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標高5357mを登るためのトレーニング

標高5,357mのゴーキョ・ピークに行くなんて、特別なトレーニングが必要なんじゃないの?と思われるかもしれません。私の場合、昨年11月に、1年後に行こうかなぐらいのつもりでその後ぼんやり過ごし、ちゃんと手配や準備を始めたのは3カ月前ぐらいから。特に標高の高い場所に行くということで、どんなトレーニングが役立ったかを中心に書いてみます。

誰と行くか?

昨年エベレスト街道で見かけた、2週間ほどの行程を歩いてきたと思われるグループは、10人弱ぐらいとかで楽しそうでした。そこまで大人数でなくていいけど、何人か同行者がいたらいいなと。

そこでまず、昨年ネパールから帰国した後すぐに、いつも一緒に山に行っている相方、あやのさんに声をかけると、行ってみたいとのこと。即座に同行者1人決定。

もう1人頭にあったのが、私がエベレスト街道に行ったのを知って、「羨ましい! 私もその時期ネパールへトレッキングに行きたかったけど、航空券取れなかったんです」と言っていた友人、みゆきちゃん。しかし彼女はそんなに長く会社を休めないということで、断念。残念だけど、そりゃそうだ。

その後、特に積極的に探していたわけでもなかったんだけど、私が雑誌『ランドネ』の仕事で冬の北海道ロケに行ったときのこと。そのときモデル役として来てくれたゆかちゃんと話していたら、「エベレスト街道行きたいんです」と。「今年の秋に行こうと思うけど、じゃあ行く?」という話をしつつも、そのときゆかちゃんに会ったのはまだ2回目だったので、あんまりリアリティもなく・・・。しかし、7月ごろだったか、具体的な準備に入ろうという時期にもう一度声をかけると、「行きます!」とのこと。これで、ゆかちゃんの同行が決まりました。

こうして最終的には、あやのさん、ゆかちゃん、私の3人になったわけです。

メンバーを探すときに考えていたのは、自立した登山者として、自己責任でいろいろ判断して行動できそうか、ということ。ツアーではなく個人でのトレッキングなので、こちらにおんぶに抱っこっていう感じだときついだろうなと。あとは、単純に一緒に行ったら楽しそうか、ということですね!

最低限やっておいてよかったトレーニング

本題の、実際にどんなトレーニングをしたかですが、本当に低酸素トレーニングに行ったぐらい。夏ごろは仕事もバタバタしていて、ランニングもできなかったし、日本の夏山にすら満足に行けてませんでした。

ただ、低酸素トレーニングは行ってよかったと思います。

ルクラからゴーキョ・ピークやカラパタール(エベレスト・ベースキャンプ)を目指すトレッキングの場合、1日の行動時間は3〜5時間程度(休憩除く)と決して長くありません。というのも、たくさん歩いて急に標高を上げると、高山病になりやすいから。目安は、1日に上げる標高が500m以内ぐらい。なので、普段から日本で山を歩いている人なら、体力的には問題ありません。問題は、高度順応がうまくできるかどうか

高山病にかかるか否かは、体力のあるなしにかかわらず、主に体質の問題と言われています。ということは、ランニングやら登山やらでトレーニングするよりも、高地トレーニング的なことをしたほうがいいんじゃないか・・・と検索して見つけたのが、ミウラドルフィンズ

その名前でピンと来た人もいると思いますが、ミウラドルフィンズとは、プロスキーヤーの三浦雄一郎さんや豪太さんなど三浦ファミリーが運営する、低酸素トレーニングルーム(以外の事業もありますが)。私たち3人はまず海外高所テストを受け、出発1週間前に標高4,000mと5,000m想定の低酸素トレーニングを受けました。

実際に受けるまでは、低酸素トレーニングって、低酸素状態の中で体を動かして慣れさせるみたいなイメージ。が、実際はちょっと違ってて。高所に行ったとき自分の体がどんな状態になるのかを感覚的に知ることと、自分の体が酸欠気味になったときの努力呼吸の仕方を学ぶこと。この2つがメインでした。

実際、低酸素室に入るとどうなったかというと、個人差はあるものの、私の場合は手の先がしびれてきたり、耳鳴りがしたり、クラクラしたりという感じ。ゆかちゃんは軽い頭痛を訴えてました。ただ、高山病のひどい症状が出るのは、高所についてから6時間〜4日後。富士山の弾丸登山に行く人なんかも、高山病になる前に下山していることが多いようです。

ここでのテストやトレーニングで終始装着していたのが、血液中の酸素濃度を測る、パルスオキシメーターという機械。

平地での酸素濃度(動脈血酸素飽和度)の正常値は97〜100%なのに対して、低酸素室の中で運動すると70%台になってしまうことも。そこで努力呼吸をすると、みるみる酸素濃度が上がるのが数値で見えるので、呼吸法の大切さを理解する助けにもなりました。そこで、トレッキング中に体調把握の目安とするためにも、パルスオキシメーター(1万円弱ぐらいのもの)を1つ買って持っていくことにしました。

低酸素トレーニングを受ける前は、標高5,000m以上って行ったことがないので、自分がどうなってしまうのかまったくわからない状態。それが、標高5,000m相当の低酸素状態で自分がどんな状態になるのか経験できたこと、酸欠状態になったときの対処法を知れたことは、私にとってかなり自信になりました(高所テストで肺年齢が20歳と言われたのもあり笑)。

本当にトレーニング全然できてなかったけど、低酸素トレーニングだけはやっておいてよかったと思います。あと、すごいラッキーなことに、三浦雄一郎さんを見かけました(笑)。

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