学校だけでなく職場など、集団や人間関係へ苦しむ人へ贈る物語
辻村深月先生の「かがみの孤城」を読みました。
この話は中学でいじめを受けて、不登校になった、こころちゃんが主人公。
以前、辻村先生がこの作品を読んだ子供の読者に「どうして僕たちの気持ちがわかるの?」とたくさん言われ、その回答が「大人もそうだからだよ」とアンサーしていたのが心に留まっていました。
私が本作を読んで驚いたのは「パワハラされた私の気持ち、どうしてわかるの?」でした。
印象的な言葉がたくさんありました。
この上記2つの言葉を見て、私は救われました。
人によっては理解してくれます。
傷ついたこと、言われたことが不適切であること。
でも、人によっては全く理解してもらえません。自分もそうでした。
私を支えてくれた先輩の言葉。
「言い方悪いけど、なんでこんなことで会社を辞めたいとまで思うの?」
それは「問題を作った人間たちは、クソくだらない。そんな人たちのために人生を棒に振るな」という、先輩なりのエールでした。
しかし、私はひどく傷つきました。味方の人の言葉でも。
確かにその通りなんだけど、「こんなこと」で傷ついてる自分が、情けなく、人から見たらもしかして「大袈裟」と思われてるのかなと不安になりました。
でもそれが辻村先生の「たったそれだけの言葉で処理してしまう」という言葉や、2つ目にご紹介したセリフで救われました。
被害を受けた悲しみや怒りは、他人に伝わりにくいもの。
むしろそれは、伝え手に問題があるのではなく、受け取り側の想像力次第であること。
経験しないとわからない、ということがあると思います。
私もこの物語を読んで、不登校の子がどれほど苦しいのか知りました。
みんなきっと、理由はそれぞれであっても、同じように苦しんでいるのだと思いました。
ちなみにこの物語も子供が6人出てきます。学校へ行かない事情はみんなそれぞれです。
最後にこの言葉。
本当にこの「何か」が厄介。
あからさまに体を傷つけられると「暴力はいけない!」「パワハラだ!」「いじめだ!」となります。
そういう目に見えて悪いことを昨今する人は少ないと思います。
直接的でなく間接的に人を傷つける。何とハッキリ言えないことで人を傷つける。
だから、いじめやパワハラの定義に厳密には当てはめにくい。
これにも被害者は苦しみます。
前述したように、自分の感覚が変だったりワガママなのかと。
でもこの物語を読んで、自分の心が傷ついてることが何よりの証拠だと思いました。
それまで会えていた人たちに会うのが怖くなる、行けていた場所に行けなくなる、震える、気分が悪くなる。今までできていた日常が、できなくなる。
それだけで、大ごとなんです。
全員が辻村先生のように、人の心を動かす文章力や言葉を持ち合わせていません。
また、全員が体感したことのないことに想像し、共感をできる人でもありません。
そんな私たちが、勇気を出して、自分の心の中の感情を誰かに伝えたこと。
もしたとえ聞いた人から「それで?」と言われても、それは誰のせいでもない。あなたは悪くない。
この作品には、まだまだお気に入りの言葉がたくさん並んでいます。
他の人の読書感想文にもありましたが、本当に人間の本質をよく表した作品です。
今苦しい人、そういった経験をあまりしたことがない人、周囲に苦しんだ人がいる人、ぜひ読んでみてほしい。
アニメ映画もあるけど、小説も難しい言葉がなく、漫画のようにスラスラ読めますよ。
私は、文字で読んだ方が、きっと一つ一つにジンってくると思います。
私の気持ちを言葉にしてくれてありがとうございます。
そんな気持ちで涙を堪えながら一気読みした本でした。
※ちなみにストーリーも伏線も完璧過ぎて、もう感無量ですよ。私もこういう作家さんになりたい。
🎬 映画は芦田愛菜ちゃんが、声優をしていて、プライムビデオで100円レンタルしてるよ。
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