海外旅好きサラリーマンの旅のよもやま話

0.はじめに

 海外の一人旅は、刺激の連続です。

その中には、楽しいことやトラブルなどいいことも悪いこともありますが、どれも終わってみれば楽しいことばかりです。

 この記事では、私の体験をよかった話やヒヤリとした話を書いていきます。”旅って楽しいな”とか”こういうこともあるんだ”など、少しでも誰かの楽しみになってくれたり、参考になれば幸いです。

1.旅でのいい話

旅で私が出会ったちょっといい話、お得情報など。

1.1 サンキューベリーマッチ

 2013年7月。当時の会社では、隔月で中国の南端にある広東省東莞市に2週間の日程で定期的に出張があり、その中での1週目の土日。要するに折り返し地点の海外での休みの日。

 東莞からはバスに50分も乗れば中国―香港の国境のある深圳市につく。なので週末はパスポートを持って、香港やマカオで1泊2日で遊ぶのが当時の私のお約束であった。この日は香港のコーズウェイベイ周辺で買い物。

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香港は沖縄よりも南にあるため、7月という時期も相まって当然めちゃくちゃ暑い。その日も35度を超えていたと思う。こんな日はアイスに限る。街でちょうどいいアイス屋台を見つけた。

”Hi, can I help you?”  屋台に寄ると姉ちゃんが挨拶してくれた。

”Yes please.Can I have a single cup?”

"OK, What flavor?"

うーん。ブルーベリーがおいしそう。

”Humm... Then, blueberry please.”

"OK. just a moment...here you are! As it's hot today, I made it little bit bigger!"

お、大盛サービスだ。ありがたい。こっちもなんか気の利いたことしたいなけどチップ文化はないし・・・沢山のブルーベリー、much blueberryか。

あ、ひらめいた。

”Thank you BERRY much!!”わざとveryじゃなくてBerry発音でお礼。

姉ちゃん爆笑。外国人のおやじギャグはどこでも不意打ちらしい。

1.2 素敵な機内アナウンス

 海外旅行は、間違いなく多くの人にとってスペシャルな体験だ。

海外旅行での1日の体験は、日常の何十日分の体験に匹敵するし、1つの出来事だけでも何倍にも印象に残る。

 だから、旅行の思い出が良ければ、日常の素晴らしい思い出よりも何倍にもいい思い出にもなるし、逆も然りだと思う。

 2013年8月。2度目の一人旅のためにJALの成田→シドニー便に何とか乗り込むことができた私は、そのときこれから海外旅行が始まるというのにひどくイライラしていた。なぜか?トランジットでのゴタゴタ(2.3”トランジット15分”参照)があったからだ。

 とは言え夜発で明日の朝着のフライトなので機内で寝ないと初日からの観光に支障を来たす。機内食を食べたあと、気を取り直して私は翌日に備えてすぐに目を閉じ、目が覚めたら南半球であるということを考える。普段イライラするとなかなか眠れない私だが、腹がふくれてから改めてシドニーのことを考えると、ワクワクしてきてストレスはあらかたどこかに行ってしまった。

おかげで思ったよりもすぐに眠ることができたが、やはり旅の初っ端からのアクシデントはどこかしこりになった。

ここからいい旅にしようと思った。


 何時間たっただろうか。

 ”…皆さま。少し早いですがおはようございます。”

機長のアナウンスが流れて私は起きた。時計を見ると4時、いや、オーストラリアで時差+1時間なので正確には朝5時か。時計の針を進める。到着まではまだ1時間ある。確かに少し早い。何だろう。

”当機はただいまグレートバリアリーフ上空を通過しております。本日は天気も良く、きれいな海がよく見えます。みなさま、どうぞ窓の外をご覧ください。”


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 なんと。急いで外を見ると、本当にきれいなグレートバリアリーフが窓の外に広がっていた。私含めて機内の人が歓声を上げた。ここはシドニーの1時間ほど手前。クイーンズランド州の上空だ。

 あまりにもきれいで、次はここへ行きたいな、と強く思った。

もしパラシュートがあって、それが叶うならば、飛び降りてたかも。

 

いいものが見れた。最悪だった旅の出だしも、このアナウンスのおかげでとても良いものに変わった。

 後日FBで旅行好きグループにこの話をしたところ、100レスくらいついて皆さんの思い出のアナウンスを教えてもらい、非常に面白かった。

皆さんの、心に残ったアナウンスは何でしょうか?


1.3  8月の冬風邪

 8月。日本人ならこのワードを聞けば、だいたい想像するのは夏の暑い日々だ。だが世界には、8月が真冬のところだってある。日本人がそんなところに行けば、風邪をひいてしまうのも無理はない。

2013年8月。3か月ほど前に念願の40000マイルを貯めた私は、2度目の一人旅の行先を探していたところ、運よく夏休みだというのに、偶然マイルでの座席が1つ余っていた都市を見つけた。それが、シドニーであった。

 ”この時期で今を逃したらもう夏休みは海外にマイルではいけない!とりあえず予約しなきゃ!”そう思った私は、よく考えもせず予約を確定させた。南半球なのでそういえば季節が真逆だったと気づいたのは、予約後に本屋に行ってガイドを見た時だった。

 日本では連日35度超えの猛暑日が続く中、私はトランクにマフラーやセーターを沢山詰めて、日本を出国し真冬のシドニーに降り立った。

 

 ”・・・さっむい!”

気温としては8度くらいなので日本の冬の方がよっぽど寒いものの、普段8月の日本に慣れている身としては、日本の冬よりもずっと寒いように思えた。

 それでも観光は楽しく、初日の日中はオペラハウスやロックスやQVBを散策、夜はビアカフェでおっちゃんと話しながら夕食後カジノ。2日目はワイルドライフシドニーとシーライフシドニーで動物三昧した後ハイドパークを歩き、ロックスを冷やかした後ロードネルソンブリュワリーでやっぱり地元のおっちゃんとビール飲みながら乾杯して、シドニー天文台で南半球の星空を堪能した後カジノで遊ぶ。3日目はキングズクロスを散策した後Westfieldで買い物をしてシドニーの街を一望し、タロンガ動物園で遊んだあとオージービーフを食べてカジノ・・・と精力的に回った。

 4日目。この日は朝から電車に乗ってスリーシスターズを見に片道1時間の電車旅。カトゥーンバ駅に降り立つと、さすがは山地なのか一段と寒い。そのころにはすっかりシドニーの冬の気温に慣れたつもりであったが、スリーシスターズは気温3度。さすがに凍えた。

 シーニックポイントまでは結構遠い。駅からは片道3㎞だ。観光バスがシーニックポイントまで連れてっていてくれるらしいので料金を見ると、20AUD. 1AUD=80円だから、1600円!!!初日に空港の自販機で3.5$という値段を見ているので、さすがに物価の世界一高いところだなと思ってはいたが、これは高すぎる。たかだか片道30分程度。歩くことにした。

 ・・・1本道ではあるものの、かなりのアップダウンがあり、かなりきつい。3度ではあるが日差しは強く、汗をかいてしまったのがよくなかった。ただでさえ連日の観光で疲れているのに、結構な距離を歩いたので、体も弱っていたのだろう。

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 シーニックポイントに到着し、スリーシスターズを撮影した後、駅に戻って電車に乗ったころに、ちょっとのどに違和感を感じた。シドニーに戻った時にはもう完全に熱が出てしまい、貴重な旅行中であるにもかかわらず、私はホテルに戻って薬局で買った薬を飲みベッドに倒れこんでしまった。

 目が覚めると夕方だった。幸い帰ってきたときに比べ熱はだいぶ下がっていたし、体もずいぶん楽になっている。食欲も少しだが出てきた。

 翌日が最終日なので、早く元気にならないと帰国すらままならない。私は体力をつけるために、食事に行くことにした。確か2日目にいったWestfiledにはフードコートがあったはず。何か食指の動くものを・・・

 体が弱っているときや心細いときは、自然と慣れた味を求めてしまう。そういえば先日中国に出張行った時も、町で見かけた”和民”の看板がとても神々しく見え、思わず”日本で安居酒屋と思っていてゴメンナサイ!”と思いながら食べた飯はめちゃくちゃ美味かったことを覚えている。

そうだ、今こそ日本食を食べよう。

向かった先は、一風堂シドニー店。日本でも超有名な博多ラーメンの名店だ。私の大学時代、よく実家に帰る前に西千葉から千葉駅に途中下車して月1で通っていた店でもある。

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 ”いらっしゃいませー!”

日本人店員の威勢のいい声。久しぶりに日本語を聞いた。

”1人ですがいいでしょうか?”

”お!日本人ですか!お仕事ですか?”

”いえ、観光で来ました。ただ、日本が連日35度超えなのに、こっちは冬なんでちょっと体調崩しちゃいました。で、元気を取り戻しに日本食をもとめてこちらに。 あ、赤丸で。”

”あいよ!赤1つ!thirteenのお客様です!”

”そこは英語なんですね(笑)”

”ええ。慣れちゃいました。てかそんなに暑いんですか!ああ日本いきてーな。・・・ともかく、美味しいの作りますね。元気出してください!”

 ”ありがとうございます。”


久しぶりに聞いた日本語と、久しぶりに食べた日本と変わらない味のラーメンと、店員さんの優しさの味は、味覚が弱っていたにもかかわらず今まで食べたラーメンの中で一番おいしかった。


おかげで私はすっかり元気になり、最終日を楽しむことができた。


 海外旅行に行ったからにはできるだけ現地のものを食べたい。

でも時には、日本のものを食べるのもいいことだ。


1.4 税関その1

 パスポートのスタンプを見るのは楽しい。見ているだけで旅の記憶がよみがえってくる旅の証だ。

が、それは税関にとっても同じである。

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新婚旅行にて。

私と家内は新婚旅行のフランクフルトに行く道中のトランジットで、フィンランドのヴァンター空港に降り立った。

 家内「私英語苦手だから税関大丈夫かなあ…」

 私「なーに、困ったら助けてあげるから。俺を指さして My husband can speak English!といって指さしてね。てことで先に行ってもらった方がいいね。」

 家内「わかったー」


てことで家内がまず私の前に税関に行く。家内は海外は2回目。私は当時40回くらい。機内で質疑応答の練習はしてあげたが、私の方が緊張する。


 ・・・係官がニコッと家内に無言で笑ってスタンプを押してくれた。


家内はものの1分もしないうちに税関を通過していった。次は私の番だ。


 なんだ大したことないじゃないかと思いながら係官の前に行く。


係官が私のパスポートを開く。そう、40回の海外である。当時の私は仕事で2か月に1度中国に行っており、さらに週末は香港やマカオまで行っていたのでパスポートにはスタンプだらけ。30ページ以上のスタンプが押されていた。


 「What is the purpose of your visit?」

「Let me know the schedule of your sightseeing.」

「What do you do for your job?」

「What hotel are you going to stay?」

「What spot are you going to go?」

質問攻め。まあ簡単な英語だしこのころの私はしっかり返答できた。

「OK! Enjoy your stay!」

解放されたのは3分くらい後だったと思う。


「おつかれー。長かったねー」


「あの係官質問攻めだったんだけど?よく秒で通してくれたね」

「パスポートまっさらだったから、旅行初心者だと思って通してくれたと思うよ」

「ああ~。俺中国渡航歴だらけだな。」


なるほど、パスポートのスタンプがいっぱいだったから運び屋とかの可能性を疑われたのか。旅行者なら旅慣れているはずなのでそれを確認したのだろう。


 スタンプが多いと、税関の質問は多くなりがちであるということを実感した新婚旅行のスタートだった。

1.5 The lion sleeps tonight

 「来月の3連休。いつも家事してくれてるから、たまには息抜きに好きなところいってきていいよ。」

 2019年。5月。

 第2子も生まれすっかり独身時代の海外旅行ペースからかけ離れた生活をしていた私に家内が向けてくれた言葉に甘えて決まった1泊3日の超弾丸シンガポール旅行の2日目の夜だった。

 すでに私はマリーナ、チャイナタウン、カトン、ホーカー、リトルインディア、ムスタファセンター、シンガポール植物園、セントーサと見どころはすべて観光しきっており、いよいよ最後のアトラクション、ナイトサファリにいた。

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 園内観光バスに乗ってみたところ、同じバスには、観光客しかいない。私以外は全員英語圏の白人だった。

 

 何組かの友人同士らしく、騒いでいるので私はすっかり空気。まあ騒がしいのを気にしなければ落ち着いて観光できるのでいいか。


 不気味な雰囲気な夜間の動物園。暗闇から聞こえる動物の鳴き声。突如現れる猛獣。乗客大興奮。

 と思ったら寝ているライオンを発見して乗客が笑っている。

なんとなく寝ているライオンの顔を見たらThe tokens のThe lion sleeps tonight が思い浮かんだので思わず

 "In the jungle, the mighty jungle the lion sleeps tonight~♪"

と口ずさんだところ。

 "A-weema-weh A-weema-weh!"

と皆がノッてバスが大合唱に。


おかげでみんなと仲良くなれ、最後に最高の思い出ができた。

有名な曲は、ちょっと覚えておくと時にはいいことがあるものだ。

 

 

 

 


1.6 税関2

 第一印象はやはり大事だ。それは社会生活ではもちろんだが、海外旅行でも同じこと。
 その国で出会った一番最初の人によってその国のイメージは大きく左右される。
 では海外旅行の旅先で一番最初に会う外国人とは?多くは税関の係官ではないだろうか。


 2012年3月。私は初めてのひとり海外旅行の旅先として、ラスベガスを選んだ。そのトランジットとして私はロサンゼルス空港の税関の前に立っていた。

 初めての一人税関だ・・・キンチョーする。うまく受け答えできるかなあ…英語通じるかなあ…
 今でこそ通訳やっているくらいだが、当時の私はTOEIC400点台。英語には全く自信がない。
 実はアメリカは当時でも初めてではない。20年前の小学生のころに家族でロサンゼルスに行ったことがあるからだ。

 そう言えば久しぶりではあるんだよな…などと考えていると遂に自分の番がやってきた。

Hi...

Hello!

Ah...will you please let me enter USA?

税関にくる人間なんて目的は一つなんだからこんなこと言わなくてもいいのだけど、当時の私は機内でなんて言おうかまで必死に考えていたのだ。

hmm, then let me know your purpose of your visit?

今考えるとわざわざletを使ってくれるあたり大分気を使って喋ってくれたと思うが当時の私にはそんなことを考える余裕などない。

あ、目的か!それなら言えるぞ!

Just sightseeing!

Only you? or with another person?

Only me.

I wolud like to see many interesting show and play gaming and eat delicious food at Las Vegas!

OK, By the way, Is this time the first time for you to visit USA?

No. Indeed, this is the second time for me.
I visited LA 19 years ago with my parents.

OK, welcome back to USA!

そういって当時まっさらだったパスポートにスタンプをポンと押してもらえた。

お帰りといってもらえてとてもうれしく、素敵な旅の始まりになる予感がした。アメリカ人っていいやつだなと思った。

どこの税関もこれくらい気さくだといいんだが・・・

1.7 2カ国で同じ人に会う

Will you plese let me use your pen?

