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備忘録、忘れたときのために備える。

京アニが燃えた。

僕は灰になった。雨に濡れてびたびたになった灰になった。

温泉街の郊外の無料駐車場にいる。雨が車の天井を叩いている。また強まってきた。飛騨は警報が発令されている。

谷を見るとあかあかとした霧に包まれている。温泉宿の照明だ。

あかあかとした炎。焼死体。性別不明。ああ、もうそんな情報はいらないよ。僕はただ目をつむることしかできない。赤い霧は見えなくなるけど、雨音はどこまでもどこまでもあり続ける。鉄のカプセル。薄い皮膜。じっと耐える他ない。痛ましいことを、痛ましいことだと繰り返し唱え、咀嚼し、創作の糧となりエネルギーとなるまで咀嚼するのだ。四〇リットルのガソリン。これがあれば京都から我が家まで、行って帰ることができるのに。損なってしまった。だからずぶ濡れに灰となって、無料駐車場のまんなかに、佇んでいる。

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