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今こそ覚える、クレアバタリング #土曜夜にアイルランドを語る

土曜の夜にこんばんは!
毎週土曜、19時の投稿、楽しみにしてくれているかな?気分はdiscordだぜ。

先週のみぞやすさんの記事を読んだかな〜?
「土曜夜にアイルランドを語る」史に残る大ボリューム記事、実践編付きの良記事です。

はじめに

この記事は僕、城拓と長野のダンサー、飯井大智の動画協力で構成されています。

想定する読者は以下。

・シャンノース・ダンシングを始めたい方
・セットダンスの経験者でクレアバタリングを覚えたい方

シャンノースについて初めての方はこちら

シャンノースやクレアバタリングへの理解を深めたい方はそのままお読みください。

また、文章抜きで動画単体でもお楽しみいただける構成にもなっております。以下をご覧ください。

今こそ覚える、クレアバタリング
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsMG0iGgneAQTrgjckvAgfKtJ11InqhBB

*城、飯井ともにダンスについては若輩者ですが、お家でたのしめるアイリッシュを盛り上げるべく、記事を書いてみました。誤り、不適切な記載などありましたら城までご連絡いただけると幸いです

*説明の都合上、動画と言葉の説明が前後することがあります。ご了承ください

クレアバタリングとは?

さてさて、本日のお題は「クレアバタリング」
英語だと clare battering と綴ります。

クレアバタリングってなに?という方がほとんどだと思うので、動画を見てみましょう。

こちらは「アルマダ・ホテル」というクレア州(県)の西部にある「ミルタウン」という小さなまちの超盛り上がっているケーリーの様子です。

「タカラ、タカラカタ、タカラカタ」みたいな足音が聞こえますか?

もいっこ

これは同じくアルマダ・ホテルのケーリー動画。

アルマダホテルのケーリーはWillie Clancy Festivalというアイルランド音楽で最大規模のフェスのプログラムの一環。これは2017年。

当時僕はセットダンスを始めて1年ほど。
バタリングはおろか基礎的なステップも覚束ない。
アイルランドから戻ってきて中途半端なバタリングを披露した日々が懐かしい、、、(おっと、思い出に浸ってしまった)。

「バタリング(battering)」はbatter + ingで、「batter」とは連打する、乱打するという意味です。見ての通り、足裏を地面に打ち付けて音を鳴らす高等テクニック

RTÉ(アイルランド放送協会)のアーカイブに1971年のクレアバタリングに関する記事があります。当時撮影された映像もあります。なかなか聞き取りづらい英語ですが、是非見てください。

Battering requires the dancer to beat out a rhythm on the floor with their feet.
A variation of the Caledonian set dance incorporating treble clicking of heels to each beat of the music, known locally in county Clare as ‘Battering’. This type of dance was banned by the GAA in 1971. However, dancers from Quilty county Clare where the tradition flourishes subsequently won the county set dancing championships.
- "Clare Battering Set Dance 1971", RTÉ Archives

もともとはカレドニアンセットのアレンジとして音楽に合わせてヒールで高音を出していた、クレア地方の慣習。Quilty, Doolin, Miltown Malbay など、所謂 West Clare で踊られていたそうです。

しかし、同じく1971年にGAA(ゲーリック体育協会)に禁止されてしまったと。しかし、Quilty出身のダンサーたちがコンペで優勝してしまい、、、と続きはこちらをお読みください。

リンク先では battering または trebling(高音を鳴らすこと)と書かれていますね。ちなみにクレアとはアイルランドの西部にあります。

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The West of County Clareより。Quilty, Doolin, Miltown Malbayは海沿いの街です)

説明が長くなりました。

前回記事は「コネマラステップ」というゴールウェイ州コネマラ地方のステップを扱いました。

そこでも言及したように、Connemara StepはConnemara Setで踊るときに使われます。州(カウンティ)によっては、同じセットでもバタリングしたり、コネマラステップで踊ったり、スムースステップで踊ったり、、、と踊られ方が様々なようです。例えば、Clare Lancers Setは

This set is associated with the Crusheen Set Dancers in County Clare. It should be danced in a light, lively style, without any jumping or battering.
"Toss The Feathers" - Pat Murphy

「without any jumping or battering(飛び跳ねたりバタリングせずに)」と教本には書かれていますが、アルマダホテルではバタリングしてる人もいました笑

空気を読む力、大事。

ではでは早速、覚えていきましょう!

講師のご紹介

お馴染み、いーちゃんです。

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飯井大智
セントダンサー、シャンノースダンサー、打楽器、アイリッシュフルート奏者。BB Céilí Bandのリーダー・コーラーを務める。
群馬県高崎市に生まれ、幼い頃から地元のお囃子に参加。
高校では和太鼓部に所属。信州大学入学からアイリッシュ音楽を始め、カホン、スプーンズ 、ボーンズなど打楽器に打ち込む。2016年のICF Special Ceiliでセットダンスの楽しさに目覚める。セットダンスへの愛が爆発し、ダンスの伴奏をするBB Céilí Bandを結成。そして、バンドでの演奏のためだけにアイリッシュフルートを始める。2018年秋よりシャンノース・ダンシングを始め、現在は長野にてセットダンス、シャンノースを広める活動をしている。今を時めく若手ダンサー。(作編: 城・がっきー)

クレアバタリングの音のまとまり

まずはお手本をみてみましょう。

動画の後半に説明がありますが、コネマラステップとクレアバタリングはリズムのまとまりが異なります。

リズムのまとまり比較
コネマラステップ:1 - 2 - 3 - 4、1 - 2 - 3 - 4, 
クレアバタリング:1 - 2、1 - 2 - 3、1 - 2 - 3