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旅行中、ふと後ろから声をかけられた。

バンクーバーからシアトルにグレイハウンドバスで向かっている道中。
 2014年5月。私の独身最後の海外旅行。
メインはバンクーバーだったが、せっかく陸路で数時間走ればアメリカだし、ちょっと行ってみたくなったのだ。

 そろそろアメリカとの国境なので、アメリカへの入国申請カードを書いていたところ後ろから声をかけられた。ネイティブでないイントネーション。

Be my guest・・・と言いながら振り向くと意外にも日本人だった。
「あ、日本人ですよ。使ってください。」
「失礼しました、ありがとうございます。お借りします。」
「留学生の方ですか?」
「ええ、勉強中です。そちらは観光ですか?」
「はい、半年後に結婚が決まったんで、最後の独身一人旅ですねー」
「おめでとうございます。ところで入国カードの書き方わかります?国境越えるの初めてで。」
「2年前にベガスに行きましたのでだいたいわかると思いますが、私も陸路では初めてです。一緒にやりましょうか♪」

2人でわいわいしゃべりながら記入開始。

「・・・えーと。これは『飲食物の持ち込みはありません。』のチェックかな」
「辞書無しでよく読めますね!」
「新婚旅行の為に鍛えてます♪あ・・・そういやポテチがカバンにあったわ。どうせこのままだと没収だし、一緒に食べませんか?」
「あ・・・こっちもチョコが。」
こうして国境までのおやつタイムが始まった。

 その後無事国境も越え、シアトルのユニバーシティディストリクトのバス停で解散。

「御馳走様でした♪」
「お互い様です。Have a good trip!」

で、2日半程スペースニードルとかシアトル大学とかパイクプレースマーケットとかスタバ1号店を堪能した後、バスでバンクーバーに戻った私は、最終日の観光のためにヴァンデューセン植物園で入場カードを書いていたところ・・・

「ペン借りれます?」

今度は日本語で、聞き覚えのある声で声をかけられた。

「あ、やっぱりジョーさんだ。シアトルはどうでしたか?」

「楽しかったよ」と答えながらしばらく2人で笑った後、
「そんなことよりペンは持ち歩こう。私は明日帰国なんだけどペンいっぱいあるし、なんかの縁だしこのペンあげるよ。」といってドンキで10本100円で買ったペンをあげた。

同一人物に偶然2つの国であったというのは私の人生でこれしかない。印象的な思い出だ。彼にとっても同じだろうか。

たまにドンキのペンを見ると、彼はまだあのペンを使っていてくれてるだろうかということをふと思い出す。


1.8 【長編】1回5万円、222mの世界一の落差バンジーを飛んでみた話

 "あの時に比べればこんなもの大したことない"

よく聞くセリフである。

自分は過去に凄いことができた。今、対峙している事象は、それよりも容易なことである。だからこれは自分のできることである・・・という、三段論法で自分を奮い立たせるための、いわば”勇気の言葉”だと私は考えている。この勇気とは結局のところやる気、つまりモチベーションである。

 さて。モチベーションについても細かく分けていろいろあると思う。例えば努力すること。人によっては、高校の部活をやり抜いたことであったり、受験勉強であったりだと思う。私の場合は前述のことに加え、はたまた大学時代にカードゲームで全国大会を勝って、世界大会まで出て上位入賞したり、直近ではTOEIC900をとったりといったことがそれに当たる。

じゃあ恐怖に打ち勝つモチベーションについては?人によってはジェットコースターだったりお化け屋敷だったり人間Kン系のトラブルだったり色々だと思う。私の場合は、おそらく世界最高のスリルアトラクション、マカオタワーの頂上からの222mバンジーだ。


2014年秋。2014年春まで2か月御気に入っていた中国の東莞の出張担当を別担当に引継ぎ、その時は無錫の担当になっていた私は、それまで2か月おきの楽しみであったマカオの街歩きが非常に恋しくなり、3連休のスケジュールに合わせて航空券を購入。マカオに旅立った。

 まずは一通りグルメ。定番のエッグタルトやエスカーダのカニカレーやバカリャウのコロッケ、ベネチアンのバフェ、サンズのバフェ、ウィンのヌードル、それから・・・ローカルのパン!(安くておいしくて一押し!例えば日本のパンやで買えば300円取られそうなチキンカツサンドが80円くらい!)をたらふく食べた後、次にカジノに向かう。

 私のカジノのルールその1.

基本的にブラックジャックとポーカーしかやらない。ブラックジャックは完ぺきにセオリーを覚えれば控除率はほとんど0になるし、ポーカーは運もあるが実力で結果が左右されることが多いからだ。

その2.徐々にレートを上げていく。

ポーカーはやっているところがマカオではウィンくらいしかないので仕方ないが、ブラックジャックに関してはほとんどのカジノでやっている。そのレートはホテルのグレードによる。もちろん、内装や雰囲気はグレードに比例していくので、レートの低いところはそれなりの雰囲気や内装や客層でしかないのだが、いきなり勘も戻っていない状態で高レートで打つとひどいことになること請け合いである。なので損失を出さないようにまずは低レートで練習することは非常に重要だ。

まずはいつも通りHoliday innのダイヤモンドカジノで100$ブラックジャックを30分ほど。700$勝ち。雰囲気は鉄火場のような感じだが、安いのでとにかく人が多く、卓はずっと満席。いろんなハンドが見られて、”あ、ここ私ならヒットなんだけどな”とか”絶対ダブル!”とかいろいろ考えられた。基本は完ぺきに理解しているもののやはり半年ぶりなのでちょっと違和感がある。昔は瞬時に判断できたのに。

そこから歩いて近くのRioに移動して今度は200$。ここでも30分で600$勝て、勘が戻ったことを確認。さてようやく高級カジノへ行ける。ポーカーもあるWynnに向かった。ブラックジャックはちょっと休憩したかったのでmずは5$/10$のポーカーへ。しかしこの日はブラックジャックが好調だった分、ポーカーがダメだった。結構AQsやJJやQQが入るが全くボードに絡まない。

唯一まともに絡んだのが、JcJsのハンド。

 ボードがターンの時点でQhQd8hJhになりフルハウスが完成。このボードならフラッシュやストレートも十分できうる。アクティブな2人がどっちかならご馳走様になる。Q1枚持ちでスリーカード相手でもリバーカードなどほとんど怖くない。その場合怖いのは1枚のQと3枚の8,そして相手のQの片割れの3枚の計7枚だけだ。最悪のケースでも勝率は80%を超えている。

 ということでポットの大きさと手持ちを考えてオールイン。どちらか一方を釣りに行く。思惑通り片方が受けてくれた。

”Ful house!”と誇らしげに手札をオープン。相手はQcAd。現状QのスリーカードとAのキッカー。まあそんなもんだろう。あとは引かれなければOK。リバーを見つめた。

 

 8cだった。

QQQ88のフルハウス対JJJQQのフルハウス。私の逆転負け。結局前のカジノで勝った1500$プラス最初の資金500$が溶け、-500$の赤字転落。

”This is poker!”(人生は理不尽の連続である) というポーカー界の名言をつぶやいて、テーブルを立った。今回はポーカーはしない。

トイレに行ってからドリンクをもらって冷静になった後、気を取り直してブラックジャックのテーブルを探す。高級カジノなので500$が多いが、ここは数台は300$も立ててくれるところがお気に入り。ヌードルもおいしいし。3分ほど見回すと、ブースの端に、2つの300$卓があるのを見つけた。

1つは中国人が10人くらいで大盛り上がりしている卓。・・・だめだ。ちょっと打ち方を見ていたが、ベーシックストラテジーを無視している。見る分にはいいが、一緒に打っているとストレスがたまりそう。

 わからない人に説明しておくと、ブラックジャックというのは結局のところ、ディーラー対プレーヤーの1対多のギャンブルである。結局はディーラーの手が強いか弱いかによって皆の勝ち負けが左右される勝負であり、そのディーラの手は最後のプレーヤーが引いたカードの次のカードで決まってしまう。

たとえば、プレーヤーが2人。掛け金が300$(4500円)。ディーラーの1枚目は3。1番手の私は20作ってステイ中で2番手のプレーヤーが12で選択中の状況があるとする。

この場合、ステイが正解.プレーヤーが10引いてバーストする確率と、ディーラーがバーストする確率を計算すると導き出せる。しかし実際にはプレーヤーがステイせずヒットしたところ、これが10でバーストとなった。この10はステイしていればディーラが引いていたカードだ。次にディーラーが引いたカードは9.ステイしていれば、3→13→22で私の勝ちが確定していたが、実際はディーラーは12なのでまだ引く。また9で21が完成。私も負け・・・というケースがよくある。

この場合、被害を受けたプレーヤーはたいてい、”あいつがしっかり打っていれば・・・”と内心毒づく。まあ逆もあるんだけど、心理学的に人間は得をした喜びよりも損をした時のダメージの方がでかいので腹立たしく感じてしまい、気分が悪くなってしまう。

 話が長くなってしまったが、とにかくこの卓で打つわけにはいかない。

もう1つの卓を見た。

賢そうな香港人と思われる物静かな青年とディーラーの1対1の卓だった。とりあえず5戦ほど観戦。・・・うん、この人上手い。ここなら気持ちよくプレーできそう。その卓に座り、2500$をディーラーに渡してチップに変えてもらって、1時間ほどプレーした。


結果。


25Bet,つまり300×25=7500$の大勝であった。


彼は本当にクレバーであった。卓についてすぐ、彼が正確に行ったステイのおかげでディーラーがバースト連発。5BETずつ勝ったあたりから仲良くなってドロー判断を話し合いながらプレーしていたのだが、ほとんど意見が割れない。一度だけ、ディーラーの10に対してA7で引く引かないで話したが、結局セオリーだと引くのがほんの少しだけ有利だが、前のゲームで出た絵札と今のゲームで出ているカードがほとんど絵札なことから、”どっちでもいいのでダイスで決めよう”となってステイしたところ、ディーラーが6→7でバースト。”引いても21作れたじゃん!”といいながら次のゲームでめくれた私のカードがAで、顔を見合わせて爆笑。うん、引いてたらディーラーがブラックジャックで前のゲーム全滅だったよね。で、私に配られた次のカードが絵札でブラックジャックになってさらに爆笑してハイタッチ。

そんなこんなで手持ちの2500$だったチップはちょうど10000$に。

なかなか私には持つことができないチップなので手に持ってみたいしここでヤメ。10000$チップ1枚を受け取った。・・・重量的には軽いけど重さを感じる。これ1枚で15万円だ。ひとしきり眺めた後、キャッシャーに”exchange please”といってどや顔で渡す。

・・・ドライに1000$札が10枚帰ってきただけだった。

私にとっては大金でもここに来る人にとってはそうでない人も多い。失礼しました~と思いながらホテルから出てようやく”よっしゃ!”と独り言を叫んだ。

10000香港ドル。日本円で15万。飛行機5万とホテルや飲食費3万の8万を入れても余裕のプラス。旅行で楽しんでお金も増えるなんて最高じゃないか。

予定外の対象でお土産の予算もグルメの予算も上げたが、それでも4000$が手元に残る。時間的に香港の重慶マンションに戻るのも面倒。かといって空港はレートが悪い。おまけに次にマカオや香港に行くのはいつになるかわからないのでお金を取って置く選択肢もなし。使いきるのがベスト。


「$4000くらいのアクティビティねえ…」

なんか同僚がマカオのサウナは最高!とか言っていた気がする。が、婚約中なので却下。何か健全なもの…ふと遠くを見るとマカオタワーが見えた。あれだ。


 バスでマカオタワーへ。マカオへは10回くらい言っていて、もちろん飽きるくらいしている街歩き中に遠目で見て存在は知っているが、ベガスのストラトスフィアタワーのようにカジノがあるわけでも、見どころがほかにあるわけでもなく(ベガスのストラトスフィアタワー近くのボナンザのお土産ショップいいよねえ。)今までスルーしていた場所。それがマカオタワーだ。

 タワー地上階では受付をしていた。結構人が多い。自分の番になるまで10分ほど並んだか。バンジーのほかにも登るだけだったり、党のてっぺんを歩くツアーもある。バンジーのお値段は$3500。1香港$=15円なので52500円。冷静に考えると高いのだが、カジノで買ったのと目の前にあるお札が日本円ではなく香港ドルなので現実感もなくポンと払う。もし5枚の10000円札だったらやめていたかもしれない。

”このアトラクションによって生じた事故によるけがや死亡による請求は致しません”という旨の念書にサインを求められる。これまで1度も事故が発生したことがないことを聞いて幾分安心してサイン。念書と引き換えに記念のTシャツがもらえたのでせっかくだしこれに着替えると、最上階に向かうエレベータに案内された。

 ジェットコースターは割と好きだ。TDLのスペースマウンテンや当時働いていた会社のあった三重県のナガシマスパーランド程度なら、まったく怖くない。なのでバンジーもまあそんなもんだろうと考えていた。

最上階についてエレベータの扉が開く。目の前に広がったのは5人が待機していて、ちょうど1人が飛ぶ光景。楽しそうに飛んでいいる。えらく勢いがいい。ああやって飛ぶのが格好いいと思った。5分後に次の人が飛ぶ。5分か。飛ぶ→90秒 おろす→60秒 次の準備→150秒 といったところ。当たり前だが安全確認にはかなり念を入れていて安心した。

私も次の人の見学は先ほどの位置よりも前だったので今度は人が良く見える。白人の姉ちゃんであった。キャーキャー言いながらノリよく飛んで行った。

さらに15分後。とうとう前に人が飛ぶ番。ここまでくると次の順番である私は外で待機刺さられ、ハーネスを装着される。装着中は暇なので下を見ると、ホテルも宿も車も小さい。飛行機の離陸のようである。

・・・え、これを生身で飛ぶの?

急に怖くなって前の人を見る。顔が引きつっていた。が、そこは2人のスタッフが”3.2.1Bungey!”と言って背中を押して前の人を飛ばした。・・・いや、落としたというべきか。正直かっこ悪かった。

 もはや後には引けない。せめてかっこよく飛ぼう。


ついに自分の番が来た。バンジー台に向かう。よくある工事現場の足場みたいな鉄の足場が、当たり前だけど途切れている。地上250mくらいなので風も強い。台の上に立つまでは周りの足場が視界に見えているので普通に歩けていたが、台の上ではもはや視界は前方の足場以外はすべて下。ここで膝が笑い始める。”ダメだ!”と思うももう後には引けない。

”You ready?” ”Y, Yes....””OK,jump from here when I say "3.2.1bungey!"

いよいよだ。

かっこよく飛ぶ目標はもはや”引っかからずに飛ぶこと”程度に変わっていた。

学生時代、中国の処刑方法で蛇がうじゃうじゃいるところに罪人を落とす話があったな。罪人はこんな気持ちだったのだろうな…なんてことを考え現実逃避しながらもなんとか両手を広げて台の先端に立った。

これだけでもかなり度胸がいる。前をよく見られない。

あとはカウントダウンを待つだけだ。

”3!”

もう覚悟はできている。

”2!”

前言撤回。無理かも・・・っていうのが無理だけど。

”1!”

…覚悟が決まっていないまま飛ぶことになったな。

”Bungey!"

