中国駐在と中国語の話。

オンライン中国語教室をやっています、というのを前回紹介しましたが、今日は駐在員時代の私と、中国語の話をしたいと思います。

中国語と私。

私は英語がとても苦手でした。
人とコミュニケーションを図るのが割と好きだったので、今思えば興味自体はあったような気がするのですが、80年代生まれの私にとって英語や外国語、そもそも外国人とあまり日常的に接することもなく、その必要性自体に懐疑的な時代でもあったような気もします。

今から20年も前の大学時代に中国語を勉強していました。
が、やはり座学で外国語を学ぶことが苦手と言いますか、必要性に迫られるものではない学問でもあるので、モチベーションも保てませんでした。

そんな折、19歳で初めての海外、初めての短期留学として中国天津市に行きました。
4ヵ月の短期留学を目論んでいたのですが、当時、新型肺炎と呼ばれる得体の知れないSARSが中国で流行しており、1ヵ月余りで帰国を余儀なくされてしまいます。
今はコロナウィルスのせいで海外留学、海外旅行が難しくなってしまいましたが、私はその気持ち、少し理解できるかなあと思ったりもします。
それはさておき、私の場合は1ヵ月とは言え、少しだけでも中国に滞在ができたことは、とても刺激的な出来事でした。

3歳児並みの中国語を駆使し、初めて買い物に行ったことは今でも鮮明に覚えています。
当時の中国は日本と違って接客、サービス業としての意識は皆無で、とても高圧的な態度でお釣りを投げ渡す行為が当たり前でした。
普通の人なら尻込みしてしまうところですが、
「ああ、海外だとこういうことが起こりうるのか!」
逆に興奮さえ覚えてしまっていた私にとって、中国語学習は座学よりも実践向きだったのでしょう。

駐在員になり、初めて手がけた人事。

大学を卒業して日本でふつーの会社に勤めていた私の人生の中で、中国という国は徐々に縁のない国になっていましたが、転機となったのが、上海での駐在員生活でした。

駐在員になりたての頃は、タクシーに乗って目的地に行くことさえ精いっぱいで、ビジネスの交渉どころか、手に入れたいものを手に入れるのでさえ苦労するような中国語レベルでした。
大学時代に1年少々勉強し、ギリギリ及第点で単位を取得したくらいですから、10年も経てばそうなるのも当然です。

そこから紆余曲折ありながら中国語をマスターする訳ですが、簡単に言えば私は実践を繰り返したことで、みるみる中国語レベルが高くなりました

結果的に労働環境が私の中国語レベルの向上に大きく影響したのですが、駐在員になったときの会社は、まさに中国市場に進出するところ、ゼロからのスタートでした。
その一つの大きな任務に、「人材の確保」がありました。
日本でも人事採用なんて考えたこともない私でしたが、まず何よりも日本語ができる人材を集めようと、短絡的に考えていました。

応募条件は大前提として日本語(外国語)が堪能、それにプラス、事務員さんであれば事務能力、エンジニアであれば技術力、営業マンであれば交渉力、を求めていたことになるのですが、そんなスーパーマンのような人材が、超小規模の日系企業にそうそう簡単に入社してくれる訳がありません
入れ替わりの激しい中国の人材市場ということもあり、さらには私が人事の素人ということもあり、そのことに気が付くまで2,3年も掛かってしまいました。

転機になったのは、3,4名体制のうちの、一人の社員の存在でした。
彼はほかの社員と異なり日本語が全く話せませんでしたが、ヘッドハンティングしてエンジニアとして採用しただけあって、これまで10数名採用(中国は本当に社員の入れ替わりが激しい。。)してきた中でも、突出した素晴らしい能力を有していることは明らかでした。
エンジニアとしての能力だけでなく、物事の考え方や他の社員とのコミュニケーションや教育の仕方など、文字通り私の右腕となるのに時間はかかりませんでした。

それからというもの、私は出張に出かける度、彼に同行してもらい、日常的に食事を共にすることも増えました。
そうなると当然問題なってくるのが、言語の問題です。

さすがに彼の日本語よりも私の中国語の方が二人のコミュニケーションを図るのに適していたので、全て中国語での会話にならざるを得ません。
とにかく私は彼の言葉をよく聞くようになりました。
スマホを使って翻訳をしたり、ということも度々ありましたが、彼から発せられる言葉の意味、発音の全てに集中していました。

私が考える中国語学習。

語学の学習については、様々な意見があります。
語学力は暗記力だ、とか、コツコツ継続することだ、とか。

私の場合は、ほぼほぼコミュニケーションだけで中国語を身につけました。
コミュニケーションが好きな私ですので、これが私にとって一番適した語学学習方法であったのだと思います。

