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田舎が好きな理由

高速バスに揺られ、休憩所で夜空を見上げる。湿った草原の香り、かすかに見える星々。こんな風景を見られるのも、あと少しだけかもしれない。

長野駅から黒姫駅まで、しなの鉄道北しなの線に揺られながら初めてThe Saunaへ行ったときのことを思い出す。

その日、ゲストハウスではイベントをやっていた気がする。翌日にケーリーがあったのかな。スーツケースをゴロゴロと引きながら30分は歩いた。真夜中の山道。

舗装されていない道も歩いた。ゲストハウスがどこにあるかわからずキョロキョロと。夜空の星々の近さに感動しながら。公道を離れて、宿に近づくにつれて次第に大きくなる喧騒に期待と不安を膨らませて。

あの日は夜だったからわからなかったけど、今日の車窓からの眺めは季節感がいっぱいだった。満開の桜、一度は土砂に流されたのに復興した畑たち。これから緑と色彩にもっと溢れる山々。

それらの風景に心惹かれる気持ちが半分、と同時にずっと感じていた居心地の悪さの正体も、今ならわかる。
日本の四季折々の風景を通して僕が見ていたのは、きっとイタリアだったのだ。

山梨が好きなのも、長野が好きなのも、地元の北海道と似ているからじゃない。心の原風景にあるイタリアを投影していたのだ。富良野のラベンダー畑も、美瑛の丘も、芦別のカナディアンワールドも、山に登りながら吸う空気も、塩っけのない冷たすぎて浸かる気にならない海も。どれも大好きだし、大切な思い出の一つではあるけれどなぜか落ち着かない。ありよりのなし、みたいな複雑な気持ちを”好き”と思い込んでいたけれど、僕が本当に好きなのは日本じゃないところにあったのだと魂が叫んでる。イタリアへ足を踏み入れたのだってつい5年前のことだけれど。調べれば調べるほど行きたい気持ちばかり高まる。

そんな気持ちを抱えながら長野駅に降り立ったとき「ここに来るのも最後かもしれない」なんて感傷的になっちゃって。長野に来たらほぼ必ず行くレッドラにも、挨拶していかなきゃ、という気持ちになった。

数えるくらいしか行けてないのに、顔覚えてもらえるのって嬉しいね。夢を語ったら、みんな励ましてくれる。

そんな突貫長野旅でした。また来られる日を夢みて。


以下は美味しいご飯記録。

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