自分で飛ぶのはどうやっても無理なので背中を押してもらい倒れこむことにした。それなりに様にはなったと思う。

地面は250m下だ。222m落下するので30m手前まで接近する。


体が前に倒れていく。

景色が空...雲...ビル...景色がゆっくりと変わっていく。

2秒もないはずだが、私の中では15秒程度の長さの感覚の記憶だ。そして体が90度倒れた時に見えたのは250m下の地面、車、家であった。


体がすごい速さで落下していく。ジェットコースターでもここまでの速度はない。1,2秒は怖かったが、慣れた。ふと頭のねじが1本外れる音がした。

視界に見えるもの1つ1つがみるみる大きくなっていく。重力を感じるがすぐにこれも慣れた。そうこうしてさらに5秒後。1度最下点に到着する。マットが目の前だ。ここからは逆方向。みるみる小さくなるマット。150mくらいに戻ったと思う。逆の慣性力。もう慣れている。顔を上げて街を見渡すことができたので、あたりを見渡したらちょっとだけ鳥になれた気がした。ポーズをとるのが楽しい。

3回目、4回目と上下する距離が短くなっていく。こうなるともう怖くない。後の時間、降ろされるまでの間は完全に楽しめた。


体験してみて。

・人生で味わったことのないスリルであった。もうあれに比べればたいていのことは怖くない。

・あの時の感覚はおそらく一緒の忘れられない。今でも思い出そうとすると簡単に回想できる。

・終わった時の高揚感と安堵感も忘れない。

・いい意味で頭のネジが1本外れてくれた。


確かにマカオのバンジーは1回5万円と値は張る。

だが、1回やればいつでも回想できるし、私のように度胸がつく人も中に入るかもしれない。個人的には超おすすめのアトラクションであった。


1.9【一応完結】 【カジノ】【長編】後悔しない選択を

 私は間違いなく旅行者の中ではカジノが好きな方の人種である。

 とは言え私自身は別にギャンブルが特に好きというわけではない。日本にいるときはパチンコや競馬はやらないし、宝くじも買わない。じゃあなぜカジノに行くかといえば、あの独特の雰囲気を味わうのと、大好きなポーカーをプレーできるからである。ポーカーならば24時間ぶっ通しでプレーしても苦痛ではない。

 今でこそ、海外ではカジノのある都市に行った時には1~2時間程度顔を出す程度になったが、昔の私はとにかく週末は大阪の梅田や日本橋のポーカースタジオや心斎橋のカジノバーで酒を飲みながら毎週ポーカートーナメントでポーカーをプレーしていたため、初めての一人海外旅行としてそこを選んだのは、当然といえば当然であった。


アメリカ、ネバダ州ラスベガス。いわずと知れた世界最大のカジノ都市である。

 2013年3月14日。朝4:00 起床。

伊丹空港行のバスは5:30天理駅発。

もちろん奈良県ではこんな時間にバスもタクシーも通っているはずもなく、寮から4キロ重い荷物を抱えてダッシュする。

ぎりぎりセーフ。

客が私しかいないけど大丈夫なのだろうか?
持っていた本は小説もあったのだが誰もいないので
人の目がある中で読むにはちょっと恥ずかしい本、
「カジノ大全」を読む。

クラップスのルールとブラックジャックのチャートの確認をしつつ到着。

朝6:30空港着。

空港ロビーの国際線乗り継ぎ受付の列は学生さんらしき人たちが多くて混んでいた。

目の前の学生さんを見ていると、
なんで自分は学生のうちにもっと海外行かなかったのかと思い後悔してくる。
昔はあんなに時間があったのにねえ。

若干ブルーな気分になりつつ、7:30出発。
8:30成田着。


LA行の便は16:40発。
何するかって?決まっている。

実家が成田にあるって素晴らしい。5時間ほど久しぶりの帰省。

正月ぶりにおふくろの手料理を堪能。
おふくろから実は新婚旅行はラスベガスだったということを聞き、
”やっぱりいつか行くと思ってたのよね”と言われ、お小遣いとして3万円を渡される。ありがたい。


15時に再び空港に。

 搭乗時間までは3時間30分もあったが、初一人旅出しこれでも不安であった。実際、搭乗するアメリカンエアラインでは当時持っていたANAカードではマイルが貯められないことを知り、急いでJALカードを作ったり、空港内で一番安い両替所を捜し歩いたり、カードの空港ラウンジを利用しにわざわざ空港の端から端まで移動してたりしてたらあっという間だった。

両替金額は10万。1200ドルちょい。
ちょっと多かったと思う。

空港ラウンジは初めて利用したが、思ったよりしょぼかった。
やはり年会費4000円のカードではこんなものだろう。

年会費カードの価値の大半はやはり海外旅行時に無料でついてくる保険なんだろうな。ガンガン海外旅行に行かないと損をする仕組みである。

さて、搭乗の時間が来た。
飛行機はエコノミーの座席ながらも、このクラス一番前の中列であり、しかも右隣が空席だったため意外と快適な空の旅になりそう。
もう一つ右隣のアメリカ人の姉さんと半分ずつ空席を荷物置き場として使うことにした。

問題は左隣。
日本人だったのだが、
離陸して1時間ほど経ったとき、
CAが飲み物について"Would you like someting to drink?"
と聞いてきた。
お隣さん答えず、間が空いた。
じれったいので奥の方の私が先に
"Can I have coke plese?"というと、
"Me too."
と被せてきた。
「同じのください」と言いたいのなら
"Same one please."で良いじゃんと思いつつも貰ったコーラを飲んで寝る。

起きると3時間経っていて、またCAが飲み物を聞きに来てくれた。
今度はお茶が欲しかったので、
"Can I have Green tea?"と答える。
隣"Me too."

やれやれと思いつつ、貰ったお茶を飲んで”素敵な金縛り”
を見ることにする。最近の映画をただで見れるのは飛行機のいいところだ。

映画を観終わったころに、またCAが飲みものを聞きに来てくれた。
うむ。ビールが飲みたい。それも日本じゃ飲めないやつを。
だからこう聞いてみた。

私"Excuse me, what beer do you have?"
CA"Hineken,Badwizer,and Amstel light."
私"Amstel light? I have never heard that one! Then, can I try that?"
CA"OK."

わーい。アムステルダムのビールだって。

隣"Me too."
こっちの方は見ず。

おい。

さすがに毎回飲みたいものが一致する訳ないでしょう。

CA苦笑。

同じ日本人なんだから。英語をしゃべるのが苦手なら聞いてくれ。
それでなくとも何か一言くらい言ってくれ。

「気が合いますね~」と嫌味を言いたくもなったが我慢した。


そんなこんなでちょっと気分を害しつつも9時間ほどでLA国際空港到着。
夕方の16時に出たはずなのに着いたら朝の9時っていうのは不思議な感覚だ。

12時ジャストにベガス行の便が出るのでそれまでに手続きを終えないといけない。
3時間あれば余裕…のはずだが、初めての一人海外となると結構不安である。

まず税関だ。

税関のオッチャンが
"What is parpose your visit?"(旅の目的は?)
と聞いてきたので
"Mostly bussiness, but also I visit USA to play poker."
(ビジネス時々ポーカーって感じですね)
と答える。
そこから日本のポーカープレイヤーは珍しいだの、どこのポーカールームでプレイするのかだの、LAにもポーカールームがあるので覗いていったらどうかと勧められる。
ポーカー大好きらしい。

最後に
"Have you ever been to USA?"(アメリカに来たことってある?)
"Yep. I visited LA 18 years ago."(18年前にここに来たことあるよ)
と答えたら、
"Welcome Back to USA!"と言ってくれた。
アメリカの税関って意外に気さくなことがわかった。

次に乗り換えのターミナルへの移動したところで困りごと発生。
電光掲示板にラスベガス行の便が表示されていない。

インフォメーションに行って聞いてみると、何のことはない、ターミナルが違うのでこのメモのターミナルに行くようにとのこと。
ターミナルは遠いのでシャトルを使うようにともアドバイスを受ける。
ありがとう!

掲示物は注意深く見たはずだけど、乗り換えに関する表示はなかったと思う。こんなの聞かなきゃ分からない。アメリカの設備ってたまに不親切なところがあると思う。

シャトルに乗るために、一度外に出る。
日本よりちょっと暑い。
外に出ると、桜が咲いていた。

親切なデスクの人のお蔭で10:30にはターミナルにたどり着けたので、
ゆっくり買い物。

・5セントと25セントの区別がつかなくて足りないよと突っ込まれる。
・チップの払い方で戸惑う

など一通りの洗礼を受け、いよいよベガス行きの便へ搭乗。
座ったとたんにどっと疲れが出る。
たった1時間のフライトなのに、眠くて仕方ない。

やっぱり緊張してたんだろう。寝よう。
目が覚めたら、ラスベガスだ。


・・・

隣のあんちゃんが”Wake up!”と言って肩を叩いてくれた。
どうやら眠ってしまったらしい。
"Thank you for waking me up. I was completely sleeping!! Haha!"
(ぐっすり寝ちゃってたよ!起こしてくれてどうもありがとう!)

とお礼を言って外を見る。
外を見るともう飛行機はラスベガスはマッカラン空港に着陸していた。


"Have a good trip!"(良い旅を!)

と言ってもらえた。刺青してていかつい外見してるけど親切な人だ。

飛行機を降りると、あることに気付く。
うるさい。何の音かと言えば、スロットマシンである。
ここは空港のターミナルにもかかわらず、である。

流石カジノの街ラスベガス。

ベット額をみると25セントと書いてあり、値段的にも完全にお遊びなので早速、初スロットなるものをやろうと思ったのだが・・・
ちょっと右を見ると新婚さんらしきカップルの男性の方がいきなりスロットをやろうとして、女性の方に”荷物が先でしょ!”と怒られている。

 反面教師になった。

まずはバゲージクレームに荷物を取りに行くことにする。

空港のバゲージクレームはターミナルからかなり離れていた。
シャトルに乗って、そこからかなり歩いた。このあたり、持っていた観光ガイドには載っていなかったので、ちょっと戸惑った。書いといて欲しい。

荷物を受け取ると、ようやく外に出られた。
タクシー待ちの列に並ぶが、これが超長い。気温がまだ3月というのにとても暑く、大きなトランクを持っている身にはしんどい。
夏服のポロシャツを1枚ではなく2枚持ってくるべきだったと後悔。

でもタクシー待ちの列は長かったものの、タクシー自体はひっきりなしに来るのでホテルの場所をタクシーの運ちゃんになんて言って説明しようかなと考えてるうちにすぐに自分の番が来た。

ラスベガスにはMGMやマンダレイベイ、ベラッジオ、パリス、リオ、トロピーカーナ…いろいろな超有名ホテルがあるが、もちろん自分はそんな高級なところには泊まらない。

やはり運ちゃんも名前を言ってもピンとこなかったので最寄りの有名ホテルであるMGMの近くだよというと納得してくれた。
近くの有名な場所を把握しといてよかった。

運ちゃんにラスベガスの美味しいお店などを教えてもらったり、他の日本人観光客の話を聞かせてもらったり、ラスベガスの有名な建物を解説してもらったりなかなか楽しいタクシーだった。

高速道路から見たラスベガスの街並みは、建物が何もかも大きくて迫力がすごい。
思わず"Wao! Cool! Everything is Big!"
"I.(ちょっと考える)..I have never seen such a view!"

と中学レベルの英語を喋りながら大はしゃぎ。

そんな当時の私のTOEICのレベルは400点程度。今のレベルでベガス行ったらもっと楽しめていたかもしれないな、と書いていて思った。


料金は20$とガイドで見た価格13$からだいぶ高く、
あれれ?と思いつつも
本の情報が古いかもしれないしのっけからトラブル起こしたくないし、
笑顔でチップ込みで25$を
”Take all of this.”
と言って渡した。

"Thank you appleciated."と言われた。
意味はこの時はよくわからなかったが、
直訳すると”評価してくれてありがとう”だから
チップをもらった時の決まり文句なんだろう。

ホテルに着いてチェックイン。
部屋と泊まる日にちや設備を確認して部屋へ。

部屋には大きなベッドとシャワー、TVエアコン、タオル、シャンプーとリンス、石鹸と一通りのものは大体あったのだが、
なぜか歯ブラシとカミソリはない。
意外だった。

でも1泊2000円以下のホテルにしては満足である。

まだ現地時間では昼の2時であるものの、眠い。
とりあえず近くのコンビニで歯ブラシとカミソリを散歩がてら買い揃えに行き、ひと眠りしてから行動することに決める。

コンビニまでの道中で、Hootersというホテルがあったので、ちょっとカジノルームを覗いてみる。

ブラックジャック、クラップス、スロット、ルーレット、
そしてお目当てのポーカーもやっている。

超有名ホテルからは1ランク落ちるものの、それが逆にアットホームな感じがして居心地が良い。客の服装もラフである。ついでにディーラーも。

疲れてるので初っ端から
”いかにも高レートなカジノでござい”
っていうような正装を求められるところでプレイしたくないので、最初はここで遊ぶことにしよう。後で出直すことにきめた。

ブラックジャックの最低ベット額は1ゲーム10$。今でこそ世界のカジノを見て回って、このレートは相当良心的だと考えられるが、当時の私の給料からすると、ものの30秒で1200円が増えたり減ったりするというのはビビッてしまった。

 すぐにでもプレイしたかったが、頭がつかれているときにやってもヒドイ結果になることは明らかなので、いったんホテルに帰還。

シャワーを浴びて、とりあえず昼間っから仮眠。


18:00頃に目が覚める。
さて、いよいよ初カジノだ。

自制のため財布の中の紙幣を200ドルだけ残し
残りは部屋の金庫に置いて、Hootersへ。

これが後でファインプレーだったと気づくのは、
この日が終わった時の話になる。



ホテルから徒歩5分。カジノ到着である。

さて、何からやろうか。

スロット?論外。一番オッズが悪いし、何より、喋らないで出来てしまう。
この旅行(出張)の目的の1つには英会話力を上げるということも入っているのだ。

クラップスの卓は20人くらいがギャーギャー騒いでエキサイトしてる。
こっちは逆に喋るどころではなさそうだ。
初っ端から7出しまくって睨まれたくもない。

ポーカー。満席だし、まだやるにはカジノの雰囲気に慣れてなさすぎる。

というわけで消去法的にブラックジャックに決定。
プレイヤーも4人しかいなくてディーラーとプレイヤーが和気藹々とプレーしている。
真ん中の席と左端が空いていたが当然真ん中に座る。

ブラックジャックにおいて、左端の席というのは超重要なポジションである。

こいつがヒットするかステイするかでディラーの引くカードが変わってしまうため、左端がミスしたせいで本来バーストしていたディーラーが21を作ってしまってテーブルの空気を悪くするんなんてことは日常茶飯事なのである。

ブラックジャックのプレイングにはそこそこ自信があるはずだが、
他のプレイヤーにとって、いきなり外人に運命を決められるのは嫌だろう。

"Chips please."と言って100ドルを出すと、
"can you show me your ID?"と言われるので、パスポートを出しながら、
"Is it ok?"
と聞くとOKのようだ。

カジノでテーブルゲームをプレイする時には必ずIDの提示を求められるが、当時の私は知らず、少々びっくりしてしまった。パスポートを携帯していてよかったな。

周りのプレーヤーに挨拶してゲーム開始。

さて、最初のハンドは…
10+6の16.ディーラーのアップカードは10.

いきなり腕の見せ所である。
これがブラックジャック初心者の頃だったら、ヒットしてバーストしていただろうが、この旅行のために半年間腕を磨いたので、正解が明確にわかる。

いきなりのサレンダー(掛け金の半額を支払って降参。)をした。

最初からこんな最悪の組み合わせになって残念だが、
確率的にはこれが正解である。
ベット額10$の半額、5$を払ってベット額を返してもらう。
結局ディーラーのもう一枚のカードも10。
合計20。

他の2名はバースト。
ともに19でステイしたオッチャンとにーちゃんが悶えてプレイヤー全滅。

自分だけは軽傷で済んだので、考えようによっては良いスタートか。

そのあとも連続で難しい状況が来る。
A+6 で相手2見せとか A+7で相手4見せとか 9+9で相手が9見せとか。
(正解は、ジャストヒット、ダブルダウン、スプリット)

ほかのみんなはブラックジャックとか10+10とか5+6とか(鉄板ステイと鉄板ダブルダウン)
簡単な手ばかり配られてちょっと嫉妬.楽に打たせてほしいものだ。

途中ディーラーが3回連続ブラックジャックをしてくるも、50ハンドほどプレイして何とか2ゲーム分20$浮き。
ダブルダウンしたゲームすべて勝っているのが大きい。

待望のブラックジャックはまだ来ない。

ここでディーラー交代。
2時間このディーラーとずっと打っていたらしいオッチャンが挨拶してディーラーに5$チップをあげていた。

なるほど。
カジノでもチップは上げるものなのね。
自分も初めてのカジノのゲームでサポートしてくれてありがとうと言うと、
明日はブラックジャック引いてねと言われる。
全員のカードの数をカウントしながらも、よく見てるなぁ。

ディーラーってすごい。
勝たせてもらったことだし、自分も5$チップをあげる。

完璧に打っても割が100.5%しかないこのゲーム。チップをあげていては長期的に見て負けるのは必然だが、気持ちよく打てたし、練習させてもらったお礼だ。

ディーラー交代中にフロアレディにビールを頼む。
カジノではお酒がすべてタダなのは嬉しい。
まあ客がどんだけ負けてんのって話なのだが。
チップ1ドルを渡してハイネケンを飲み、気合を入れる。

この交代中にみんなから質問攻めにあう。
どこから来たのかとか仕事なのかとか君の国にはカジノ無いはずなのにブラックジャック上手いねどこで覚えたのとか。

日本にはカジノはないけど、それでもブラックジャックやポーカーができるところは大阪にはいっぱいあるんだよと答えておいたらちょっと関西に興味を持ってくれた。

本当に関西はカジノバーが多い。
就職先が関西ではなかったらカジノにも出会っておらず、ラスベガスに来ることもなかっただろう。

カードカットの時、みんなが"This turn is yours!"
と言ってカット役をさせてくれた。ありがとねー。

ディーラーが変わってすぐにビッグターンが来る。
ディーラー6見せで自分のカードが7+7!
大チャンス。
当然スプリットすると、
右側に4が来て11!
さらにダブルダウンチャンス。迷わず10$を追加してカードを1枚引かせてもらうと、めくれたカードは・・・

A!

