JOG(565) ロシアから日本を見れば
私達が抱いている自画像とは、まったく異なる国の姿が見えてくる。
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■1.「私たちには日本人の心が絶対理解できない」■
ロシア在住の北野幸伯(よしのり)氏の近著『隷属国家日本の岐路』[1]の一節。氏が、ロシア政府の高官や大学教授たちと飲んでいると、必ず聞かれることがある、という。
「私たちには日本人の心が絶対理解できない」
「また来たか」と思いつつ、「なんですか?」と聞くと、
こう言われてみると、この疑問はしごく合理的かつ常識的である。戦争中とは言え、一般市民への無差別虐殺という犯罪的性格においては、2001年のニューヨークで起きた同時テロと同じである。しかも、犠牲者数は、広島・長崎あわせて30万人とも言われ、ニューヨークの約3千人の100倍規模である。
そんな日本人がアメリカを好きになるのは、アメリカ人がアルカイダを好きになるよりも、100倍も難しいはずだ。それなのに、なぜ日本人はアメリカが大好きになったのか?
米国は日本占領中に大規模な宣伝工作、言論検閲を行って、すべては戦争を仕掛けた日本の責任という洗脳を行ったのだが、これに現在まで日本人は騙されてきたのである。[a]
ロシアから見れば、こういう点が一目瞭然なのだろう。
■2.日本の「お人好し」ぶりは世界一■
ちなみに、ロシア人は先の大戦におけるソ連の行動をどう見ているのか。北野氏が「ソ連は日ソ中立条約を破って攻めてきたではないか」といっても、謝る人はいない、という。
いずれも反駁可能な主張であるが、唯一、北方領土に関して、「領土というのは戦争のたびに変わるものだ」というのは、リアリズムに立った説得性のある世界観ではある。しかし、これとても、北方領土は日本が降伏した後にソ連が攻め取った、という不法性を隠した勝手な言い分である。[b]
というのが、北野氏の結論である。言わば、日本の「お人好し」ぶりは世界一と言えるだろう。
■3.末期ガンに冒された王様を杖が支えている■
現在の日本について、ロシア人はどう見ているのか[1,p236]。
アメリカのトップは、たとえ、こんな見方をしていても、絶対に口外しない。したがって日本人がアメリカからの情報に頼っているだけでは、こういう「搾取構造」には気がつかない。
その有力者は、王様(アメリカ)から杖(日本)を取れば、アメリカは破産し世界恐慌になるので、そんな事は望まないが、として、
金を貸してやっている国が、なぜ借りている国のいいなりになるのか。これも他国民から見れば「絶対理解できない」日本のお人好しぶりの一つだろう。
■4.日本は世界で最も好かれている国の一つ■
しかし、ロシア人が日本人を理解できないからと言って、日本人が嫌いなわけではない。逆である。
「世界で日本を嫌っている国など、中国、韓国、北朝鮮くらいしかないのです」と北野氏は言う。筆者の海外体験でも、世界で嫌われているのは、逆に中国、韓国、北朝鮮の方である。
それなのに、日本人は「自分たちは世界で嫌われ、孤立している」と信じて込んでいる。これも戦後、アメリカに植え付けられ、さらに近年は近隣諸国から植え付けられた自虐史観の結果だろう。
北野氏は、この理由として以下の4点を挙げている。
1)驚異的経済発展
2)貧富の差が少ない
3)日本人の謙虚さ、礼儀正しさ
4)無条件の支援
■5.「どうすれば、日本のようになれるか教えて下さい」■
最初の「驚異的経済発展」について、北野氏は次のような体験を語っている。[1,p239]
エジプトで会った若い現地人ガイドは、「日本人をはじめて見た」と喜び、
現代世界は人種差別は少なくなったとは言え、まだまだ「白人の支配する世界」である。その中で世界有数の経済大国になった日本は、有色人種にとって、自分たちも努力すれば日本のようになれる、という「希望の星」なのである。
■6.「共産主義の理想は、日本で実現した」■
第2は「貧富の格差が少ない」と言う点。
しかし、最近はアメリカ流の市場万能主義が世界で広がり、日本でも貧富の差が広がってきている。
近年の「格差社会」論は、小泉改革を批判するが為の左翼の宣伝工作の賜物でもあり、世界的に見れば、日本はまだまだ格差の少ない平等社会である[c]。この国民の平等をいかに維持・強化していくか、国家としてのビジョンが必要である。
■7.「あなたたちを見て発展するのが当たり前だとわかったわ」■
第3に「日本人の謙虚さ、礼儀正しさ」。北野氏の知り合いのロシア人女性は、日本人男性と結婚してその後、別れたが、後悔するどころか、「次も絶対に日本人と結婚する」と断言。北野氏がその理由を聞くと:
北野氏がモスクワ国際関係大学に在学中、通訳のバイトで中央アジアに行った時、一人のウズベキスタン女性はこう語った。
「驚異的な経済発展」も「貧富の格差が少ない」も、こうした謙虚さ、やさしさの賜物だろう。
■8.「日本はナスタヤッシー・ドゥルック(真の友)だ」■
第4に「無条件の支援」。ソ連崩壊後、日本もアメリカも旧社会主義国を支援してきたが、あるロシア科学アカデミーの教授は北野氏にこう語った。
これも、日本人の謙虚さ、思いやり深さのあらわれだろう。
■9.「私たちは日本人、今のままでいい」■
ロシアから日本を見れば、謙虚さ、思いやりの深さから、世界有数の経済大国を築き、しかも国民の多くがそれを享受している平等の国、さらにその富で他国を支援している「真の友」という姿が浮かび上がってくる。しかし、その無類のお人好しぶりから、自分の力に気がつかず、それを発揮できないでいる。
こうした経験から、北野氏は「日本人は日本人のままでいい」と主張する。二流のアメリカ人などになる必要はない。中国におべっかを使う必要もない。北野氏は言う。
こうした姿勢から、北野氏は政治、外交、経済、教育など各分野において日本が目指すべき道を説いている。この点が、また多くの評論家諸氏とは違う魅力の一つである。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(098) 忘れさせられた事
戦後、占領軍によって日本史上最大の言論検閲が行われた。
【リンク工事中】
b. JOG(203) 終戦後の日ソ激戦
北海道北部を我が物にしようというスターリンの野望に樺太、 千島の日本軍が立ちふさがった。
c. JOG(492) 格差社会は幻想か?
