JOG(1276) 歴史物語による歴史教育再生(上) ~ 人を動かす「物語」の力
進化の途上で想像力を獲得した人類は、大きな共同体をつくり、協力できるようになった。
■1.人間は「思い込み」によって、何をしでかすか分からない
安倍元首相の暗殺が世界を震撼させました。山上徹也容疑者は「母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に入信し、多額の寄付をして生活が困窮した」として、安倍氏が昨年9月、家庭連合の友好団体のイベントにメッセージを寄せたことから、「(家庭連合と安倍氏が)つながりがあると考えた」ことが、動機と推測されています。[産経]
メッセージを送った程度で「つながりがある」として、自分の将来を台無しにしてまで暗殺にまで及ぶというのは、常人には理解しがたい「思い込み」ですが、実は人間には「思い込み」によっては、何をしでかすか分からない、という性質があります。
そうした「思い込み」による史上最大の悲劇が中国の文化大革命でしょう。大躍進政策で失敗した毛沢東が、失地回復を狙って青少年たちを焚きつけて「紅衛兵」とし、政敵を倒すために「毛沢東思想の偉大な赤旗を高く掲げ、反革命修正主義分子を一掃し、社会主義革命を最後までやり抜こう」という運動を始めさせたのです。
暴動は中国全土を覆い、多くの教師、役人、党幹部が吊し上げにあい、ついには紅衛兵同士の内戦にまで発展して、数千万人の命が失われたと言われています[JOG(1245)]。これほどの規模になると、一部の人間の「狂気」というより、人間の本性にこういう事をしでかす性行があると考えざるを得ません。
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