NPS運用のチェックリスト
わたしは企業の顧客の体験価値(CX=Customer experience)向上のコンサルタント。「顧客アンケート」を使って企業のファンを増やす仕事です。顧客をファンにするプロセスの中には従業員の仕事と顧客に対する熱意を高める効果もあって、生産性の向上効果も高く、収益・利益が劇的に高まります。
今回はNet Promoter Scoreというフレームワークを使って顧客体験を向上させる活動をするときのチェックリストを紹介します。企業で顧客ロイヤルティやCXを担当される方に向けた、極めて専門的な内容なので、詳細部分は有料記事として提供します。
Net Promoter Score(NPS)とは
簡単にNPSについてのおさらいをしておきましょう。
Net Promoter Score=通称NPSはコンサルティング会社、ベイン&カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏のチームが2000年代初頭に開発した顧客ロイヤルティ計測のための指標の名前です(ライクヘルド氏はその後同社を退職)。
NPSの登場以前は、「XXは満足でしたか?」といった設問で顧客心理を計測していました。ところが「とても満足」と回答した顧客がその後に再購入しない、簡単にライバルブランドにスイッチするなど、回答と事後の行動の矛盾が大きいことが問題となっていました。そこで「正しくロイヤルティを計測するよい方法はないか?」とフィールドワークを実施して見つけられたのがNPSです。具体的には以下のような方法で計測します。
Net Promoter Scoreの基本運用
1. 以下の設問に回答してもらう
Q1. あなたがXX(ブランド名)を親しい友人や親族に推奨する可能性はどれくらいですか? 0〜10点で答えてください
Q2. 上記の点数をつけた理由をできるだけ詳しく教えてください。
2. Q1の点数によって回答者を3層に区分する
0〜6点 :批判者 = 再利用や他者推奨の可能性が低い
7・8点 :中立者 = 再利用可能性は高い
9・10点:推奨者 = 再利用と他者推奨の可能性が高い
3. 推奨者の率(%)から批判者の率(%)を引き、NPS指標とする。
NPS指標は -100〜+100の間の数値となる
4. 理由回答から課題がなにかを見つけ出す
ライクヘルド氏のチームでは様々な企業ブランドについてNPSを計測し、業績との相関を調べたところ、NPSが高いほど売上・利益が高くなることがわかりました(正確には、業績に先行してNPSに現れた)。この事実が明らかになると多くの企業がNPSを顧客ロイヤルティの指標として採用するようになったのです。
「顧客にアンケートを取って単純計算するだけで近々の売上・利益予測に使えて、めんどうな分析が不要になる! しかも顧客の課題がすぐに分かる!」
米国のメーカー・小売・サービス企業に広く活用されるようになり、2010年代になると自社のNPSを株主向け広報(IR)に利用している企業も増えました。
NPSはライクヘルド氏の著書を通じて日本でもよく知られるようになり、いまや顧客体験管理(CXM)経営の基軸指標として利用されています。
NPS運用のチェックリスト
ライクヘルド氏の書籍は事例が豊富で、経営者に向けた啓発書としても人気があります。一方、NPSの運用手順についての肝心な部分がまったく書かれておらず、じつは書籍だけを頼りにNPSを企業に導入しても成果が出にくいようです(本を読んで試している方にはごめんなさい。その活動を否定しているわけではありませんが、目覚ましい成果には至っていないのではないでしょうか)。
そんなことを言うのは意地悪ではなく、コンサルティングの現場でそうした事例を複数目の当たりにしてきたからです。肝心な部分とは「現在提供している顧客体験の課題」を知る方法です。NPSの数字がわかって、その理由コメントをどれだけ丁寧に読み込んでも「具体的になにすればよいか」はぜんぜんつかめないのです。
そんなタイミングでネットを調べると「NPSは完璧な指標ではない」なんて記事を見つけたりして「やめようか」となってしまうというパターン、あるあるです。
たしかにNPSがパーフェクトでないのは事実だと思いますが、本来の運用ルールに則って利用すると利用価値は極めて高いフレームワークです。実際にNPSを導入して、収益利益が向上し、会社の文化も劇的に変わった事例を支援してきたことを振り返るとNPSを否定する前に、まずやるべきことをきちんとやっているのかを確認したほうが賢明です。
本記事では、NPS導入で陥りやすい「つまづきポイント」を参照しながら、NPSをうまく使いこなすためのチェックリストを作ってみました。参考にしてください。
NPS運用の基本チェックリスト
□ 自社顧客のロイヤルティ向上の指標ということを忘れない
□ 関係性の調査とトランザクション調査を区別して運用する
□ 売上とNPSの相関を明らかにする
□ アンケート回答を十分量確保する
□ 究極の質問と理由設問以外に体験満足度を聞く
□ 究極の質問を体験評価の筆頭位置に置く
□ 偏愛批判者を検出する設問を置く
□ 課題改善取り組みは現場チームで遂行させる
□ 進捗を最低でも週単位で確認し、月単位で事例共有する
□ 従業員褒賞プログラムに利用する
以下、それぞれのチェックリストについての詳細内容を説明します。
(以下有料記事になります。質問ありましたらお気軽にどうぞ!)
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