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情報収集と方策の自己決定性 (今自分が考えていること)

私は今、キャリアコンサルタントとして就労支援の仕事をしています。その中で最近、少し疑問に思うことというかあれこれ考えていることがあり、それをある程度まとめるために文章化しようと思います。今、頭の中であれこれ考えているのですが、なかなかまとまらずモヤモヤしているところです。

まず、私たちの仕事において重要なことについて考えてみたいと思います。まずは何と言っても支援対象者(CL)への基本的な態度です。共感的理解とか受容とか誠実な態度とか、さらには自己一致といった基本的な態度が重要なのは言うまでもないことです。しかしながら、このような基本的な態度というものが偏重して捉えられているような気もしないではありません。

特に、傾聴とか共感的理解とかは時としてこちら(キャリアコンサルタント:CC)が受け身になってしまうこともあるのではないかと思います。すなわち、CLの言動に対して受け身になり、対処が後手に回ることが危惧されるのではないかと思うのです。そのような状況だと、一つひとつの状況判断に遅れが生じてしまうのではと思うのは考えすぎでしょうか。

私は、この点については次のように考えます。まず、キャリアコンサルティングの初期では、上記のような基本的態度が非常に重要になってきます。CLとのラポール形成、すなわち早期の関係構築を図ることはキャリアコンサルティングにおいて重要なファクターです。しかしながら、ラポール形成ができてくると、今度は問題を把握(私は阻害要因と呼んでいます)する段階に移行します。CLの阻害要因が何なのかを把握することは重要なことです。

しかし、この阻害要因の把握を意識しているCCは少ないように感じています。阻害要因の把握は客観性です。CL自身がどのような人か、CLの置かれている環境や状況がどのようなものなのかを把握することで、自然と阻害要因は見えてくるものと私は考えています。しかし、私がみている限りにおいては、あくまでCL自身の言動をメインにとらえ、その言動や思考、感情などから何らかの判断(CLはどのような人か など)を下しているCCが多いように見えます。

社会心理学では、個人の行動や思考、感情、態度、発言といったことは、その個人に依拠するだけでなく、その人の取り巻く環境や状況も同じように重要視します。ちなみに、言動などを個人の特に内面に帰属することを心理学では基本的な帰属エラーと呼びます。

私がこの仕事をするにあたって重要視しているのはこのような点です。


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ようやく、この記事の本題に入ります。

では、そのようなCLの環境的要因をどのように情報収集し把握すればいいのでしょうか。少なくとも、CL自身の言動から把握することが重要なのは言うまでもありません。しかし、CL個人の言動から情報収集することには限界があることも事実です。このことについて少しだけ説明しておきます。

まず、CLの話は事実と思考や感情との境界があいまいであることです。事実と感情をワンセットにて発言する場合もあります。事実と考えや気持ちをある程度切り離してとらえることが重要な場合もあります。また、その事実を曲解している場合もあります。さらには、確証バイアスとして、自身が思っていることに同意してほしい情報を集めようとする場合もあります。加えて、出来事などの時系列が前後バラバラな場合も少なくなく、状況の把握が非常に困難な場合もあります。

このように、CL自身の言動だけではなかなか環境的要因を把握することには困難が伴います。そこで重要になってくるのが、CL自身が、自身の環境(状況)をどのようにとらえているのかです。これもある意味、CLの主観的な視点なので客観性は乏しいように思えますが、CLが自分を取り巻く状況をどのように見ているのかという視点を促進することで、自然とCL自身の客観性が備わってくるではないかと思うのです。

しかしながら、それでも限界があります。というのは、仮にCLがどんな人なのかを把握するために、CL自身の言動からそれを推し量るのは乱暴なようにも思います。一義的には、CCとしてCLをどのように見るのかという視点を持つことは、キャリアコンサルティングにおいて重要な要素です。しかし、それもCCの主観でしかありません。やはり、そこにもCLがどのような人なのかという客観的な要素が重要になってくるのではないかと私は思うです。

