの買い方まで教えてくれた。正直怪しかったが、助かったのも事実なので、チップはいるかいと聞くと、「君に任せるよ」と言われた。
 謙虚で親切な人ではあるみたいなので、500ペソ払った。日本円で1500円ほどだろうか。かなり払いすぎたが、小さい紙幣がそれしかなかったのだ。彼は嬉しそうだった。彼にありがとうと伝えて、別れた。
 (この怪しいおじさんとの奇怪な縁は、これで終わりではなかった。)

バスステーション。写ってるバスは、しっかりした観光バスタイプ。行きでこれには乗れなかった.…。そして絵柄が『モーセの出エジプト』なのが、最強にカトリックを感じさせる。

 バス停までいくと、そこに止まっていたのはバスではなく、ハイエースより小さいバンだった。
 そのバンに最終的に14人ほど詰め込まれたのだが、発車するまで約45分かかった。どうやら満杯にならないと動かないらしい。その証拠に、運転手は発車まで外で寝そべっている。

 やっと発車の合図がされ、運転手が重い腰を上げて車が動き出した。
 ガガンッ‼   大きな音と共に振動が走り、乗客は皆驚いた。
 「ohhhhhhhh」皆が声を出した。

 後ろの高級タクシーに衝突したらしい。


 まさかフィリピンで事故にあうとは。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?