10,J,Q,Kを引いて21を作るつもりだったが、最悪のカードを引いてしまった。。。合計12.ダブルダウンなので、強制的にステイとなる。

しかし左側はまた7となり、再度スプリットの権利が発生。

10$をまた追加してスプリット。

すでにこのゲームでは4枚目の10$チップだ。

2口目は3。合計10!!またダブルダウンチャンスが来た。5枚目のチップを追加してダブルダウン。

5。合計15.これも最悪に近い結果だ。3口目は10を引き17となってステイした。


合計50ドル。結局1口目に2倍掛け(12)、2口目にも2倍掛け(15)、3口目(17)
という酷いハンドで合計50ドルの大勝負をする羽目になってしまった。


周りのみんなも心配そう。

ディーラーがフェイスダウンカードを開く。
エースは止めてくれと願うと、10だった。
これで16。ディーラーは17以上でないとステイできない。これならバーストの可能性も高い。いや、むしろ勝率でいえば6以上を引いてもらえばバーストするので50%を超えているので有利だ。

でも50$がかかっていると落ち着かない。

祈るような気持ちでディーラーの3枚目のカードを見る。


8だった。



ディーラーバーストでなんと50$の勝ちである。

皆で"Give me five!!"と言いながらハイタッチ!
ディーラーも加わってくれる。

ついでにフロアレディも飲み物いかがと聞いてくる。
上手いタイミングだ。
チップを弾まないわけにはいかない。

これ以降、お互いにダブルダウンの時には
"Good luck!"と言ったり、
16から泣く泣くヒットして5を引いたりして21を作った時には
"Good job!!"とお互いに言い合ったりすっかり仲良しに。

1時間くらいして、やっと待望の初ブラックジャックを引き、満足してゲームを終えることができた。

手元にはなんと170$のチップが残った。ビールのチップとディーラーへのチップで10$減っているが、それでも70$の浮きである。

カジノの雰囲気は、そこそこ慣れた。
それにこれだけチップがあれば、ポーカーでもスキル勝負ができるはず。
条件は揃った。

チップを持って、迷うことなくポーカールームに向かった。


(8月22日23:00追記)

ポーカールームへ到着。

一口にポーカーと言っても、カジノで行われているポーカーは
お目当てのノーリミットテキサスホールデム以外にも

リミット・ホールデム
オマハ・ホールデム
バイゴーポーカー
日本でおなじみ5カードドローポーカー、

など種類が多数あるので入る前に確認しないといけない。

ちょっと様子を見ると、やっぱりホールデムっぽいので受付の人に
"Is that game NL Texsas Holdem poker?"
と聞くと"yes"と返ってきて一安心。るんるん
レート確認。
私"How much are blinds?"
受付"1 and 2."

SB1$にBB2$ !
実に良心的。
バイイン額もミニマム50$MAX200$と安心レート。
唯一良心的でないのはレーキ(カジノの取り分)だけである。
ポットの10%で上限4ドルかー。

でも初めてのカジノポーカーとしては悪くないだろう。

卓は2つあり、1卓が満席となっていた。
空いたら入れるので待つようにと言われ待合席に。
待っていると、続々と参加希望者が来る。

珍しいんだろう。
どこから来たのとかポーカーはよくやるのとか聞かれる。
"I often play it in my country,but as I have never played it in foreigen countory, so there seems to be a butterfly in my stomach!"
(結構やるんだけど、海外でやるのは初めてだから、ソワソワして仕方ないよ!)
と答えると、
"good English!"と驚かれる。


there is a butterfly in stomach~っていう表現はなかなか通らしい。
(胃の中に蝶々がいる=落ち着かない)
ちょっと嬉しい。

結局1人抜けが出る前に5人も集まってしまったので、15人で2卓。
やはり一人だけ黒髪だと相当目立つ。
いろいろ突っ込まれる前に先にみんなに挨拶。

名前を聞かれたが、日本人の名前は発音しにくいのでジョーだと答えといた。余談だが、のちの私のハンドルネームのはこうして生まれた。
隣のあんちゃんはショーンと言うらしい。
彼とは今でもポーカースターズでプレイする仲だ。


さて、ようやくゲーム開始。
記念すべき初手はミドルポジションからの22.
いきなりペアハンドが配られ、ちょっと嬉しくなるがすぐに冷静になる。
今日は初めてのリングゲームだ。
…固くいこう。

ブラインド以外の時なら、せっかくタダで降りられるのだ。
急ぐことはない。フォールドする。

普段なら喜ぶレベルのハンドを捨ててしまったせいなのか開始から30分間、まったく手が入らず降りつづける。

気づけばブラインドで削られて170$→155$に。
ポットはまだ一度も取れていない。

隣のショーンが
"ハンド来ないみたいだね。"と言ってくる。
私は"ツイてないんだ"と言いながらボタンのA9oを、
前にいる5人のリンパーを見ながら捨てる。
これも、人によっては喜んでプレイするんハンドである。

この30分で分かったことは、
・レートが低いこともあり、皆遊び感覚で参加しているので、プリフロップでコールがやたら多い。フロップ6人参加とか日常茶飯事
・でもレイズしてくるのは本当に強い手。ブラフの3ベットはまず飛んでこない。
・誰もチェックレイズ使わない。
・フロップ後のベットに対して、ドローもないのにセカンドペアくらいならコールしてついてくる人が多い。

一言でいえば、読みやすい卓だ。
後はハンドさえ来れば、と思っていると、やっとボタンでKdKcが来る。

自分の番が回ってきて、目の前にはリンパ―が4人。

卓に2$チップがリンパ―分の4枚と、BBで計5枚。それにSBの21$が1枚だ。
いつも安くフロップを見られていたけど、今回はそうは行かないぞ。

"raise make 15$!"
ルーズな卓だから、ちょっと多めにレイズ。
一気に5ドルチップを3枚前に置く。

SB,BBが速攻フォールドで
リンパ―のうち3人が渋い顔してフォールド。
1人がついてくる。

これでポットには
1+2+2+2+2+2+15+15=41$が入った。

フロップは、
Jd,9c,4s

まずまずだ。オーバーペアとなった。スーツはバラバラなので、フラッシュ狙いはまずできない。

こちらのフロップは相手からしても、当たってなさそうに見える。
これで相手がJ1枚ヒットなら、うまく誘導すればかなり搾り取れるはず。

この時点で怖いのは99もしくは44持ちのみ。J9や94,J4なら、いくら何でもさっきのベットにはついてこれないはずなので。

フロップベット。

リンパーがチェックして来た。ベット額を考える。

私は22$ベットとした。

44,99ならもちろんついてくるが、それ以外ならついてくるのは相手にとって確率的には分が悪い。が、それは相手がこちらの手をオーバーペアと正確に読めている場合だ。相手にしてみれば私の手はAA,KK,QQ,J,AK,AQ,AJ,あたりを考えているだろうが、どれかは絞れない。AKやAQからのブラフベットにも見えなくもない。そうとも見えるような金額だ。降りるのが正解のケースもあれば、コールするべきケースもあるので本当に相手次第だが、私のハンドの希少性から、読み間違えてもらえる可能性が高い。降りてもらうのももちろんうれしい。

 最悪のケースの場合は被害を最小限に抑え、それ以外の場合は利益を最大化する数値。この場合はポッドの半分が適当と判断したのだ。


相手はコールした。

ポットは41+22+22で既に85ドルである。

あれ?99か44か?それともAJかQJか?だとしたらAとQはスケアカードだ。ターンは慎重にいかざるを得ない。急に不安になって来たところでめくられたカードを見る。

ターンは、Ks。最高のカードだった。

相手はチェックしてきた。
利益を最大化するためにはもう1段相手をミスリードする必要がある。・・・

 まず、相手がチェックしてきた理由は何だと考えた。44、99であればスリーカードできているのでターンではさすがにベットしてきそうな気がする。だとしたら44,99ではない可能性が高く、現時点であまり大きな勝負は受けてくれないと考えられる。私も動きづらくなったように見せないとこの後搾り取ることができない。

 やはり相手にとって都合の良く見えるようなアクションは、私もチェックをここでは返すことである。

 今までの行動と矛盾が出ないハンドで、かつ今落ちたカードが都合の悪いように見えるような都合のいいハンド・・・QQだ!これなら今落ちたキングは最高どころかスケアカードのように見えるはず。

ここまで思考をまとめた後、私はチェックした。

リバーで彼の手を強くするカードが落ちてくれれば幸いだ。

リバーはJh。 
彼にもスリーカードが出来たらしい。
こっちはフルハウス完成だが。
彼は60$をベットしてきた。

ちょっと手元を見る。
私のスタック(残りチップ)は
既にこのハンドにつぎ込んでもはや120$程度しかない。

私の今回の旅の目標の1つに「オールイン」と言うということがあった。
まさか初日から言える機会が来るとは思わなかった。

"I'm all in!言いながら手元のチップをすべて押し出した。
やってみるとわかるが、とても気持ちいい。

相手はちょっと考えて、

"nice river."と言いながら追加の60$を出してコール。
その手は、私の予想の1つであったAJ。
予想通り、JJJ+Aのスリーカードである。

"Sorry."とだけ言って、直ぐにKKKJJのフルハウスを開いた。


レーキ分を引いても+160$。念願の初ポット獲得を最高の形で迎えることができた。

周りが"Nice hand!"と言って褒めてくれる。
やっぱりまったく参加できていなくて皆気がかりだったらしい。
ディーラーも"おめでとう!"と言ってくれる。

??

日本語?
よく見たらディーラーさん、日本人だった。電球
ラスベガスでディーラーやってるなんてすごいなあ。

※彼女には、分からないことを教えてもらったりして、大変助けられた。
今度日本人のポーカープレーヤーがラスベガスに行くことがあったら、
迷うことなくフーターズを勧めようと思う。

"This is for you♪"
と、ディーラーに5$チップを渡す。普通は1$でいいのだが、勝ち額が額だし、最初だからまあいいだろう。
これから通訳もしてもらうかも知れないし。

このプレミアムハンドを見せたことで、
皆にとっては、
"こいつは滅多に参加しないが、参加して来た場合は最上級のハンドを持っているので参加時には戦わない方がいい"と思ってもらえたようだ。

この後、すぐに2発目のハンドAKが入るので、
前にいるリンパー4人に対し15$のレイズを仕掛けてみたところ、
全員が降りる。
ブラインド3$とリンパーの2*4$で11$。
プレミアムハンドなんだから、もっと欲しい気もするが、
戦わずして11$なら満足だ。

兄ちゃんが"premium again?"というのでニヤリとしながらAKを見せる。
ますます"こいつは良い手しか持ってない"と思ってもらう。

暫くして、今度はAQsが入る。
今度は自分がBBでリンパーがなんと8人!20$レイズでボタンがついてきたものの、フロップにあっさりQが落ちてベットしたら降りてくれた。

今度はJJ.リンパー2人に対しレイズ10$。後ろ全員とSB,BB,リンパー2人フォールドで7$ゲット。

…レイズするだけでことごとく全滅してくれ、やりたい放題だったので、ここで目標だった"ブラフでアメリカ人を降ろす"を実践してみる。
QTsでリンパー3人に対し13$レイズをしてみる。
相手全滅で+9$。

…あっさりブラフが成功したが、心臓に悪い。

以降。

ひたすらAA,KK,QQ,JJ,TT,AK,AQsの上位3%のハンドが来るまで降りる→来たらビッグレイズ→全員降りるの繰り返しで、ひたすら3時間。
誰も戦ってくれないけど結局1度も戦うことなくチップを少しずつ増やし
420$のチップを持ってこのテーブルを出ることができた。

初陣は大勝利である。


この超タイト戦略が大当たりした結果になったことで、”これで良いんだ”と味をしめて、日本に帰ってからトーナメントでアグレッシブにプレイすることを忘れてしまい、スランプになるのは、また別の話である。

トーナメントとキャッシュゲームが違うということを、当時の私はよく若手いなかったのだ。若かったなあ・・・

時計を見ると、もう23時になっていた。
最後にスロットでもやって、寝ることにする。

初めてのポーカーも終え、日本人ディーラーさんから聞いたHootersのおすすめチキンを食べる。

さっきのポーカーで稼いだチップは手元に残したまま。
換金方法分からなかったし、いじらしくもちょっと数えてみたかったのだ。

カジノではホテルごとに違うデザインのチップが用いられているようだ。
ここHootersではその企業イメージにふさわしく5$チップにはセクシーな女性の写真がプリントされている。

全部で10種類くらい。
遅まきながら、ポーカー中にディーラーさんが、
"pot is 20$, Same girls."と言って皆が笑っていた意味が分かる。4枚とも場に出されたチップにプリントされていた柄が同じだったということだ。

423$。結構な量だった。


さて、食べ終えた。
いざ、本日最後のギャンブル、スロットへ。

やっぱカジノと言ったらこれだ!

ラスベガスには大当たりすれば20億を出すスロットマシンが存在する。
その名も"Mega Backs"。
メガのドルという意味だ。実に単純。

賞金も法外だが、もちろんベット額も法外。
1ベット1$で、ジャックポットは3$のマックスベットでしか認められない。

財布には持ってきた200$からチップ購入額100$と今のチキン代10$を引いた
90$しかないが、これに突撃することにする。

流石に高レートスロット。なかなか人が座ろうとしない。
大丈夫なのか?

