米国獣医学部入学に必要な経験

はじめに

アメリカの獣医学部の入学にはある程度の「動物経験時間」が必要です。各学校で必要な時間数は異なりますが、最低限で100~200時間ほど必要とされていて、合格者では平均でざっと500時間ほどを持つ人が多いですね。経験とは以下の4つのカテゴリーに分けられます。
獣医師監視下(例:動物病院勤務、など)
獣医師不在(例:動物園飼育、家畜の飼育、など)
研究(例:獣医研究、医学研究、など)
その他(例:部活動、バイト、など)

経験が必要な理由

経験時間数の提出の必要な理由はいくつかありますが、そもそも日本と大学のシステムが違うところから始まります。獣医学部は大学院の扱いなので、受験者は現大学生もしくは卒業直後の人がほとんどです。4年間勉強をしたあとなので、ある程度の知識と経験が求められます。

大学側から経験時間数を要求する大きな理由は、生徒の「やる気」を測るものに近いかと思います。実際に獣医療の現場に立ち、現実を見た上で、獣医師になりたいかどうかを確認するプロセスでしょう。

日本では獣医学部は高校のすぐ後に入り、「獣医療とは何なのか」、「獣医学とはいかに広い分野なのか」、など理解不十分のまま入学するケースがありますね。個人的には「獣医学部に入ったけど獣医療に興味がなくなった」と言う人なども耳にしたことがあります。経験を確認することで、入学者は獣医療にパッションを持つものに制限できると思います。もちろん、それでも「やっぱり獣医師は違う」と思う人もいますが、これで数を極限に減らすことはできると思います。

経験はどうやって得る?

獣医療の現場に高校生が立ち入ることは想像しにくいかもしれませんが、アメリカでは珍しくない光景ですね。アメリカでは高校生のころから獣医師を目指している生徒をバイト・研修生として受け入れるところが多いので、経験を早くから積むことは十分可能です。

獣医病院で高校生・大学生のレベルだと、できるものは限られますが、見学から動物の固定、ワクチンの準備などまではできます。病院へ直接連絡したり、コネクションを使って見学させてもらうことが多いですが、つなげてくれるプログラムや大学の獣医病院でバイトをするなども可能です。卒業後、獣医学部入学前はもちろん、テクニシャンとして仕事をすることも可能です。

研究はほとんどの場合、大学レベルで行いことが多いです。所属大学で研究室を独自で探し、直接PIと連絡とるのが一般です。各研究室により経験できるものは異なりますが、頑張れば論文発表までもできます。

自分の経歴

一応参考のため、自分の経験の履歴を書き出します。

高2 - ペンシルベニア大学の免疫研究室でCAR-Tの研究を2か月間
高3 - 地元の獣医病院で1年間研修

大1~3 - 所属大学(UC Davis)の実験動物獣医療を行いバイトを3年弱行った。これは、大学で扱っている実験用動物の獣医療を独自で行うバイト。8割以上の症例はマウス・ラット。
大2~3 - UC Davisの栄養学研究室に1年間所属。脳発達に鉄分の影響を研究。
大4 - 国際農業者交流協会主催のJATP海外農業研修プログラムの家畜部門での教師を3か月間行った。

卒業後 - 1年ほど、ペンシルベニア大学獣医学校でがん免疫(CAR-T)の研究

まとめ

アメリカでは、ただただ勉強ができるだけでは獣医師になれない。むしろ、勉強が特別優れていなくても、経験さえあれば獣医師になるのも可能。学校外でも十分に経験を積み、教室では学べない獣医学を学ぶことが重要。そのためなのか、アメリカの獣医師は獣医師を目指す学生への教育にすごく熱心で、どのレベルでも獣医療の現場に入り込むことは十分可能になっている。狭き門だが、経験をコツコツと積んでいくことで獣医学部に入学できる可能性は確実に大きくなる。

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