「貧困率第2位」「ニート85万人」「非正社員 600万人増」 という「格差社会」の実態は?
【リンク工事中】
d. JOG(382) 覇権をめぐる列強の野望 北野幸伯『ボロボロになった覇権国家(アメリカ)』を読む。
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
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1. 北野幸伯『隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか? ★★★ ダイヤモンド社、H20
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「ロシアから日本を見れば」に寄せられたおたより
■須田さん(ブラジル在住)より
いつも “Japan on the Globe 国際派日本人養成講座”をわくわくしながら拝読しております。
最近わが祖国日本国民の弱体化振りを見るに、腹立たしさを覚えるのは私一人だけでは無いと思います。
そんな中にあって565号を読ませて頂き心強く感じました。
日本を離れ、早40年を過ぎんとしております私も、ともすれば日本に大きな違和感を感じることがあります。現地での少ない日系人社会の中にあって日本人の心を見失わないように、ブラジル国民に体をはって日本を伝えるとき、ブラジル語新聞で報道される日本での不祥事は心痛みます。アメリカ化され過ぎた日本人に警鐘を鳴らす意味からも、益々のご活躍をお祈り申し上げます。
■ケンケンさんより
世界には、まだ日本人に好意的で、高く評価してくれる人達が居るという事は励みになります。しかし、日本が此のままの道を行くだけなら、好意を持ってくれている人々は幻滅し、評価もグッと落ち込みそうなほど日本国内は急速に歪んできていると感じてしまいます。
今こそ日本人が、日本の正しい過去の歴史を学び直したいところです。「今の日本には何の期待感も持てない」という悪い空気を断ち、何故そんな風に思うのか、その人自身に考える気を起こさせる空気も、日本にはもっと必要な気がします。
私は、あるキッカケからそんな気になった一人ですが「国際派日本人養成講座」はとても分かり易い所から学べるので、良い先生です。
個人的には子を持つ親御さんに日本の歴史の素晴らしさを再認識して欲しいところです。良い教えが沢山あり、親が子供に教えると同時に、親も学ぶべき所が沢山あり「道徳観」もより身につくはずだと思います。学校もそういう教育をもっと見直し取り組めばいいのかもしれません。我々大人の中にも、もっとそういう意識が浸透し、下の者へ伝えていくような流れが出来れば良い結果も生まれると思うのですが。
戦後教育の流れを変えるのは容易ではないと思いますが、教育のあり方こそ「抜本的な改革」が必要なのではないでしょうか。
■奥中正之さんより
ロシア在住の北野幸伯(よしのり)氏のコメント;
お隣のチャイナと我々が精神的に対等で且つ前向きの外交関係を築いて行くには、日本人としての正しい歴史を知る必要があるというのが、私の持論である。従って北野氏の見方には賛成である。
村山富市首相は外国に向けて謝ってばかりいたので、村山ソーリ(総理ではなくて、sorryとの意)と揶揄されたものである。彼は『自国に都合の悪い歴史』(上記)を愛し(?)且つ信じているから、謝罪こそが日本国を率いる首相として最善の選択だと信じていたのであろう。この度引退を表明した河野洋平氏もその類である。
この度自民党総裁候補に出馬している石破氏も同類である。彼は防衛大臣の時、取材を受けたチャイナのジャーナリストに対して、「我々は中国に対して謝罪しなければならない」と発言している。国民の多くが『自国に都合の悪い歴史』(上記)を刷り込まれているから、河野氏や石破氏を選挙で選ぶのである。彼らは『sorry』を腹に据えて外国と向き合うのだから、初めからその勝敗の行方は見えているというものだ。北野幸伯(よしのり)氏のようにしっかりした歴史知識を持っている方でも、強烈なロシア人の自己主張には手こずっている。
繰り返しになるが、国民が正しい歴史観を持たなくては政治家も変わらない。誤解を恐れず直言すれば、民主主義は「大衆迎合主義」を不可避的に内包している。国民が『自国に都合の悪い歴史』(上記)を無批判に受け入れていると、多くの政治家もそのレベルに止まることとなる。
■GYOさんより
心情的には、決してアメリカの言いなりになっていた訳ではない。昭和22年生まれの団塊の世代は、子供の頃にマンガ「紫電改の鷹」を読み、アメリカには少なからず敵対心を持っていた。今も少なからず残っている。今は放送されなくなったが、以前は「学徒出陣」の状況が毎年ラジオ放送されていて、聞くたびに涙した。
思い起こせ! 国も復興を賭けて「国立大学」の授業料をタダ同然まで安くして工業立国を図った。外国企業の進出を通産省が時限阻止して、その間に製品をコピーした。その原動力となったのは、戦後ベビーブームと言われた団塊の世代である。今では違法であろうと思われる労働条件で、がむしゃらに働いた。風化しつつあるけれども、原爆を落としたアメリカを忘れたことは無い。表立って言わないだけだ。自虐史観など持っていない。
■ 編集長・伊勢雅臣より
やはり、教育の立て直しこそ国家百年の計ですね。