イノセント・デイズ

 早見和真作、「イノセント・デイズ」を読み終わったので、その感想を残そうと思う。

※以下、ネタバレを含みます。

 ある女の死刑判決が起点になる物語。
 その女は、メディアで大々的に取り上げられた凶悪殺人犯。元恋人の妻と子ども2人の計3人を放火で殺した犯人。彼女を深く知らない人が受けたインタビューや、意図的に捻じ曲げた印象が語られた取材から作られた犯人像は、大衆が興味持つには十分すぎるインパクトだった。
 裁判員による女性に対する初の死刑求刑。「整形シンデレラ」の別称。学生時代の前科。
 世間は死刑判決に何の疑問もなく、むしろ妥当だと感じていた。再審請求は無く、それは意外ではあるけど、社会的にはありがたい話。

 ただ、実際は……というお話。死刑執行を待つだけになった彼女の、本当の人生が紐解かれていく。

 前半は、判決文の文章に沿いながら、死刑囚となった彼女の人生が、その時そのときに関わった者の目線で描かれる物語。
 後半は、昔を知る友人が死刑判決をひっくり返そうと奮闘する話。誰かを信じることは難しいけど、友人は彼女が再審請求するよう心変わりすることを信じていた。

 最後は「願いが叶って救われる」。

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 言葉の強さ、メディアの力の大きさが怖くなった小説だった。ずっと、何か重たいものを抱えながら読み進めている感覚がずっとあった。読み終わって解説まで読んだときは、私たちは自分の考えを信じて疑わないことが多いことを突きつけられた。

 感情移入先によって、印象が変わるかも。

 読んでよかった小説だった。全く具体的に言葉にできなかったけど、心から、読んでよかったって言える。この文を読んだ人でまだ読んでいない方がいたら、ぜひ読んでみてほしい。

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