では、CLを客観的な視点で見るためには何が必要でしょうか。それはCLを取り巻く人々が、CLをどのように見ているのかです。また、CL自身があまり口にしたくないこと、たとえば、家族が阻害要因であってその家族との関係性が良好でない場合などです。この場合はCL自身に意見を求めても、家族に意見を求めても、問題は浮かび上がってきません。ではどうするかといえば、第三者に意見を求めることです。

たとえば、CLの家庭が生活保護受給世帯(生保受給世帯)であると疑われる場合、CL自身もその家族もその事実を隠したがる傾向があります。一見、キャリアコンサルティングにおいて生保受給世帯であることとの何の関係性があるのかと思われるかもしれませんが、非常に重要な要素です(その点についての説明はここでは割愛させていただきます)。この場合の阻害要因は、生保受給世帯である親の協力姿勢とみることもできます。

この場合の情報収集の手段として考えられるのは、ある程度、生保を受給していることの蓋然性が高まれば、福祉事務所にコンタクトを取ることも可能と考えられます。そもそも、キャリアコンサルティングにおいてそこまでする必要があるのかという意見もあると思います。現に、ついこの前職場でそのような議論をしたところです。キャリアコンサルティングにおける情報収集にどれだけ重きを置くのかは、各CCによって違いがでてくることも十分理解ができることです。

しかし、阻害要因の把握のためにあらゆる情報を収集することは、その次に待ち受けている方策を講じる際に非常に重要になってきます。どれだけ方策・手段を考えられるかが重要になってくると私は思うのです。情報が集まることによって、方策の検討や、その手段をいつ、どの段階で講じるのかの判断材料になり得ます。手段は多くあったほうが良いはずです。

これも常々、私がよく言っていることですが、キャリアコンサルティングにおいて、例えばアセスメントの検討についての考え方です。それは、CLの何を測るのかを明確にする点です。何を測るのかを不明確なままアセスメントを実施することはCCの資質に関わることです。仮に、何らかのアセスメントを実施するにあたって、どのアセスメントを実施するのか、それは何故か、どのような目的か、さらにはそのアセスメントをいつ、どの段階でどのように実施するのかを明確にし、CCの責任において判断、決断することが求められると私は考えます。

ただやみくもに、なんとなくアセスメントを実施することは好ましいものではありません。それは、アセスメントに限らず、他の要素についてもそうです。例えば、CLは正規雇用を希望しているが、現在のCLの経験や能力などから、現状ではそれが非常に困難であると考えられる場合、ひとつの手段として非正規での雇用を提案することもあるかと思います。この際に重要になってくるのが、CLが非正規雇用をどのようにみているのかと、非正規雇用を取り巻く環境がどうなのか、さらには希望業界の状況がどうなのかという視点でとらえることが重要になってきます。そのためにも、あらゆる情報を収集することが重要になってくると、おそらく理解していただけると思います。

このように、私なりに考えることとして、キャリアコンサルティングにおいての方策の検討や実行のための判断材料として、あらゆる情報を集めることの重要性についてです。CLに対するキャリアコンサルティングは、すべてにおいての責任は担当のCCにあるとも言えます。私たちCCの一つひとつの情報収集、状況把握、さらには方策の検討や実行に関わるさまざまな決断が、CLの今後の人生を左右します。

しかしながら、このような視点、考えをもつかもたないかは、各CCの判断にゆだねられていることでもあります。良い悪いではないと思います。それでも、私はこれまでの経験において、情報収集というものが、一つひとつの判断・決断、方策の実行のために深く大きく影響を及ぼす重要な要素であると考えてきました。今後、おそらくまた職場でこのような議題について議論することもあろうかと思います。その際には積極的に、自由闊達に議論をし、考察を深めたいと思います。

ご意見などありましたら、お願いします。




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