コネマラステップは「1 - 2 - 3 - 4」というまとまりが2つの構成でしたが、クレアバタリングは「1 - 2」というまとまりと「1 - 2 - 3」というまとまりが2つで構成されています。

次からは「1 - 2」のまとまりと「1 - 2 - 3」のまとまりについて詳しく見ていきます。

ちなみにクレアバタリングでは男性と女性で足が逆になります。上の動画は男性バージョンです。

*クレアバタリングは初心者には難しいテクニックです。以下では「上級編」「番外編」「応用編」などの項目がありますが、初心者の方は飛ばして読んでも大丈夫です

【上級編】クレアバタリングの構成を分解する

2:37~ あたりで混乱した方がいると思います(僕は混乱した)。

言葉で書きます。

クレアバタリングの音のまとまりは

1 - 2 / 1 - 2 - 3 / 1 - 2 - 3

です。これを2回続けると、

1 - 2 / 1 - 2 - 3 / 1 - 2 - 3 、1 - 2 / 1 - 2 - 3 / 1 - 2 - 3

となります。


この「1 - 2」を A、「1 - 2 - 3」を B と置き換えると

A - B - B, A - B - B

で、2:37~ でいーちゃんが喋っているのは

A - B - B, A - B - B

A - A,  B - B - B - B

と「順番を変えたらどうなるの?」ということです。

もちろん順番入れ替えただけなので、スッキリ終わります。
(ここ、バタリングを習得されている方の方が混乱するかも)

3:25~ でも同様で、

B - A - B,  B - A - B

とBが4つ、Aが 2つあることに変わりはないのでこちらもスッキリ終わります。

4:20~ は

A - A - B,  A - A - B

AとBの数を変えています。A, Bを使わずに表すと、

1 - 2 / 1 - 2 / 1 - 2 - 3、1 - 2 / 1 - 2 / 1 - 2 - 3

で音数が一つ減っているのがわかりますか?
A - B - Bだと8つあった音がA - A - Bだと7つに減っています。それ故リズムがなんだかおかしく感じるのです。

前置きが長くなりましたが!
ここからAとBで分けて覚えていきましょう!

「タカタ」を覚える

まずはA、「1 - 2 / 1 - 2 - 3 / 1 - 2 - 3」の「1 - 2」から

1. 右足を下ろして
2. 左足のヒールを地面にあてて
3. 左足を下ろして、右足を浮かす

音は「タカタ」です。

【番外編】「タカタ」をシャンノースで使ってみる

同じリズムでシャンノースにも使えるよ、ってお話です。
(先生、脱線しないでください)

今度こそB。

「タカタタタ」を覚える

次はB。「1 - 2 / 1 - 2 - 3 / 1 - 2 - 3」の「1 - 2 - 3」です。

音は「タカタタタ」

1. 右足を下ろして(体重をのせて)
2. 左足のヒールを地面にあてて
3. 左足をつま先から下ろし
4. 左足のかかとを落として(体重をのせて)
5. 右足でスタンプする(体重はのせない)

一度に全部やろうとすると難しいので、ゆっくり、一つずつ。

それができるようになったら、続けてできるように練習しましょう。
「A - B - B」とBは2回連続で行うからです。

A、Bがそれぞれ自然にできるようになり、A - B - Bと続けられるようになるとクレアバタリングの完成です。

ここで大事なお知らせ

女性のクレアバタリング

今まで載せていた動画はすべて男性バージョンのものです。女性バージョンはこちら。

ここから応用編(上級編)。

【上級編】 クレアバタリングを崩してみる

音は「タカタカタ、タカタカタン、タッ、タン」

セットダンスでハウスをするときなどに使うと身軽に動けるかも。

応用編 + ゆっくり練習する

スタンプの箇所で足を前や後ろにクロスさせたり、コネマラステップと組み合わせられるよ、というお話です。

最後にゆっくりバージョン

「セットダンスが以前のようにできない今はシャンノースが流行る最高のタイミング。気に入ってくれたらこちらの記事に♡マーク押してね!
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いっぱい人気だと僕といーちゃんがやる気を出します!

次回予告

さて、シャンノースでもセットダンスでも使える「クレアバタリング」の説明、以上となります。

はじめの方でもちらっと書きましたが、セットダンスではその場の空気を読むこと、周りと合わせることがとても大切です。そのほか、僕が先輩方から教えてもらったのは

・ステップが音楽と合っていること、ただ音を出すのではなく音のひとつひとつが融合していることが大切
・”どこで踊らないか” が大事
  (ずっとバタリングしていると動きが滑らかでなくなる)
・基本は Advance & Retire、Home、House の時に使う
・バタリングをすることで動きがカクカクしなければいい(from Aiden)

といった tips があるそうです。

当然ですが、バタリングをすることでケーリーバンドの演奏のリズムを乱してしまうのはバッド・マナーです。
あくまでリズムにしっかり合わせられるようになった後のテクニック。基礎のスムースステップをできるようになってから挑戦することがおすすめです。

来週は、読みやすさと親しみやすさに定評のある木村穂波さんの「ダンスにまつわる、アイルランドの思い出。」です。
「いつもダンスの伴奏をしてくれるアイリッシュミュージシャンに“ありがとう”を伝えよう」プロジェクトで先行公開していたものを皆様にお届けします。

↓前回の記事

アイルランドのケーリーの魅力にぶわゎわわゎわっ、、、、、ってなること請け合いです

たのしみにしててねっ!!

Grazie per leggere. Ci vediamo. 読んでくれてありがとう。また会おう!