前の人の払い出し表示が残っていたので見ると”WIN300$”と書いてある。
ジャックポットなんて当たらなくてもいいから、これくらい当たってくれないかなと思いつつ勝負開始。

何も当たらなければ4秒で3$が溶けていく。
開始1分で-15$。
開始2分。-40$。
開始3分でようやく7揃いを引き、25$配当が出るも、クレジットは70$強。
100$を超えたらやめようと思いつつ、続行。
開始4分。クレジットは残り50$。
開始5分。残り40$。
開始6分。残り20$。すごいスピードだ。
開始7分で残り8$の時に起死回生の777揃い+3倍絵柄!
再びクレジットは80$に。
なかなかやめさせてくれない。まるで人の心をわかっているようだ。
が、そこから特に何も当たらずに、
ストレートに3分くらいでクレジットが0に。

10分で90$負けだが、
"さっきの300$当てれば取り返せる。20億当たるかも知れないし"
と、財布に手を伸ばすと、空っぽだった。

チップを換金していないので今は文無しだ。
手元のチップではスロットは回せない。
換金しに行くか、と席を離れたところでようやく冷静になる。
"1時間もしないうちにそのチップを溶かす気か!?"と自問自答。

…途端にスロットをやる気もなくなった。

もし、ホテルにお金を置いてこずに全額持ってきてたら酷いことになっただろうな。本当についていた。

今日は勝っているうちに退散することにする。
両替所で"exchange,please!"と言って432$を受け取り、カジノを出る。

帰り道に見た深夜のラスベガスのネオンはとても綺麗だった。
あと5日もこれを見れるなんて幸せ。

遅い夕食はホテルの近くのCocos。
日本のCocosとはかなりメニューが違っていて新鮮だった。
ステーキとサラダとコーラを頼む。
勝ったおかげか、機内食が良くなかったからか。
とにかく飯がうまい。

※当時のアメリカン航空のエコノミーの食事はひどいと言われていた。

全部で25$。チップ込みで30$だ。
バフェの価格と同レベル。同じ値段ならバフェがいい。勿体ない気がする。元はといえばベラッジオかパリスかリオでバフェ食べる予定だったのだが、ポーカーが面白すぎて日が変わってしまったので自業自得だ。

まあ初日だし、18時から活動したし良いよね。勝ったし。
明日観光しよう・・・と思いつつ就寝。

ラスベガス初日収支:

ブラックジャック:+70$(プレイ時間1時間)
ポーカー:+263$(プレイ時間3時間)
スロット:-90$(プレイ時間10分)

合計:+243$


スロットは勝てない。


翌日。

目が覚めると8:00だった。

寝たのが0:30なので意外と早い。
得した気分だ。

ちょっと外に出てみて、気温を確認。

…3月だというのにとても暑い。

今日の服は夏用のポロシャツ1枚で決定とする。

今日の目標は
・有名ホテルめぐり
・バフェ
・買い物
・名所巡り
・カジノ

と盛りだくさん。
急いで外に出て、近くのホテル"トロピカーナ"でパンケーキを食べる。
一口にパンケーキと言ってもここはアメリカ。

ボリュームもデコレーションも段違いで驚く。
昼はバフェをいっぱい食べる予定なのに満腹だ。

しかしここは”世界でも有数の歩きにくい街”ラスベガスである。
立体歩道がたくさんありすぎて何度も無駄足を踏む。

建物の大きさも相まって、
隣のホテルまでたどり着くのに10分もかかるってすごい。

今日の最初のお目当ては名所であるMアンドMのチョコレートショップとコカコーラショップ。
明日からお土産もさっさと買ってしまいたい。

MアンドMショップに入ると聞きなれた曲が流れている。
これは、"GLEE"の"Don't stop beliveing"だ。
やっぱりアメリカ全土で大人気なだけある。
当時日本ではシーズン2までしか見られなかったが、こっちではシーズン3やっているんだよね。羨ましい。

MアンドMではおなじみのチョコレートのキャラクターの映画を無料で上映していた。

なになに、"super M””lost M in Vegas"か。
並んでいる5歳児と一緒に鑑賞。

5歳児がエキサイトしていた。
自分も結構楽しめた。
終わった後にどの色がカッコ良かった?と聞かれたので
"As Green Beated evil guy's, so I think he is very cool!"
というと"Ahh! me too!!"
と言われ喜ばれる。

自分としても子供にも英語が通じて嬉しいぞ。

彼が親にチョコレートサーバーをねだっていたのを見て、上司のお子さんが同じくらいの年であることを思い出し、これを購入。
カジノだらけのベガスにとって、子供連れにはいい貴重な場所だ。

隣のコーラショップには世界最大のコーラのビンが!
何十メートルあるんだこれ。アメリカではおなじみのシロクマもかわいい。
2階にはコーラバーがあり、3ドルでコーラ飲み放題。
ちょっと一休みしつつ、コーラの栓抜きやコーラレシピブックなどの家族向けのお土産購入。

そこからはホテル巡り。
ベラッジオ、パリス、シーザーズパレス、プラネットハリウッド、ベネチアンを一気に突破していく。

どのホテルも特色があってすごい。
ホテルの中に大庭園があったり、ゴージャスな廊下が延々と続いていたり、ホテルの中に運河が流れていたり見ていて飽きない。

すべからくカジノがあって、プレイしていきたかったけど、我慢。
どのホテルも一流ホテルであり、ここらではブラックジャックの最低レートも25$から。
奥のハイローラー卓に至ってはミニマムですら500$だ。

やっぱりベガスで一番おいしいもの食べたいよね!ってことで12時にRioに到着。
お目当てのシーフードバフェはランチ時につき30分待ち。

ちょっと疲れたし、一休みがてらカジノで遊ぶことにする。
ブラックジャックも15$からなので、丁度いいだろう。

30分やって、+30$。2ベット分勝ち。
…昼飯代浮いちゃったよ。

勝ったお金で食べたラスベガスNo1のバフェは格別だった。

そのあとポーカールームを見学。
流石WSOPの主催ホテルだ。
他のホテルと規模が違う。

平日なのに参加費100$のトーナメントが立っている。
参加したいけど、ここで参加すると観光する時間が無くなってしまう。


未練がましく、売店に行ってWSOPのパーカーとシャツのポーカーグッズだけ買ってここを後にする。

ここまで歩いて、ようやくメインストリートの半分。時間はすでに13:30.
ちょっと急ぐ。

次は買い物。"ファッションショー"へ。
なかなか日本国内ではサイズに合う服が無くて困りものだがここはアメリカ。
道行く人と比べても自分が普通サイズであられるこの国ではサイズに悩まされることもない。

3着の服と明後日ベラッジオで行われるショーのチケットを購入。

そこからは真直ぐ2キロストラトスフィアタワーに向かって直進。
近くにラスベガス最大のお土産ショップであるボナンザギフトショップがあるので立ち寄る。

ラスベガスの有名ホテルで使用されているホテル仕様のトランプが山積みで売られている。

これを、
カジノバーのスタッフさん用 3点
同期用 5点
自分用 2点
購入。
1つ1.5ドルなのは安い。

これは下手なチョコレートより請けが良かったし、本当におすすめ。

ギフトショップを出たら、すぐそこはタワー。
やっと今日の終着点である。

当初は最上階の絶叫マシーン"インサニティ"に乗る予定だったが、
荷物多いわ疲れているわで、景色だけ見て満足して帰る。

帰りはモノレールでMGMまで楽ちん。
歩いて5分でホテルである。

いったん荷物を置いてシャワーを浴びる。
この時点で午後4時。

”みつべきものはみゆ、か。”
何故かアメリカで平家物語のセリフが思い浮かんで笑う。

とりあえず、昼間に見るものは頑張って見たはずである。
お土産も買った。

となれば、これからは夜の部だ。
ろくに休みもせず、また外に出た。


(24日22:18更新)

ベッラジオの噴水ショーは、誰でも一度くらいはTVで見たことがあると思う。

生で見るとやっぱりすごいるんるん
何がって?

景色もそうだが、水しぶきが。
70m以上に吹き上げられた水が飛沫となり、こっちまで飛んでくる。

アメリカ国家に合わせて動く水のダンスが見事で、ずぶ濡れだけど非常に満足。高級カジノ用に新調したジャケットだが気にしない!

そのまま目の前のホテル、ベラッジオへ夕食に。
ここのバフェも評価が高く、楽しみだ。

…30分待ち。
ですよねー。

ってなわけでポーカールーム見学。
ここは高いレートの卓が立つことで有名で、
ポーカープロや有名人が良く来るらしい。

自分としては、元NBAプレイヤーのデニスロッドマンやセレブリティポーカー司会のフィルゴードンを見てみたかったが、今日は来ていない様子だった。

知っている顔はいなかったが、奥で何人か高そうなポーカーをプレイしている。
…なんか500$チップや1000$チップが飛び交っているんですけど。。。

いくらなんでもここでプレイは止めておこうと思いつつも目が離せない。

いつまでもこの別世界を見ていたいが、やっぱり腹は減るもので素直に夕食に。

ここのバフェは品数が多く、特にデザートが美味しいことで有名。男一人であるが日本じゃないのでスイーツ食べまくり。ここぞとばかりにスイーツを満喫。


編注:2012年ごろは男がスイーツを食べるような雰囲気ではなかった)

ここはホテルからそう遠くでもないため、合計3回利用した。


さて、腹も膨れたし、またカジノに。
お目当てはもちろんポーカーだ。

昼にホテルを回った感じでは、
”プラネットハリウッド”が適度に高級感もあって、なおかつ1$2$でやっていたのでそこへ向かう。

相変わらず通りのネオンが綺麗だ。
親は新婚旅行でここを車で走ったらしい。
良いなあ。


プラネットハリウッドのポーカールームへ着くと、
なぜか昨日Hootersで対戦したショーンが居て、声をかけられる。

外人の顔は覚えるのが大変なので最初は誰か分からなかったが、
向こうはしっかり覚えてて、昨日のハンドについて話してくれるうちにようやく思い出す。

やっぱり向こうからは目立つので、
こっちのプレイスタイルはしっかり覚えられている。ポーカーでは目立つのは不利なのでそういう意味では外国人はマークされやすくやりづらい。


さて、とりあえず100$チップを購入して実戦開始。
ここのテーブルは自動でシャッフルされたトランプが下から上がってくる自動卓だ。麻雀だけじゃなくポーカーにも自動卓というものがあってびっくり。

右隣がショーンだ。
こっちが固いのをいいことに頻繁にレイズしてくる。
手が悪いこっちとしてはブラインドで済むなら御の字である。
早速ブラインドの2$と1$を取られる。しっかりしていること。

10ハンド目。
本日1発目のプレミアムハンド、AQsが配られる。
ビールを飲むのを止め、いくらレイズしようかと考えていると、みんながディーラーにハンドを返し始める。

配り順を間違えたらしい。
ショーンにAQsを見せ、"That's too bad."と同情される。
"This is poker.″と言うと、"No,this is NOT poker."と突っ込まれる。

このセリフを本当に言うタイミングはすぐに来た。
残り92$でBBでAJoが入る。

前から8$のレイズが入ったので、BBの2$に6$追加してコールすると、
フロップは、

T,Q,K

…フロップでナッツストレートが完成してくれた.

スーツは忘れたが、フラッシュの可能性も無く、安心のボードだったはずだった。

3人いて、自分からのアクション。
ついて来てほしいなと思い25$のポットに対し、12$のベットをすると、オリジナルレイザーのあんちゃんがコール。

編注)ドンクベット。ナッツできているし後ろにオリジナルレイザー含む3人がいるので今の私なら迷わずチェックだ。

3人目のおっちゃんがなんとリレイズ40$.
彼の残りは100$。
私の残りは80$。

そして自分の手には最強の手。

"I'm All IN!"
80$全額をポットに。
相手もあと40$出せばついて来れる訳で、
どんな手でも降りるわけにはいかないだろう。

コールしてくれ、彼はQQを開いた。
私はAJを開き、彼はうめき声を上げた。

現状はこうだ。

私:TJQKA ストレート
相手:QQQKT スリーカード
ストレート対、スリーカードである。

ターン。
6が落ちる。

人畜無害だ。

そしてリバー。
また6だった。




[結果]
私:TJQKA ストレート
オッチャン:QQQ66 フルハウス

勝率75%だったのに…
初バッドビートである。

オッチャンが"Yes!!!"と叫ぶ。
ショーンが"Are you OK?"と聞いてくれたので、
"yeah, I'm all right. This is poker."
と返す。
オッチャンが"Yes, that's poker!!"と叫ぶ。

お前が言うな・・・と思いながら顔はニコニコ。

10分で-100$。
まあいいや。アメリカに来て一度は言ってみたかったセリフだ。

ショーンとすぐに別れるのも嫌なので財布から100$を出して、続行する。

さっきは負けはしたが、これでだいぶ自分のテーブルイメージは良くなった。これで、"こいつが来るときはとても強い手だ"というイメージができたので、ATやKQなどの微妙な手でレイズやベットをして相手を降ろしに行く。

ブラフで20$程稼いで、そろそろ周りが”こいつ実は糞手でブラフしているんじゃないか?”と疑い始めたころに本物の手QQが入る。

大きくレイズしたがいい感じにどうせ弱い手だと思われついてこられる。
フロップにKやAが出ることもなく、大きくベットし、1人ついてくる。
ターンでも大したカードは出ず、またベットしてついてこられる。
リバーもゴミで、ショウダウンすると、相手の手にはJJが握られてた。
お互いワンペアながらも、紙一重で勝利。


ここで+60$。
立場が逆だったらこれくらい失ってたかもしれない。

そのあと順調に220$まで稼いだところで、左隣の席にジャンゴロならぬポーカーゴロ風のニーチャンが座る。

軽く挨拶して、ゲーム再開。
彼はかなりアグレッシブなプレーヤーだったが、押し引きが見てて分かるほどスムーズだ。…相当うまいな。

彼のお蔭で、ルーズだった卓が、タイトな卓へ変貌したくらいだ。

彼は私がタイトなプレイヤーで、卓もタイトになるとみるや否や、次の仕掛けをしてきた。

私のビッグブラインド。
ハンドもQ9oというさして興味も湧かないハンドだったので、
"2$取られたなあ"とおもいながらスポーツブックで賭けているレイカーズのバスケット試合を見る。

ディーラーに自分の番であることを告げられ、振り返ると左隣が4$を出していた。

自分はてっきり"レイズ4$か…"と思い、目の前にある2$に2$追加してフロップを見に行こうとすると…

"Raise make 25$!!"
…あれ?私のアクションで最後じゃね?とパニくる。

25$なんて受けれない。全員ダウン。
思わず隣に、
"What HELL are you doing?"と聞くと。ディーラーが代わりに答えてくれた。

編注:相当品のない英語なのでHellなんて言うのはやめときましょうね。)

”ここではUTGの時にBBより大きなlargeBlindをポストすることができるんだ”
との事。

自分はSBが好きである。
ポジションが悪かろうと、普段あまり参加しないプレーヤーがフロップを半額で見に行ける機会はここだけだからだ。

それと同じで、半額でフロップを見に行けるなら見に行きたい、
その心理を突かれて、彼に2$で済むところを4$献上してしまった。

隣は"four backs~"と鼻歌交じりに私の4$を見せてくる。ウザイ。

だが冷静に考えると自分が固いプレーヤーなので、これは有効な作戦なんだろう。この後も自分がBBの時には毎回これをやってくる。
そのたびに2$を献上する羽目になる。

早く止めさせなくては…と思っているところにBBでKK。
やられたらやり返す。5倍返しだ。罠を張ることにする。

私まで2人がリンプし、私の番。
ここを敢えてちょっと悩みながらコールしてみる。


彼は何の疑いもなく"Raise 20$!"と言った。

1人ダウン、1人コールで私の番。
この時を待っていた。

"Raise make 80$!!"と叫ぶ。

左隣、驚いた顔をして、"What's HELL are you doing?"と言ってくる。
暫く考えて、"I'll trust you…"と言いながら、彼はカードを捨てた。

戦わずして50$ゲット.

思わずさっきのお返しを言ってあげたかったが、
マナー悪いのでやめておこうとすると…

"20 bucks~♪"
右隣から声。

こら、ショーン。




もっとやれ。



相手憮然顔。

自分としてはここまで強いハンドでなくても良かったんだが、
とにかくこれで彼のふざけたプレイを止めさせることに成功した。

この後はあまりハンドが入らず、
1時間ずっと"fold"としか言わずに過ごしていたところ、突如その時がやってきた。


この1時間は本当におしゃべりと目の前にうつっていたレイカーズの試合(スポーツブックのための中継だろう)を見ながら酒をちびちびしていた。

全くハンドが来ないのだ。最高でもJTo程度。このレートでの参加者の多い卓なら、カットオフ程度では捨てる手だった。良いポジションやSBやBBの時は本当に27o とか39sとかどうしようもない手ばっかりで、この1時間で参加もせず8$がなくなっていたその矢先。

ようやくボタンでそれなりの手が入った。たまには暇なので参加しようと、UTGからのレイズ6$に対して、参加者が3人と多めなのを確認してボタンで7h8hで参加してみる。

ストレートやフラッシュドローができなければ即撤退だが参加者が多いのでもし当たれば美味しいなと思いながら宝くじを買う感覚でフロップを見た。

2c 6d 8d

…なんとまさかのトップペア。

これが、自分のアクション番までチェックで回ってくる。
一番の考え時だ。

レイズが入っている場で、
現状では、こんな弱いフロップ、自分以外誰もヒットしているわけがない。
皆、JQKAどれかを持っているのは明らかである。
一応ストレートやフラッシュが見える場だ。99以上のポケットが入っている人がいれば、ドローさせないようにベットしてくると思う。

よって、現状では自分が勝っていると思う。

でも自分が持っているのはたかだか8のワンペアだ。
ターンかリバーで9以上のカードが出た瞬間、現状では間違いなくこの手は死んでしまう。

参加人数を減らそう。大きくベットだ。
25$のポットに対して20$をベットする。

オリジナルレイザーだけコール。
…正直ここで決着つけたかった。見たくないカードが多すぎる。

ターンは 4c。
絶対に相手の助けにはならないカードだ。
ふー助かった。

相手がチェックで回してくる。
…考えろ。相手は何を持っている?

