見出し画像

1年間に2本もモンブラン マイスターシュテュック 149を購入した話|レビュー的覚え書き

万年筆に惹かれたきっかけは、まだ広告代理店に就職する前の話。インターンをし始めた頃に遡る。始めた当初、3ヶ月間だけお世話になった上司の方が、万年筆を愛用されていた。

使われていたのは、おそらくペリカンのM800か、M1000か。

当時は万年筆に全く興味がなかったため、気にも止めず、ただただ生まれて初めて見た万年筆の筆跡に、「太くて丸みを帯びているが、温かみがあり、ボールペンとも、シャーペンとも、鉛筆とも違う書き味のものだな」と思う程度だった。

それから時が流れ、数年後。たまたま祖父の遺品整理の際に、1本の万年筆を手にするに至った。「セーラー万年筆」の古いモデルである。

画像1


しかしこの万年筆、実はなかなかの曲者で、インクの出具合を調整する部分が馬鹿になっており、一度インクを入れ書き始めると、書道を始めんばかりの勢いでインクが出始めてしまう故障持ちであった。めんどくさがりな私は、今も修理せず、これを綺麗に分解し、整備した上で手元に残している。いつか修理に出し、書き直せるようにしようと思いながらも...。

画像2

一方、インクを既に買っていた手前、「せっかくなら自分でも一本買ってみよう」と思い至り、自分で文具店で万年筆を手にした。祖父の遺品と同じく「セーラー万年筆」のもの。 # 3776 センチュリー というシリーズの、極細字である。

画像3

書いてみて、以前の自分の知る万年筆の筆跡とは異なるものの、ボールペンやシャープペンシルでは体感できない指先の感触に満足を覚え、一旦万年筆を使い始めると同時に、私自身、万年筆に魅了されていくに至った。

それから時は流れ、一年弱。私は万年筆を使いながら、万年筆について、さまざまな情報を調べ、ついに万年筆の世界において、特にモンブランのマイスターシュテュック、その中でも特に149なるモデルが、最高にスタンダードな存在であるということを知る。

また、「ル・ボナー」の松本氏のブログを読み漁り、如何に万年筆が美しく、そしてデリケートな存在であるのかを学ぶに至った。

そして2019年2月、私は記念すべき149の1本目を、新宿のアンティーク文具店で購入する。

画像4

物珍しい149で、冷戦が激化した折しか刻印されていない「W.Germany」と彫られたそれを、私はいたく気に入り、早速仕事で使い始めた。

しかし、なんとその2ヶ月後、私は外出時の不手際で、なんとそのモンブラン、セーラー万年筆などを入れたペンケースを紛失してしまう。人生最大の、痛恨の紛失であった。過去に財布をなくしたことはあったが、それ以上の喪失感を感じた。

なかなか手に入らない希少な万年筆をなくしてしまったことのショックは大きく、以来半年ほど凹み、暗澹たる日々をおくることとなった。

幸いペンケースは、その直後に以前より気になっていた「ル・ボナー」のものを手にすることができ、

画像5


またセーラー万年筆も、値上がり前に買い直すことができたものの、モンブランだけは価格が価格だけあり手が出しにくく、また自分自身「またなくすのでは?」という思いもあり、なかなか購入し直すには至らなかった。

それから時が流れ数ヶ月、つい先日149をまた新たに一本向入れた。以前はMだが今回はEF、「W.Germany」の刻印は無いが、書き味は以前のものよりも良い、あの当時自分が目にした「太くて丸みを帯びているが、温かみがあり、ボールペンとも、シャーペンとも、鉛筆とも違う書き味のもの」を再現するに、十分な1本である。

画像6

私は、仕事関連の資料を通じ、部下へのフィードバックを行なったり、感情を乗せた文章を書きたい時、広告文のアイディアを練る際は、必ず149を欠かさず使うようにしている。

画像7

またプライベートで人への感謝を伝えたい時に手紙を書いたり、文章を書く際も、149が欠かせない。

今年も残りあと数十日、3本目を購入に走ることが、無いことを祈るばかりである。

Twitterはこちら