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Sakura,

「桜の咲く頃に、会えたらいいね。」

そんな約束をしたかは定かではないけど、少し暖かくなると心も風通しが良くなったようで、いつも届かない場所にも光が射しこむ気がする。

自分らしくない行動に驚いたり。

それがきっと春なのか何なのか。



寝息を聞いていて笑ってしまった。
寝付きまでの早さ、リズムや、音。

懐かしいなと思う。変わらないなと思う。
ずっと元気でいてねと思う。
出来ることなら先に死にたいなって思う。




やり取りを重ねて勝手に作り上げたぼんやりとした輪郭の人が、突然リアルになる。
答え合わせは、一瞬で。
一言も話さずとも全てが目の前にすると理解(わか)る。

不思議だなと思う。
実際に会える確率はどの位なのだろう。
少しのボタンの掛け違えで会えないままも沢山ある中で、同じように奇跡的にピースがハマる瞬間もあるのだなと思う。

前からずっと知っていたような。




夜桜を眺めながら散歩。
沢山あくびをしていたから、疲れて眠いのにごめんねと謝った。

いや、気持ちいいと眠くなるんだよ、ごめんと謝られた。
お互いまだ手探りで相手を気遣いながら。
特に多くを語るわけでもなく、静かにただただ隣で珈琲を飲みながら歩いた。

東京で一緒に歩いているという非日常の事実だけが、桜と共にひらひらと心に舞い落ちる。




エスカレーターに乗っていると目の前の首筋にかぶりつきたくなる。
「どうして会ってくれたんですか?」の問いの正解は何だったのだろうか。

迷いのない、純粋な瞳の眩しさに耐えながら、過ぎ去った年月を想う。
「今日はありがとうございました。素敵な時間でした。」

「また会おうね。」













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