まず最初のレイズ。
これはブラフではない。
UTGからレイズインしてくるということはAKかAQs、

AAかKK,QQ,JJ,TTくらいだがペアの可能性はないと思う。もし彼がこいつらを持っていれば、フロップでベットしてドローを蹴落としに来るはずだ。

・・・ポットの80%のベットについて来て、
なおかつターンでベットしない手………

15秒ほど可能性を模索する。

読めた。

おそらくAdKd かAdQdだ!
これならAKかAQの6枚待ちにプラスしてフラッシュドローの9枚待ちが加わる。アウツの枚数を数えて相手の勝率を計算。

30%。結構高い。ついてなければ捲られる。

相手に30%のオッズを与えないためには半端なベットじゃ降せない!!!
ポットは既に65$。
オールインか?
でも万一この読みが外れていたら。

この時の私手元のチップは380$。

とてもちょっと読み違えて負けましたとは言えない額である。
それに相手はフラッシュしか勝ち目がないと思っている可能性がある。

結局65$ベットをした。これで相手の勝率は33%無いとオッズに合わない。

これで勝ったと思ったのだが、相手はちょっと考えて、
"Call!!"

意外な反応だった。

相手のチップを見ると1000$以上。ちょっとの期待値の損など気にしていないで楽しむお金持ちのようだ。


仕方ない、読みの通りなら私が有利だ。あとはカード次第だ。

祈るようにリバーを見つめた。






A,K,Q,J,何らかのダイヤだけは嫌だ。

リバーで見たくないカードは、見たいカードの何倍も多い。





リバー…

2h!

やった!ゴミカードだ!
ストレート完成となる5の次に見たかったカードである。
助かった。

相手がチェックで回してくる。
この時の私は"8のペアで100$も勝てるなんて"とすっかりご機嫌で油断していた。




”ひょっとして私がノーヒットなら勝てる!”と希望を持たせるために、
ポット195$に対して20$ベット。
コールして欲しいけど、降りてもいいよという、挑発的なベットだった。



"All-IN!!"


…は?


そんな覚悟はしていなかった。

1000$のチップが、突然目の前に置かれ、私はたかが8のワンペア※に残りのお金を全部かけるか、ポットの215$を諦めるか、2択を迫られることになった。手元には、340$。

※ボードには2が2枚出ているので、正確には88227のツーペア+7



自分の読みが外れてたのか?
ワンペア、しかも8に全額を賭けるのか?※1
それともブラフなのか?

考えるが、一瞬で決断できるわけがない。

"Please, please let me think for a minute!!!!"

そう叫んだ。



…とんでもないことになってしまった。

あと20ドルを欲張ったために、こんなに難しい決断を迫られることに。

あそこで素直にチェックして、ショーダウンすべきだったのに、と自分を責めるが、それは今さら詮無い話である。

そんなことを考えてる場合じゃない。
与えられた時間は1分しかないんだ。

OK,まず状況を整理しよう。

場には、
8d,6d,2c,4c,2hがある。

そして自分のハンドには8hと7hがある。
つまり、自分の役は88227のツーペアだ。
…ゴミ手も良いとこである。

しかし自分は、これまでの相手のアクションから
相手の手を”フラッシュとハイカード”の引きそこないである
ダイヤのAとダイヤのKであることをほぼ確信していた。

つまり、自分の推理では、相手の手は、
22AK8 の2のワンペアのはずである。

もし、自分の推理通りなら、自分はこのオールインをコールして、950$のポットを獲得するだろう。
ただ、今回は自分のハンドが弱いだけに、推理が少しでも違っていたら、自分は343ドルを間違いなく失うことになる。

相手のハンドが私より強い場合の組み合わせは?

AA、KK、QQ、TT、99、22、44、66,88持ちとほとんどのポケットペアや89以上の8絡みの手札、場のカードの2枚のヒット・・・
自分の手よりカードが強くなるカードの組み合わせは、数えるだけ無駄。


結局、8のペアというよりは自分の推理に343$を賭けるかどうかということになっていると考えたほうが良い。


選択肢は以下の2つ。
①今まで投資した100$を諦める
②さらに343$を賭け、勝負をし、全額を失うか950ドルを得る。
ただしこちらの手はたかだか8のペア。クレージーだ。


選択肢①を考えてみる。

メリット
・とりあえず100$という大きな損失はあるものの確実に生き残る。

デメリット
・自分の読みを裏切ることになってしまう。
・さらに、もしブラフで降ろされていた場合、自分は343$以上に大きなものを失う。相手がカードを見せてくる可能性は十分にある。その場合、自分はとんだ赤っ恥。ゲームを続けられなくなるだろう。
・自分が降りたあと、相手がカードを見せてこない場合は、推理の答えあわせが永遠にできない可能性がある。

一方②。
メリット
・勝った場合、950$(私の450$+他のプレーヤーの500$という大金を得られる
・勝っているか負けているかショーダウンできるのでハッキリする。

デメリット
・負けた場合、合計450$という大金を失う。ちょっと旅行にも影響しかねない金額である。


こうして考えてみると、勝負したほうが精神衛生上良さそうだ。
負けた場合450$は確かに相当痛いが、自分の人生に影響が出る金額ではとてもない。

アメリカくんだりまで来てブラフに降ろされて情けなく帰ってきました?
そんなこと言うくらいなら自分の読みに賭けたけど力不足で負けましたというほうがまだ良い。

コールに1票が入った。


次に相手から見た自分のイメージを考えてみる。
→今までだいぶタイトなプレーをしてきたため、気弱な外国人にしか見えておらずブラフでも大金を積んで押せば降りるようにしか見えていない。

ちょっと相手を見る。
顎を突き出して明らかに威嚇している様子が見て取れた。
これは心理学上では怒りのサインだ。
自分には、ブラフしていて降ろそうという意思の現われに見える。
ここでもコールに1票だ。

お金の量の圧力にビビッて負けるわけにはいかないのだ。
そんなので勝負が決まっていたら、世界最高のポーカープレーヤーはビルゲイツということになってしまう。


最後に自分の推理の再検討。

仮に相手が自分が負けるハンドを持っていると仮定する。
まずペアハンド、AAだ。

プリフロップのAAでレイズイン。まあこれはOK.
フロップ後のチェック。
カードが3枚見えた段階で既にフラッシュ目が見えるのにチェックはあり得ない。持っていたら自分から積極的にベットして他を降ろしにかかるはずだ。
さらにターン。ストレート目まで見えたのにチェックなのだろうか?
これはおかしい。

よってAA~99、そして22,66,88の可能性はほぼ無いだろう。

8+オーバーカード、そしてフロップ2ペアの可能性は?
これは彼がUTGという不利なポジションからレイズインをしたのであり得ない。
また彼のフロップ後のアクションは、ペアハンドの場合と同じ理由でこの場合と矛盾する。

あくまで標準的なプレイやーなら、
消去法で考えても、
彼の手はAKやAQの2枚のハイカード、そのいずれもがダイヤである場合でしかあり得ないのだ。


最後の相手のチェックレイズは、おそらく私の手が弱いことを見越してのブラフではないか?

本当は相手から見た私のハンドの見え方がどうなのかも検討したかったが、残念ながらそろそろ1分だ。このころの私は未熟だった。


”…OK.”
考えをまとめ、顔を上げた。
大金のかかった勝負なので、相手、ディーラーを含め、10人全員がこちらを見ていた。
緊張したが、大きな声で宣言した。

”I call!!!”
"Woooo!!!!!"
手元のチップをすべて真ん中に置くと歓声が沸き、
周りが一気に盛り上がる。

他人の賭けにも大騒ぎするのは、この国ならではだろう。
映画館で日本人は静かに見るが、アメリカ人は大騒ぎするのに共通しているのだと思う。

さあ、ショーダウンだ!
まずは先にオールインと言った相手から。




…相手がなかなかハンドを開こうとしない。



向こうの人って何でなかなか自分のハンド見せようとしないのか疑問だ。

10秒ほど経過。
ディーラーがまず相手に向かって、
"Showdown please"と言う。

…相手が顔を真っ赤にして、まだカードを見せようとしない。
この瞬間にすべてを悟った。


他人に恥をかかせるのは好きではない。
相手はこの時点でカードを裏にして捨てれば、まだよかったのだろうと思う。そうすれば自分は、チップを受け取ったあとで自分もカードを裏にしてディーラーに返し、ハンドの内容は墓まで、いや少なくとも国まで持って帰るつもりであった。

"Show me your Hand!"
ディーラーが相手に向かって催促する。
・・・仕方ない。
ショーンが、"What do you have, joe?"
と聞いてくるので、ハンドをお披露目することにする。

"I have (カードを開く) 8 pair!"
と言いながらテーブルの上にカードを開く。

"Waaaaaoooo....."

…全員が唖然としている。絶対こう思っているはずである。
(弱っ!!!)
(この外人、8のペアに400$以上賭けてるよ…)
(何考えてるんだ)

そんな声がきこえてきそうだが、私には確信があった。岡目八目というけれど、逆に当事者じゃないとわからない空気感というのは存在する。


さあ、今度こそ相手の番だ。
全員が彼に注目する。


そして、相手はこのハンドを10秒くらい見つめて、
"・・・Shit."
とつぶやき、ハンドを裏返しにして捨てた。やはりブラフだったのだ。


950$のポット獲得!!
純利は500$。

"year!!!!"
"cool!!!"
"Good job!!!"

テーブルが大歓声と拍手に包まれた。
ショーンが抱きついてくる。

隣のテーブルのプレイヤーたちも何事かと駆け寄ってくる。

ショーンが"He made a big HERO call!!!"と説明してくれる。
日本では。
相手のブラフを読みきって、とても弱い手にもかかわらずコールして勝つことを”タフコール”あるいは"シックコール"という。
でも当時はヒーローコールというのは初耳であった。
"Hero call? Is it diffrent from taugh call?"
(ヒーローコールって?タフコールと違うの?)
"Year, they have same meaning."
(同じ意味だよ)

ふと相手を見る。
ブラフを見抜かれたヒールは恥ずかしそうに席を立っていた。その時は私はラスベガスでヒーローになった、そんな気がした。


”Why you bet much money on only 8pair?"

(8のペアなんかによく大金かけたな?) 

"No.I didn't bet 400$ on 8 pair, but I just bet on ME."

(8のペアじゃなくて自分にかけたのさ)

そんな会話をした。

2日目収支:
ブラックジャック:+30$
ポーカー    :+571$


そんなわけで。

後悔しない選択をしてみたら大金はいっちゃった話でした。


今思えば。そもそもあんなところで20$ベットなんかしていないわけだが、あそこで降りていたら、あと引きずって最悪な旅行になっていたかもしれない。また、仮にあそこでコールして負けていたとしても多分私は未熟だったことを反省はするものの、あとを引くことはなかったと思う。後悔しない選択が何かを考えることができて本当によかった。

この後もベガス旅行記はまだまだ続きますが、また別の話で。

1.10 男でも旅先でスキンケア

2015年3月。初めてのヨーロッパは家内との新婚旅行だった。フランクフルトで3泊して、tgvで移動してパリで3日滞在の日程だった。

 新婚旅行なので、ただでさえ海外経験の多い自分がいつも以上に下調べをしたし、家内は家内でケルンには行ったことがあるので勝手は知っている。旅行そのものは大したトラブルは起こらなかった。家内がホテルのレストランでパスポート入ったカバンを置き去りにしてしまった位だが、私がフロントで会話して保管場所を教えてもらい、お礼に多めにチップを渡して解決した程度だ。

 大変だったのは、空気が乾燥している上に、肌がヨーロッパの硬水とホテル備え付けのボディソープやシャンプーに合わず、粉を吹き出して痒くなった事だ。

 4日目。

 「ねえ、パック余ってたら使わせてくれない?」

 人生でパックなどしたことは無かったが、ついに観光出発前にメイクをしている家内に、こういった。

 本当に肌が悲鳴をあげていたのだ。

女性はこうやって肌をいたわっているのか・・・初めてやってみたパックのおかげで肌はかなり元気を取り戻した。

 異国の地では、水があわない場合もある。

それは別に腹を壊すという意味だけではなく、肌を壊すときもある。

持って行くのは胃薬だけではないことを、初めて知った新婚旅行だった。

これ以来、私は海外行くときは化粧水を持ち歩くようにしている。

1.11 ニックネーム

「カジノはお好きですか?」日本人がこう聞かれると、「行ったこと無いからわからない。」「行ったことないけど怖そう」という人が7割くらいだと思う。私のように「好き!めっちゃ好き!」という人の方が少数派だと思う。

 ではその少数派に対して、「なぜカジノが好きなのですか?」と聞くと、その答えはかなりバラエティーに富んでいる。


ある人は「ギャンブルが好きだから」、ある人は「お酒がただで飲めるから」、ある人は「儲かるから」・・・実に多様だ。

そして、私の好きな理由は、「現地の人と楽しく英語で話せるから」である。


2013年8月。オーストラリア、シドニー。

1回目の海外旅行でラスベガスに行き、海外旅行とカジノの楽しさを知った私は、当然の2回目の一人海外旅行であるシドニーでも、夜な夜なカジノに顔を出していた。

カジノ・・・言い方を変えれば賭場である。賭けというとギャンブル、つまり全てが運によって勝ち負けが決まると思われがちだが、実際にはそうではない。

 いや、正確には①運だけで勝敗が決まるゲーム と ②実力が絡むゲーム がある。

①は主にスロットやルーレットやバカラなど。これはゲームが自動で進行し、プレイヤーは勝つと思う方を選べば良いだけであるので簡単だ。ただし、こういうゲームは完全に二択で、当てれば倍返し、外れたら没収だといつまでも期待値1のままで理論的にはカジノは儲からないので、カジノが利益がでるように制約がかけられている。

例えば、スロットなら内部設定で、「プレイヤーが入れたお金の90%しか返さない」と設定するし、バカラなら「当たった場合は掛け金の1.95倍を返す」としているし、ルーレットなら0や00の目を追加して、プレイヤーが当たる確率をほんの少し下げている。

要するにプレーを長く続けるほど負けるようにしかなっていないのだ。「頭使うのイヤだし遊べるんだからいいよ」と思う人には良いかもしれないが、ゲームをやることがメインではないし、元々が戦略ゲームのプロである私には物足りないため私はこの手のゲームは嫌いだ。

これに対して②は、ポーカーやブラックジャックなど、プレイヤーの選択により結果が大きく左右されるゲームである。

これらのゲームはセオリーを知らないと①のゲームがかわいく見える位に負けるゲームであるが、逆にセオリーさえ完璧に覚えればそれだけで期待値をほとんど1に近づけることが可能だし、上級者であればプラスにする事も可能だ。

 なぜそんなゲームをカジノがやっているか?ポーカーはプレイヤー同士の争いで、カジノは勝者の儲けから取り分としてチップを貰っているだけなのでカジノとしては絶対に利益のあがるゲームなので問題は無い。ブラックジャックは確かに全てのプレイヤーがセオリーが上級者ならカジノは商売あがったりである。しかしセオリーの暗記はかなり覚えることが多く、そのカジノのルールによっても微調整をしないといけないため結構面倒くさい。難易度で言ったら、化学の元素記号全部覚えるくらいのボリュームがあるので完璧な人は一握りである。その人が打ったとしても期待値など1.01とかなでのわずかな利益だ。一方でセオリー無視すれば期待値など平気で0.7とかになる。

だからカジノは”うまいプレイヤーにはほぼ互角に遊ばせて、大多数の下手なプレイヤーから利益を上げる”というルール設定をして運営をしているのだ。

 見方を変えれば、私のような「ゲームがメインではなく人と話したりすること」を目的としている人間にとっては、”セオリーさえマスターすれば期待値負けすることなくできるゲーム”なので、私は半年かけて大阪のアミューズメントカジノバー(お金かけるような闇ではなくあくま換金性のないゲームチップで遊ぶとこで健全です(^^;))で店に”完璧!”と言われるまで、ルールもたまに変えてもらってみっちりセオリーを叩き込んだ。

 お陰でどんな状況でも、ヒット、ステイ、スプリット、ダブルダウン、サレンダーのアクションをミス無く瞬時に(と言うか考えずに反射的に)的確な判断を下せる程度にはなったので、確率的には負けないようになった。