それから、中国人を真似すること、中国人にすぐに意味を聞くことです。
先述の私の部下は、思考回路がデキる日本人に近似していると思ったのですが、その象徴が彼の口癖である
「关键是,,,」(guan1 jian4 shi4,,,)
と言う言葉でした。
枕詞のようなものなので最初は何となく聞き流してしまっていたのですが、日本語に直訳すると「カギを閉める」、
転じて「要するに」とか「肝心なのは」

といった意味になります。

「あんたよく关键、关键って連呼するけど、それどういう意味?」
と聞いて、中国語で説明を受けると、同時に私の脳内で発音と漢字がパッと結びつけられました。

そもそも私の学習能力では単語を闇雲に暗記するには限界があります。
ただし、この关键(カギを掛ける)の一つ一つの漢字を解きほぐしていくと、「ああ、なるほど」と、意味が自然と導き出されるのです。

この流れには理路整然な彼の性格背景なども加味されて導き出されやすくなっていました。
「要するに~~」、「肝心なのは~~」なあんて表現を口癖のように駆使するのは、やはり伝達能力に長け、思考が明確な彼らしい単語です。
ただ、コミュニケーションでも相手の性格を理解することは重要なことで、その性格を把握するのも私にとっては得意だったのかもしれません。

中国語学習をしたことのない方だと理解するのは難しいかもしれませんが、私個人的には特に中国語は日本語の漢字と似た意味を持つことがほとんでもあり、基礎さえできていれば後は実践をこなしていくことで、自然と身に付きやすいというようにも思います。

私の場合はこの部下の存在というのが、中国語学習にとって、あまりにも大きすぎるほどでした。
思考回路が似通っていて、互いが互いを頼りにしていること、もちろん職場が同じなので時間を長く共有できることなど。

ですから、これは私が主催する中国語教室の宣伝でもあるのですが、私のモットーとしても、オリジナルテキストを使用することは必須なのです。
もちろん基礎はきちんと学ぶべきですが、一般的に流通している市販のテキストだけではモチベーションしかり、学習者が必要としていない部分を学ぶのは苦痛でもあり、実践的ではないからです。

駐在員と中国語。

その後、会社が大きくなるにつれて社員の数も増えましたが、一時的に日本語を話せる社員が皆無になってしまうほど、実力重視の企業体質を構築することができました。

自画自賛する訳ではありませんし、結果論としての私の意見ですが、
日本語能力が優先された社員が中心となるような会社(外資系企業)
もしくは現地語が話せない管理者ばかり、では
海外に進出する企業の成長は見込めにくい
と思っています。

海外に居住するのだから現地語をペラペラにしなければならない、なんて、もちろんそんなに簡単なものではありません。
私自身はやはり大学時代に基礎を学んでいたことが、とても大きな財産でもあり、立場上(小さい会社で唯一の駐在員かつ責任者)現地人と積極的に交流しなければならないという背景も大きかったと思います。
ただ、いずれにせよ、全く学ぶ姿勢がないようではいけないと思っていて、何ならそのような姿勢は現地の社員たちにも伝わってしまいます。

私が以前中国のビジネスで、日系企業(依頼主の子会社)の社内状況を見てほしいと言われたことがあります。
幹部から一般社員にまでヒアリングをしたのですが、その際に印象的だったのが、
「私は日本語がほとんど話せないので、この会社の幹部になることは無理だと思う」
と、寂しげに話す現地社員の言葉でした。

私自身も最初はそうでしたが、よくよく考えてみれば意味の理解できない外国語で幹部と社員が話しているのを見れば、なんだか差別を感じないでもないでしょう。
個人的にはそれは、とても簡単な言葉でいいと思います。
「你好」「再见」とか、誰でも知っている中国語を彼らに向けるだけで、大きなモチベーションになるわけです。
それはおそらく逆の立場だったとしても同じではないでしょうか。

あえて、私が主催する中国語教室の宣伝をぶち込むとすれば(笑)
少し上のレベルの中国語を話せなければ、簡単な言葉であっても、なかなか自然と発声できないということです。
何もビジネスの交渉の場で自らがペラペラな中国語を駆使せよ、と言っているわけではありません。
習慣付けという意味でも、常日頃、中国語を学んでおくことは駐在員、ましてや現地法人の管理者であれば是非実施してもらいたいと思います。

今はコロナ禍もあり留学も駐在も簡単なことではありません。
オンライン中国語教室は、これからも断固とした意志を持って、私は続けていくつもりです。
長々となりましたが、最後は企業宣伝で(笑)
ご興味のある方は、受講の是非に関わらず、ご連絡をください。
お問い合わせフォーム – JNG (jng-chenqin.com)

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