【side A】ターゲティングのお話

要約

インターネット時代のターゲティングとは買ってくれる人を刺すことになっている。
そのため、デジタルマーケティングの主要な業務はターゲット探しになっており、それって創造的な活動なんだっけ?というお話。

要約終わり


さて、本文に入りましょう。

僕がターゲティングを習ったとき、というか、当時の教科書に載っていて今の教科書に載っていないキーワードがある。

それが「波及効果」だ。

いやいやもはや死語になったバスマーケティングから、現在のソーシャルマーケティングに至るまで、目下デジタルマーケティングって波及が命題ですよね。と言われるかもしれないが、ちょっと下記の昔話を聞いてほしい。

世の中広告っぽいことが起こり始めたのは17-18世紀に入ってからイギリスでコーヒーハウスだろうか。交易による儲け話、交易に伴う保険業の勃興による勧誘、そのほか、政治、ジャーナリズムなど、人々は最新のネタを集めるために通ったといわれている。

今はインターネット時代でどこにいても最新のネタが入るし、ましてや情報過多の時代、広告はブロックしても、情報を探しに集まるというのはちょっと想像しにくいかもしれない。
(もっとも本当に重要なネタや流行の産声はオフラインで起こっているのだろうが、それはまた別の話で)

ただ、いずれにせよ、情報は足を運んでも取りに行きたい価値のあるもので、みんなワクワクしながら情報(中身は広告)話を聞きに行っていた時代もあったのだろう。

さて、明示的に新聞にもパンフレットにも載らないような情報を人は集めようとすると、いわゆる噂話に耳を傾けることになる。この時代に生きていたわけではないが、話のネタ、広告、そして詐欺がごっちゃ混ぜになったのではないかと思う。
さすがに玉石混合、詐欺にやられる人たちも出てくると、それなりのお作法が生まれてくるもので、そのうち、人々は社交的なつながりを持つようになり、階級や財力のほかに、「情報通」というある意味特殊な身分が生まれてくる。

この時代の話ではないが、これを割とわかりやすく解説した本に、マルコム・グラッドウェルが『急に売れ始めるにはワケがある』の中で、人のネットワークとこういった情報通/目利き屋と呼ばれる人を「market maven(以下maven)」という形で明示している。
これはソーシャルマーケティングでいうインフルエンサーに近いようにも見えるが、インフルエンサーはその事柄に詳しいか否かに関係なく、単に影響力/発信力の強い人のことをだと思われるのに対し、mavenはその分野に精通し、利害なしに助言をする人のことを指す。
また既知の知り合いにmavenのような人がいない場合、知り合いの知り合いを紹介するような人をconnectorと呼んでおり、connectorがつないだ人同士、あるいはmavenを経由して情報が広がっていく様子が説明されている。

これは別の社会科学の概念を当てはめると「準拠集団」と呼ばれ、人の意思決定に影響する周辺の人、あるいは人々が共有する意識がネットワーク効果を生み出すものだ。

ソーシャルマーケティングというものは本来はこういったネットワーク効果が生み出す波及を利用するものだと思っているのだが、また少し別の概念であるインフルエンサーに対する憧れを利用した、刺すマーケティングが先行してしまい、バナー広告と同じようにより効率的なフォロワーからの転換率を追求するツールになってしまった。

だからソーシャルマーケティングもご多分に漏れず、ターゲットを刺すための囲い込みの箱としてインフルエンサーのアカウントがあり、そこにいる何パーセントが刺せるのかという議論がまかり通っている。

ターゲティングの話をするつもりがソーシャルマーケティングの話になってしまいずいぶんと遠回りをしてしまったが、要約で述べた通り、現在のデジタルマーケティングは人を刺すためのツールを探しているので、効率的に人を刺すために、囲い込みの箱としてフォロワーの多いインフルエンサーの箱のサイズと影響力が重視されて、それを探すのがマーケターの仕事だ。

これはマーケティング活動として創造的か?といわれると、僕の目には配信リストを選んでポチポチするか、人気のインフルエンサーと交渉するマーケター像しか見えず、ただのオペレーションをしているだけにみえる。

それがまやかしに見えないのは、なまじその前の企画会議なんかで、それっぽいターゲットの話をしているからで、それも反証するならば、その前提になるSTPの話も理解していない人々が箱のサイズとブランド(インフルエンサーのアカウント)を選んでいるに過ぎない。

アドネットワークもしかり、そのほかのメディア選定もしかり。単に選ぶ作業をターゲティングと呼んでいる。

では本当のターゲティングって?というかSTPとは?という話になるので、そこは答え合わせのノートを別途書こう。



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