まああくまで確率的にはなので実際にはカジノでブラックジャックをやると、後はその日の運によって勝ったり負けたりの結果になるので、私にとってブラックジャックは、文字通り運試ししながら確率的にはただで、他のプレイヤーやディーラーと喋りながら楽しくカジノをエンジョイできるゲームなのだ。


前置きが長くなった。シドニー3日目の夜。初日,2日目も朝晩と顔を出していたのでもうすっかり受付でも年齢確認などされなくなっていた。

初日に300$負けたものの、2日目に600$勝っていたため若干心に余裕があった。

額がデカい?そうなのだ。流石世界でも指折りの物価の高い都市だ。初日に空港に降りたとき、コーラの自動販売機を見て、500ccのコーラのボトルが3.5$でたまげてしまった。1オーストラリアドルは同時80円程度。つまり日本で同時120円で買えるコーラがこちらではなんと300円!凄いところに来たなーとしみじみ思った。

その物価の高さはもちろんカジノの最低ベットにも現れていて、ラスベガスならブラックジャックは5ドルでできるが、こちらの最低ベットは30$。ものの30秒で2400円が増えた減ったりする恐ろしいレートだ。そんな場所であったので、勝ち負けの額も大きくなっていた。

カジノ到着。いつものようにとりあえず30$の卓を探す。他は50$なのでとても手が出せない。

・・・1つ見つけた。プレイヤーは3名。

3プレーほど卓上の空気とプレイヤーのスキルを見るが特に可もなくと言った感じだ。

2人がアジア系、恐らく韓国人の友人同士。多分韓国語だ。日本語はもちろん、中国語なら解るので。プレイは平均より少し下手であるが、友人同士の観光者ならこんなもんだろう。もう1人は見た目アジア系だが2名の言葉を解していない。とは言え中国でも日本でも無い雰囲気だ。恐らく現地の人だろう。ただ賭けている額がこの卓にしては大きい。500$チップをポンポン出している。相当な金持ちだ。プレイは先の2名よりは上手い。賭けている額からすればこんくらいないとやっていけないが。

・・・と言うか、ミニマム50$行けよとこのときは思った。

まあどうせ30$卓もここ意外にはないし、いつものように控え目に向かって一番右側の椅子、このときは2番ステーションに座って100ドル札を3枚出してチップに変えてもら参加する。

4番が金持ち、6番と7番が韓国人だ。

他の話でも少しふれたが、ブラックジャックにおいてはディーラーに一番近い席が最も重要な席となる。

なぜならこのプレイヤーが引く引かないによってディーラーの引くカードが変わるからだ。


簡単に例をあげよう。

プレイヤーが2人で私が1人目だとする。

開始時のディーラーのアップカードは10。

私は10と7の17だったのでステイ。

2人目のプレイヤーはAと6の7or17。これを彼がステイしたとする。実はこれは悪手である。彼は安全に1枚引ける権利があるので、とりあえず引いてみるべきだ。A,2,3,4ならステイすればいいし、10~Kなら17でステイ。5~9ならば、どうせ17でも負ける可能性高いんだし、潔くもう1枚バースト覚悟で引けばいい。

で、結局次のカードは9だったのでディーラー19対プレイヤー2名17でディーラーの全勝。

そして、次に私に配られたカード、つまり彼がヒットしていれば前のゲームで彼が次に引いていたはずのカードは5であった。

彼がさっきのゲームで引いていれば彼は21ができていた!そして彼の1枚目・・・もし彼がさっき引いていれば前ゲームのディーラーの2枚目のはずだったカードは6。16になっていた。となるとディーラーはもう1枚引く。そのカードはこのゲームのディーラーの1枚目。10だった。

こうなるともう最悪だ。

彼がさっきのゲームでヒットしてくれさえすれば、さっきのゲームの結果は

私:17

彼:21

ディーラー:バースト

で彼だけでなく私まで勝っていた筈だったのだ!それも、決して安くない金額で。


正直他のプレイヤーはいい気分はしない。

ということで、ブラックジャックでは上手いプレイヤーがディーラーに近い場所つまり7番に座るべきと言うのが慣れたプレイヤー同士の暗黙の了解だが、カジノに不慣れの観光客はそもそもそんな不文律があることすら知らないのでしばしば”控え目な”中級以上プレイヤーに白い目で見られる。

私は英語がそこまで流ちょうではないし、地元の人間でもないのでめったにディーラーそばに座ることはないが、後ろがあまりにもひどいと精神衛生上良くないと判断して早めに退散することはよくある。

プレイ開始。

・・・うーん。ややついてない。後ろの2名がミスチョイスをして勝つこともあるけど負けの方が多く、30分で6ベット,180$を溶かしていた。

そろそろ帰ろうか・・・と思っていると、2人組がお金つきたらしく黙って席を立った。

じゃあもう少しやろうかなと気を取り直したところ、もう1人のリッチマンが”しばらく私のプレイを見る”と言う。

まあいいか。

これで完全にディーラーと1対1なので全て自責で戦える。望むところだ。

いつも通り。大阪で練習したように各状況での選択をしていく。

・・・ツキが向いてきた。ダブルダウンやスプリットを全て成功して、ものの10分でチップは初期の300$に回復した。

Congrats boy!

リッチマンが話しかけてくる。

Thanks, but this is just nothing but an initial amount ...

まーだ振り出しもどっただけだよと笑って返す。


Indeed, but its the result of your great skill!


上手いってか。少しは練習したかいがあったかな。


So let me bet on your choice!

Oh, no worrys!

バックベット。

たまに見られるカジノで客が他のプレイヤーの場所に自分をチップを置く行為。

選択はもといたプレイヤーが全て行う。

バックベットをした客は、プレイヤーが勝てばバックベットした分だけチップを貰えるし、プレイヤーが負ければプレイヤーと同じようにチップを取られる。

要は他のプレイヤーを信頼して代打ちをさせる行為で、例えばルーレットなどのスキル不要ゲームではついている人に乗るためによく見られるが、ブラックジャックのようにスキルがモロに響くゲームでは珍しい。


額も額だ。

私が30$なのに、後ろから300$とか500$がポンポン飛んでくる。


20分後。

・・・なんとか期待に応えて5ベット分、私は150$、彼は1500$浮くことができた。

It's lucky for me to meet you! Haha! とリッチマン上機嫌。

私も親指たてた後ハイタッチ。

結構大きな音が鳴ったため、周りの人も注目してくる。

”How you do'in?”

”Ya, this guy is crikey! I rekcon you must bet on him!”

おお、これぞオージースラング。学校では教えてくれないオージー英語満載で聞いているだけで面白い。

所々そのばでは意味が解らないところもあったが話が大きくなっているのは解る。



3分後。



なんだこれは。

私はディーラーの向かいのステーション4に移動。テーブルには私とディーラーのみ。

その周りに、ギャラリーが15名ほど。リッチマンが私は凄いとはやし立てたせいでバックベットする客がいっぱい集まってきた。


私が30$チップを置く。


No more bet?


ディーラーがそう言葉を発した瞬間にバックベットのチップが後ろから次々と置かれる。

その数10人分。

30$だったり100ドルだったり、リッチマンに至っては500$!

私の選択1つで30秒で1500$程度が動く。凄いシチュエーションになった。

1ゲーム目。

私(達)の手はAと7のソフト18。

ディーラーは10.

いきなり腕の見せ所だ。

私はヒット。9を引いて手は17に。私が拳を握って後ろを振り向く。

ギャラリーがどよめく。

頷いている人が5割。首を傾げている人が半分。解っているひと、説明しといてね。

今ヒットしてなきゃ、ディーラーがこの9引いて、結局18対19で私たちの負けだったと言うことを。

結局、ディーラーは3と4を引いてここは引き分けに。驚くべきはその次の私のハンドだった。

KとA。ブラックジャックだ!

ここまでくると、流石にみんなさっきのヒットの重要性に気づいた。ギャラリーから大歓声が上がる。ブラックジャックは1.5倍返し。私も45$追加。リッチマンに至ってはものの1分ちょっとで750$追加だ。

これで完全に流れに乗った。

60分間、こんな調子でプレイした結果。

終わってみれば24ベット分の大勝!つまり、30×24=720$の勝ちである。

これはあくまで私の分。

他のバックベットしていた人はもっと勝っている。リッチマンに至っては12000$だ。スターカジノのこの日の売上は私のせいで酷いことになったかもしれない(^^;)

さて、時計を見ると夜7時30分。

名残惜しいが、ギャンブルは勝っているウチに止めれば勝てるし、何より8時からはシドニー天文台で南十字星をみる予定だ。

”Sorry guys, but its time to leave here!”

行かないでくれ!お前がいればもっと勝てる!との声をなだめてチップを持ち運びやすい1000$に両替してもらう。ディーラーもバカヅキ客がいなくなってほっとするだろう。

さて帰ろう・・・とカバンを取り出すと、

”Your name?”

リッチマンだった。

まあ名前くらいはいいだろう。しこたま勝たせたので何かおごってもらえるかもしれないし。


”○joe.”(一条とか西条とかそんな名前です)

と答えたが、頭の発音が聞き取りづらいのか発音しづらいのか


Joe!


といわれた。


まあいいか。海外風でカッコいいし。

そのまま、

good luck guys!


といってテーブルを後にした。

"Bye Joe! Have a good day"

"グッダイ!"


これが私がジョーを名乗るキッカケでした。

オーストラリアでの一番の土産は実はニックネームだったかもしれない。


1.12 20万の財布を海外で買う。

2015年1月。


「新婚旅行はどこ行くん?え?パリ?カルティエ本店があるとこやん!この財布買ってきてくれん?」

新婚旅行の行き先をパリに決めた後、家内の実家の挨拶まわりで叔母と話したら、こんなクエストを依頼された。

入籍前からよくしていただいていたし、5月の結婚式にも来ていただくので私は快諾した。

3ヶ月後の2015年3月29日。私と家内はフランクフルトからTGVに乗りパリ東駅に降り立った。

「これがパリかー。ドイツと雰囲気違うねえ」

「うん、後で街歩きしよう。とりあえずホテルにいって荷物置きに行こう。タクシー乗り場は・・・あれかな、絵的に。何かいているかわからんけど、ガイドであの標識は見た」

「フランス語はメルシーとボンジュールと数しか言えないねえ」

とかはなしていたら、列の前の人が捌けていき、直ぐに自分達の番になった。

タクシーが目の前に止まったので、扉を開けてこういった。

”Will you please take us to Marcule Monmaltle hotel? This is the location of it.(地図と住所見せながら)”

"☆○◇・・・!"

???


英語ではない。フランス語か。

何言っているか分からない。


"Ah... As we are not good at French, so will you please talk to us in English or Japanese? sorry."


"○◇▲・・・!"

ダメだ。英語すら通じない。

ドイツではみんなに通じたのに。

隣の国ってだけでこうも違うのか。

家内と顔を見合わせていると、見かねた後ろのマダムが”cash only. no card!”と教えてくれた。

助かった。

ああ、そういうことか。

マダムにメルシーといいつつ、OK!といって運ちゃんにユーロを見せると、乗るようにジェスチャーされた。


2.旅でのヒヤリハット話

旅で私が出会ったヒヤリとした話しなど。

2.1 据え膳食わぬ

  よく、”ゲレンデの女の子は3割増しで可愛く見える”なんて言われている。いろいろな要因があると思うが、私は何よりも旅先での開放感がそうさせている、と思う。

なぜかって?

”海外で会った英語の話せる男性”が実際にモテたからだ。


 2013年8月。シドニー初日。ひとしきり朝5時から観光を昼過ぎまで楽しんだ後、ホテルにチェックインし、前日の深夜から機内やら観光やらで疲れたた体もシャワーでリフレッシュ。着替えも完了。

旅の初日第2ラウンド開始直後にそれは起きた。

 町を散策していると、一人の日本人(っぽい)女性がバス停できょろきょろしていていかにも困っているので声をかけた。20代半ばくらい。当時の私よりも4~5歳年下だ。

「どうしました?日本人の方ですかね?」

「あ!日本人の方ですか。(マップを見せて)ここに行きたいんですけど、このバス停って何個もバスが止まるんでどれが目的地に止まるのかが解らなくて・・・」

「うーん。私も今朝初めてこちらに来たばかりなのでわかりませんが、並んでいる人が地元っぽいので聞いてみましょうか。」


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"Hi, excuse me, but do you happen to know how to get to this bus stop?We are wondering which number of buses stop there."

"Oh, I know it. To go there, you ought to take number 4 or 6 bus."

"Thank you so much!"

「・・・てことで4番か6番乗ればいいみたいですよ♪」

「有難うございます!英語話せるんですね!」

「それ程でもないですよ。旅が趣味なので旅行に困らない程度には覚えている感じですね。」

「私、ワーホリでこっち来て3週間で、今は英語スクールで勉強しているんですがなかなか上手くならなくて・・・友達もできなくて寂しいし。ねえ、旅行なんですよね?今日はどこのホテルに泊まるんですか?行ってもいいですか?お話ししたいなあ。」

 えええ?ちょっと何言われたか理解するのに1秒かかった。

ああ、あれだ。多分この娘には寂しさと解放感と助けてもらったという吊り橋効果で3倍増しくらいに私が見えているに違いない。

見た目は悪くない。むしろ美人の部類だ。服もバッグもどこかで見たブランドなので、いいところの娘さんなんだろう。

 さらに1秒悩むが、ここでこの娘の相手をすると、多分旅行中ずっとデートで終わりそうな予感がした。依存心が強そう。そう私の直感が告げている。

なによりその時には意中の人(今の家内。当時は付き合ってもいない)がいるし。

「ありがとう。でも本当に安宿でベッドは1つしかないし、何より明日からツアーで早いから。」

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安宿は本当。でもツアーは大嘘。ずっと気ままにフリー旅。


「メールアドレスはこれなので、ご飯食べるくらいなら付き合うよ。5日後までシドニーいるから気が向いたら連絡してね。」

と言ってその場を後にした。


旅をするときは、旅をしたい。

だって旅人だもん。


2.2 免税店最安信仰

 物を買うとき、消費税はかからない方が安い。それは一つの事実だけど、だからと言って消費税がかからない免税店での買い物がすべて安くつくと考えては大間違い。今回はお土産の買い物での失敗話。

 私の家内は、無類のチョコレート好きだ。中でもリンツとキャドバリーがお気に入りで、シンガポールに行く時もこれらを買うように頼まれていた。

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2019年5月。木曜日を定時で上がり、長岡駅で19時の新幹線に乗り22時に羽田空港に着く。24時にフライトで翌5時にシンガポールのチャンギ空港に到着。

 今回は1泊3日の超弾丸ツアー。1秒も無駄にしたくない。だから、行きの目的地の空港など早く市内に出たくて仕方ない場所でしかない程度の認識で、荷物のコンベアも最前線に陣取る。

 トランク早く来ないかな・・・と思っていたら来た!さっさとトランクをひっつかんで税関申告を通り抜け、市内への電車に乗った。

 さすがにちょっとはトイレに行く時にリンツとキャドバリーが”売っている”ことだけは遠目に確認したものの、もう心は観光したくてしょうがない。値段など特に気にしていなかった。

 

ひとしきり観光し終えた2日目の夕方。翌朝の早朝便で帰国するのでそろそろ土産を買う時間だ。シンガポールのお土産スポット、ムスタファセンターへ。

なんというか日本でいうところのドン・キホーテに近い。

 ここでしか買えないアーユルヴェーダの石鹸を20個程度と、定番の、如何にもマーライオンの絵などが描かれてシンガポールっぽい箱に入った紅茶を数箱かごに入れると、ふと売り場の横にリンツとキャドバリーのチョコレートがあることに気づいた。

えーと。リンツは48粒で800円くらい、キャドバリーは1枚120円くらいか。

・・・安い!日本だとリンツはコストコですら1800円だ。キャドバリーはカルディなどで1枚500円くらい。明らかにお買い得である。

が、”ここでこの値段なら、空港の免税ではもっと期待できるぞ。何よりかさばるしギリギリで買おう”と考えてしまいスルー。


結果。帰国時の空港。

リンツ:2500円

キャドバリー:1枚350円。

日本より高かったり大差なかったり。あの時買っておけば・・・

免税店が最安というわけではない。

もともと買うつもりのものが免税店にあるのなら、到着時の空港で値段くらいはチェックしておこうと強く思った。



2.3 トランジット15分

 ”勉強した英語を使いたい!南半球の星空や生き物を見てみたい!8月の冬を体験してみたい!”

