あしながおじさん

本の情報(読了日2022/2/2)

書名:あしながおじさん
作者:ウェブスター
訳者:土屋京子
出版社:光文社古典新訳文庫
ASIN:B0186S7FZA

以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。ネタバレあり。

この本は孤児院で育ったジュディが女子大学での出来事をあしながおじさんとよぶ援助者に手紙をかくという話である。

ジュディはある日、孤児院の院長からとある通達を受ける。スミスさんという慈善家がジュディ(当時はジェルーシャ)の報告書から、彼女の文章を書く能力を認め大学への援助金をすべて負担するという話だ。これにはとある条件があり、定期的にジュディはスミスさんに手紙を書き、スミスさんはその返事を一切ださないというものだ。ジュディは孤児院での生活に飽き飽きしていたため、その話を受け入れた。

冒頭の一部を除いて大半はジュディのあしながおじさんへの手紙の形で話はすすむ。ジュディは利口で活発な女の子で大学という未知の世界を満喫している様子がありありと手に取るようにわかる。ジュディはユーモアに溢れており、授業や私生活のことを細かくそして臨場感溢れる表現で読んでいて全く飽きない。

注意!ここからネタバレあり。物語詳細を知りたくない人はここで回れ右してください。

自分はジュディのあしながおじさんという表現がこの本で一番好きだ。背が高いという要素から親しみやすいこの名称を出してくるところに彼女の作家としての才能が表れていると思う。普通のおしゃべり口調や拙いフランス語と英語の混じった文章や勇ましい軍人口調など様々な文体で手紙は書かれていて勉強になると思った。

自分は以前この本を読んだことがあるが、今回読み直して感じたのは、違和感である。いうまでもなくこの作品は児童文学として確立され、子供向けにかかれているはずだ。しかしながら、ジュディがシルクのストッキングに憧れる表現や経済的自立を目指してアルバイトをはじめるところはリアリティがありすぎる。

解説を読んで納得した。この作品は当初、上中流階級の女性雑誌に投稿されたものだったのだ。ジュディが大学生活を満喫しているという表現に女性蔑視や孤児への差別表現が見え隠れしている。当時の社会がいかに女性にとって生きづらかったかよくわかる。

女子大生特有の若々しい表現はかつての青春時代を思い出させた。自分は学生の頃勉強ばかりであまり学生生活そのものを楽しんでいなかったと思う。今回で彼女のように自分もテスト結果に一期一憂したり、友人と遊びにいったりしたことを思い出した。本当に小さな楽しみだったがあの日々にもそれなりに楽しいことがあった。

人生には様々なときがある。しかし、苦しいなかにも小さな幸福があることを思い出した。自分は、昨年仕事が忙しく何回か体調をくずしたことがあったが、週に何回か散歩にいったことは楽しかった。いまだに収束しないコロナ禍だが、なんとか幸せを見つけて乗り越えていこうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?