そんな思いから手配した2013年8月の人生2回目の旅。

選んだ行先はオーストラリアのシドニーだった。

  当時の私は三重で働いていたので、出発は中部国際空港。ここからシドニーへの直行便はないので、まずは成田に移動し、成田でシドニー行きの直行便に乗る。当時はJALのマイルを貯めていて、ちょうど40000マイル。無料で行けたので、そのままJALでマイルを使って手配した。

フライトスケジュールはこんな感じだったと思う。


16:00 中部発成田行き離陸→17:00成田着

19:30 成田発シドニー行き離陸→翌5:00シドニー着。

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 私は中部国際空港のカードラウンジが大好き(カードラウンジなのにビール飲み放題ってすごい!)なので12:00には津なぎさ町の船に乗って13:00には中部に到着。15:00までビールを飲んでから、手荷物検査を終えターミナルに移動したところで流れてきた放送を聞いて、酔いが一気に醒めた。

 ”大変申し訳ありませんが、16:00の中部発成田行きの便は機材の到着が遅れているため2時間程度出発が遅れる見込みです。お客様にはご不便をおかけしますが・・・”

 ちょっと待て。慌てて計算する。…仮に18:00発とする。これだと成田着は19:00だ。出国には45分はかかる。間に合うわけがない。


 しかもターミナルカウンターには職員が誰もいない。普通なら1時間前にはカウンターに立っているが、飛行機が遅れるので今は3時間前。いるはずがない。が、私がこのままだと19:30に成田でシドニー行きに乗れないことを知らせないと、最悪シドニーに行けなくなってしまう。

まずい、と思い、必死で8月にしては厚着の服で汗だくになりながらJAL職員を捕まえる。シドニーが南半球なので向こうが冬なことを見越して、日本は連日40度なのに厚着をしていたのだ。

”すみません。先ほど遅延のアナウンスのあった16:00成田行き予定だった便に乗って、19:30に成田からのシドニー行きに乗る予定のジョーと申します。あの便が2時間遅れるとトランジットが間に合いそうにありません。今からなら新幹線に乗ればギリギリ間に合いますので、費用さえ出していただければ新幹線での移動でもOKです!そう担当の方にそう伝えていただけますか?”と職員さんに依頼をした。

”かしこまりました。念のためお名前とチケットを確認させていただけますか?”

”どうぞ。こちらです・・・”


 よかった。結局1時間たつまで連絡は来なかったので新幹線では間に合わなくなった。返答は”とりあえず飛行機に乗って成田に向かってほしい。到着時間によって善処する”といったものだった。

 これで最悪でも成田で1日ホテルを提供してもらえて、翌日便に乗せてもらえる。1日観光日が減るのは残念だが仕方ない、そう思って私はまたビールを飲みながら待つことにした。


結局、飛行機が中部国際空港に着いたのが17:50.

フライトしたのは18:15分だった。19:15着予定。普通なら間に合うわけがない。会社の選択肢としては私を翌日便に乗せるか、成田のシドニー行きの便を私が乗り終えるまで遅らせるか2択しかないと当時の私は思っていた。

 19:10。離陸5分前。私ともう1人、バックパッカーのあんちゃんがCAさんから呼び出しを受ける。

”19:30シドニー行き搭乗予定のジョー様ですね。最前列にお連れしますので、席の移動をお願いします。”

”はい。・・・ってことは乗れるんですか?”

”ええ。”

”でも出国手続きまで45分はかかりますよね?フライトに遅れますよ?シドニー便が私たちを待ってくれるんですか?”

”いえ、間に合います。ところで失礼ですが体力に自信はございますか?”

意外な質問だ。要は走るのか。

”・・・フルマラソンを3時間で走る程度の体力なら。”

”十分です。到着しましたら最優先で降りていただきます。降りたら係りの者が案内しますのでパスポートを持って走ってついていってください。”

15分で間に合う。そんな馬鹿なと思ったが成り行きに任せることにした。

19:15.成田空港に到着。

グランドホステスが私の名前を確認するや否や、腕をつかんで”ついてきてくださいね!”と言い猛ダッシュ。国内線ターミナルから税関までの500mくらいを、夏休み初日の混雑した人ごみの中を駆けていく。厚着をしていたことや、旅の荷物を持っていたこともあり、体力に自信のある私ですらしんどかった。

 税関に到着。当たり前だが夏休み初日なので大混雑。この人込みでは税関まで行くのに20分はかかるだろう。

・・・やっぱり無理なのでは?

と思ったが、グランドホステスに、税関の横にある扉に入るように指示を受け入ってみると・・・そこにも税関があった。職員以外誰もいない。

 緊急用の特別室だ。

JALのスタッフさんたちが税関職員に頭を下げたあと、すぐに受付をしてもらえた。おかげで5分で通過できた。移動時間含めてもここまでわずか10分。税関を抜けた後、ターミナルまで再び猛ダッシュして19:30丁度に飛行機に乗ることができた…が1つ問題が。

当然汗だく。ほかの人は当然全員着席している。彼らにとって見れば、”遅刻寸前でダッシュしてきて、離陸をちょっと遅らせた迷惑客”に私は見えたのだろう。汗臭いし。白い目で見られながら自分の席に着く。機内での肩身が狭い。

 いや、私悪くないから!

せめて遅刻の理由くらいアナウンスしてほしいなー、と思った私でした。

・空港税関には実は特別室があることが分かった。

・遅れる人にもまっとうな理由がある場合がある。航空会社起因の遅刻もあるので、遅れた人にも優しくしよう…と思った。
そんなフライトでした。

この時点でJALさんへ私の印象は最悪でしたが、このあとシドニー離陸前に好印象に変わります(≧▽≦)

それはまた、別の話で。


2.4 機内のドン引き発言


 機内にはいろんな人がいろんな事情を抱えて乗っている。旅行目的の旅行客、仕事目的のビジネスマン、仕事を求めて異国に向かう求職者、語学の勉強のための学生・・・だから、自分と全く違う事情を抱えた人がいても何ら不思議ではないのが機内である。そんな人に出会っても驚くような必要は決してない。


”来週火曜からバーミンガムに行ってくれ。2週間。” 

その出張はいつも通り突然に決まった。2017年12月。ただでさえ豪雪地帯である長岡であることに加え、その年は10年に1度レベルの降雪量の年だった。

 来週・・・といってもその日は木曜日。要は5日後である。フライトは火曜日の朝成田空港。長岡からだと早朝に出ても間に合わないので、前日入りが必要だ。

 4日後の月曜日。会社をフレックスで16:00に上がって、家に帰ってシャワーを浴びてトランクを引っ張って家を出てバス停に向かう。運悪くその日も積雪50㎝程度の大雪。これまでの雪も合わさって道はどこも1m以上の雪で覆われていて、バス停までの800mでも20分くらいを要した。・・・が、その程度は想定内。雪での悪路を見越して25分前に出ている。むしろちょうどいい位だ。田舎のバスなのでダイヤは1時間に2本。乗り過ごしは絶対に避けないといけないので当然だ。

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 5分後。


・・・バスは来なかった。


大雪で遅れていたのである。

結局20分間、凍えながらバスを待ち続け、ようやく乗れた。

雪。雪。雪。全部雪のせいだ。本当に雪が恨めしい。

でもこの街をでて、新幹線に90分も乗って東京に着けば、忌々しい雪ともおさらばできる。そして初のイギリス!楽しみだ!



そう、思っていた。

この後再び雪に足元をすくわれるとも知らずに。



 

長岡駅に到着し、18:00のMAXときに乗る。バイバイ長岡!

18:25.越後湯沢。新潟の中でも屈指の豪雪地帯。すごい雪だと思ってびっくりしていると、新幹線が関越トンネルに入った。ここからは15分くらいずっと電波すら入らないトンネル。ここを超えれば山を越え、一気に雪のない地域に入る。

18:40.トンネルを抜けた。ここからは群馬県内。

外の景色を見る。雪がない街を見たのは1か月ぶりだ。電波も戻ったので、何の気なしに次の日のフライト情報をチェックする。まずはKLM.オランダ航空。フライトスケジュールでは、11:00に成田からKLMでアムステルダムで乗り換えをし、そこからバーミンガムに行く予定。スマホで自分の乗る日と便名をKLMのサイトに入れてみた。

検索結果が出た。

そこには、こう赤字で書かれていた。


 ”スキポール空港は大雪により、現在閉鎖しております。明日発着のフライトは全便欠航となります。ご了承ください”

・・・1分ほど文章を何度も見直しする。

”駄目じゃねーか!!!”

明日どうすんの!?会社に戻って仕事か?この新幹線降りた方がいいのか?いろいろな懸念が一気にわいてくる。

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 急いで同行の課長に電話。

”ああ。俺も今見たとこだ。とりあえずカウンターで交渉するので、明日9:00カウンター集合な”との返事。

 とりあえず降りなくていいのか。でも明日はどうなるんだろう・・・と思いながら成田に到着し、眠りについた。


翌朝9:00.KLMのカウンターにて同行者が交渉開始。出張経験が多く、こういったトラブルも慣れている・・・らしい。お手並み拝見だ。

”本日11:00便に乗ってアムステルダム経由でバーミンガムに行く予定でしたが、欠航と聞きました。仕事での移動でして、何としても本日中にバーミンガムにつきたいのですが、振り替えていただくことは可能でしょうか?”

なるほど、そう切り出すのか。

”ご迷惑おかけしております。バーミンガム空港への到着をご希望でございますね?”

”はい”

”1つ方法があります。経由地やキャリアが変わりますがよろしいでしょうか?”

”バーミンガムに行けるののなら何でもいいです。”

”承知しました。それならば、あまり時間がないですが10:35にANAよりデュッセルドルフ行きの便があります。到着時間の2時間後にバーミンガム行きの飛行機が出ておりますので、そちらに乗っていただいてバーミンガムに行かれては如何でしょうか?無料で振替いたします。”

”ああ、デュッセルドルフね。ぜひお願いします!”

凄い。5分で解決した。

決まっちゃったよ。ところでデュッセルドルフってどこだ・・・?と思いつつも時間がないのでとりあえず振替券をもらい、ANAのカウンターへ急行。

手続きを行い、手荷物検査、税関を抜け、折角なのでANAマイルを貯めるためのAMEXカードを作る手続きを終えた時には、搭乗時間が迫っていた。

 とりあえず飛行機に乗る。行先は知らないが同行者が列の先にいるので大丈夫だろう。

 席についてからしばらくして離陸。その30分後くらいに昼食が配られた。

慌ただしかったが私も腹がふくれたことでようやく落ち着き、周りを見る余裕ができた。周りを見る。

 機内はかなり空いていて、エコノミーなのにほとんどの3人席には1人ずつしか座らされていない。唯一後ろの席から15人くらいのおばちゃんの集団がわいわい旅行気分で固まってぺちゃくちゃしゃべっている。団体ツアーだろう。私も1人で3人席を占領できたので寝るにはありがたい。5列先に同行者はいたが、機内食を食べた後は、何と横になって寝ていた。

 フライトは9時間とのこと。私も寝よう。目を閉じた。


・・・トイレに起きる。やはりベッドとは勝手が違うようでたびたび起きてしまう。時計を見ると4時間しか進んでいなかった。同行者は相変わらず寝ているので、私は搭乗前から感じていた疑問をふとCAさんに投げてみた。


”すみません、デュッセルドルフってどちらの国でしょうか?”

”え?ああ、ドイツですよ。”



”あの人、行先も知らないのに飛行機乗ってるわ・・・”

私の発言が耳に入ったのか、後ろのツアー客に噂されてしまった。デュッセルドルフに向かうのを楽しみにしている人々からみたら、確かに変人の発言にしか見えない。

もう1度言う。機内にはいろんな事情を抱えた人がいる。



笑わないでいただきたい。


2.5 旅行者にはお勧めしません

 バンクーバー。世界の過ごしやすい街ランキング1位の街である。

中心街には何でもあるし、自然も雄大。気候も過ごしやすく、治安も基本的に最高の街だ。・・・そう、”基本的には”だ。


 2014年5月。プロポーズも成功して、半年後に結婚を控えた私は独身最後の旅行先として、バンクーバーとシアトルを訪れた。


 初日は午前中に着いたが、飛行機での疲れもあり、軽く街歩きと、スーパーでトランクに入れなかった生活品を買った後、地元のレストランで食事をとりすぐに睡眠をってからの2日目。元気も満タンでここからが旅の本番だ。 

 幸い、天気も良くが絶好の外出日和。

 まずは手元の地球の歩き方で紹介されているとおり、バンクーバーの最大の見どころであるスタンレーパークをレンタサイクルで回ることにした。

 バスでパークの最寄りの駅に着くと、お目当てのレンタサイクル屋はすぐに見つかった。

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 3時間20$。カナダドルは90円なので、1800円か。いい値段しているが、貴重な海外旅行。安い店を探す時間も勿体ないので素直に払い、パークに直行した。

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 ”気持ちいい!!”

 雄大な自然と、カラッとした湿度の少ない空気。そして周りにはたくさんの木々。空気が新鮮だし、景色がどこを切り取っても素晴らしいのだ。間違いなく人生で1番楽しかった自転車での時間だった。


 スタンレーパークは外周8㎞程の広い公園だが、途中ところどころフォトスポットで写真を撮ってちんたら走っていて1時間半ほど滞在していた。それでもあっという間であったが。


 パークを出て時計を見ると、自転車を借りてから90分が経過している。残り90分。この90分をまだ90分残っていると見る人ともう90分経ってしまったとみる人と2通りいると思うが、まあ旅人は前者が多いわけで。あと90分も自転車に乗れる!


 せっかく高いレンタル代を払っているので、残り90分は街中を自転車で回ることにした。

 ・・・そういえば、昨日はギャスタウンの蒸気時計を見に行く予定だったが夕方だったため見られなかったことを思い出す。距離的にも自転車であれば残り時間で十分行って帰ってこれる距離だった。そちらに向かうことにする。

 地図を見ると、現在地からはHeistings street を通ると近いものの、手元の地球の歩き方の地図には”この地域はあまり近づかない方がいい”と書かれていた。 

 そうは言うものの、ここを通ると近いし、前回のシドニー旅行でもキングズクロスを歩いても何ともなかったので、

・・・まあ、自転車乗っているし何とかなるでしょ。

と、そのまま行くことにした。


Heistings streetに向かう。

街は相変わらず治安がよく、さすが住みやすい街No1である。こりゃかのStreetとやらも大したことないのでは?と思う。


着いた。


 甘かった。

アメリカのスラム街と同じ雰囲気。路上に人がゴロゴロしていて、建物も物々しい雰囲気だし、おまけにかすかに大麻のにおいも混じっている。

 自転車に乗っているので襲われても逃げられるが、正直少し怖いが、日本では遭遇できないような場所なのでそのまま突入。


 ”おお。すごいな。Stafety injection”か・・・


大麻注射施設である。我慢できない人は、新しい注射針を支給してきれいな部屋を貸すのでここでキメろ、間違っても汚い針を使って病気になるな、ということらしい。日本ではありえない施設であるが、見る分には楽しい。


 すれ違う人はどこか生気のない目をしている人が多い。何人かは大麻やっている人だろう。ちょっと怖いが自転車という足があるので、私は楽しんでいた。


その時。


「ガチャン。カラカラカラ・・・」


不運にもレンタサイクルのチェーンが何の前触れもなく外れた。


え・・・


自転車は2度と走ることはなかった。もはやこうなってはただのお荷物である。


"Hey!"


道行く人がにやにやしながら声をかけてきた。明らかに心配しているわけではない。

まるでバイオハザードの世界である。


"怖え!”私ははや足でStreetを抜けざるを得なかった。

旅にはアクシデントがつきものだが、これは自分の油断が招いたヒヤリ体験だった。

観光ガイドの近づくなという指示には、素直に従っておこう。

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