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夜、街の広場にどんなコンテンツがあると「豊かな夜」をつくれる?──「Night Camp TOKYO Vol.2」ワークショップ編

ナイトタイムエコノミー推進協議会(以下、JNEA)は、文化・観光・まちづくりのエコシステムを整備し、業界の垣根を超えたナイトエコノミーの推進を実現するべく、「Voices of the Night」と題したイベントシリーズを展開しています。

2022年10月13日には、イベント「Night Camp TOKYO Vol.2」を開催。ワークショップではアーティストやクリエイター、イベントプロモーター、メディア、まちづくり、行政、大学などさまざまな立場の方々がテーブルを囲み「夜×街づくりの可能性」について議論を交わしました。

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夜に関わる多様なステークホルダーの目線合わせを行う

「インバウンド観光推進施策の一環として語られることの多いナイトタイムエコノミー推進の議論ですが、本来はまちづくりの文脈で語られるべきではないでしょうか?『人間、文化を中心としたまちづくり』『住み、働き、遊ぶ人の多様で豊かな営み』があるからこそ、都市は生活者・観光客にとって魅力的な場所となるはずです。多様性を受け入れる人間中心な都市をつくるためには、ナイトタイムエコノミー活性化が欠かせません」

JNEA代表の齋藤貴弘による現状のナイトタイムエコノミー推進施策に対する問題提起から始まったワークショップ。まちづくりに関わる約50名の参加者たちは「夜、街の広場にどんなアクティビティやコンテンツがあったらいいのか?」という問いを考えました。

ワークショップでは街のイラストや役割(ペルソナ)カードを使用。さまざまなナイトアクティビティが展開される街の中心にある閑散とした広場をテーマに、アイデアを検討していきました。役割カードには「街に引っ越してきた男の子」「広場のすぐ近くに住むおじいちゃん」「ナイトワークをするシングルマザー」など多様な属性を持つ生活者を設定。参加者にはそれらのカードをランダムに引いてもらい、その役割になりきってそれぞれの目線から見た理想の夜の街のあり方を考えてもらいました。

「誰もが楽しめる夜をつくる」をミッションに掲げるナイトデザインカンパニーNEWSKOOLと共にワークショッププロトタイプを設計

本記事では各グループで出てきた議論を要約し、そこで提示されたアイデアとともに紹介させてもらいます。

##Group1 子どもから大人まで楽しめる夜の公園を考える

「パブリックスペースの使い方を、夜から考え直していこう」という切り口でアイデアを考えました。注目したのが、公園の持つ「遊び」や「学び」の機能を拡張するアイデアです。花火や虫取りなど都心の中でも日本の四季を感じられるようなアクティビティがあったり、子どもたちが飲食店の仕事を見学し現場の創意工夫を体験することができたり。そんな公共空間を夜の公園から作っていければと思います。子どもを一時的に預けられるサービスがあることで、大人が夜の時間を思い思いに過ごせることも魅力だなと思っています。(グループリーダー:齋藤貴弘)

##Group2 肩書きを超えた交流を促すナイトアクティビティ

夜は昼の肩書きを気にせずに人々が過ごせる時間であるからこそ、多様な人々が交流できる広場があったらいいのではないかという議論になりました。広場ではナイトシネマやボードゲームバー、ナイトスポーツを楽しめる会場などさまざまなコンテンツが設計された上で、人々のつながりを育む設計としてキャンプファイヤーを囲んで歌って踊ることもできる。グループメンバーそれぞれの理想の夜の楽しみ方を詰め込んだような空間を構想しました。(グループリーダー:伊藤佳菜)

##Group3 夜の街に「余白」をつくる

夜の都市の中に「余白」や「逃げ場所」をつくることが重要だと思います。学校帰りの学生が座って休んだり談笑できたり、ナイトワーカーの人が仕事の休憩中にふらっと立ち寄れたり、そんな使用用途が限定されずに思い思いに過ごせる広場が都市の中に求められるのではないでしょうか。広場に充電スポットやフリーWi-Fiを設置したりといった人々を惹きつけるちょっとした仕掛けと周辺住人との合意形成があれば、実現可能なアイデアだと思うので、ワークショップ後も引き続き実装を検討できればと考えています。(グループリーダー:鎌田頼人)

##Group4 夜の公園を利用者全体で管理する

私たちのグループは議論の中で具体的なアイデアが次々に生まれたので、その一部を紹介できればと思います。「ナイトワーカーの人々が一時的に子どもを預けられるように夜の習い事教室をつくる」「公園に足湯を設置して子どもから大人まで集える場所をつくる」「肩書きや容姿を気にせず人々が交流できる仮面舞踏会を開催する」などなどです。加えて夜の公園という公共の場をどのように安全に管理するべきかの議論もしていました。市民や周辺の企業が共同運営方式で少しずつ資金を出しながら公園の管理をするなど、公園を皆で育てていく場所として運営できれば、一人ひとりが責任感を持って公園を利用できると考えました。(グループリーダー:松田東子)

##Group5 夜の街への入口となるナイトマーケット

夜の街への入り口をつくることが、より豊かな夜の時間をつくることに繋がるのではないでしょうか。夜にクラブやバーなどディープなコンテンツがさまざまあるけれど、家族連れや観光客が気軽に訪れられる場所がない。24時間営業しているナイトマーケットやホテルのラウンジなどが、夜の楽しみ方を紹介する役割を担えるのではないかと意見がまとまりました。ナイトマーケットがその街のインデックスとして機能しており、より深くナイトカルチャーに浸かりたい人は店主やホテルマンに街のディープなスポットを紹介してもらう。より多くの人々へと夜を開いていく場を設計することが、いま求められているはずです。(グループリーダー:飯沼 伸二郎)

##Group6 夜の街の楽しみ方を知る重要性

音楽関係者が多かったわたし達のグループでは、アイデアを構想するよりは、人々を惹きつけるようなナイトコンテンツ/アクティビティを都市に実装するためにはどのような視点が求められるのかという議論をしていました。そこで話題に上がったのが「公私混合を推進するべきではないか」という視点です。1980年代などを振り返ってみると、今よりも夜をつくる当事者がナイトライフの楽しみ方を知っていました。仕事終わりにクライアントと飲みに行くなども当たり前で、公私混合の時間にこそ、クリエティビティや熱意溢れる事業アイデアが生まれていました。だからこそ「仕事とプライベートの境目をより曖昧にしていくこと」「ナイトタイムエコノミーを推進する当事者がその楽しみ方を熟知すること」が重要なのではないでしょうか。(グループリーダー:関口泰子)

アーティストやクリエイター、イベントプロモーターからは夜の街を豊かにしていくための具体的なアイデアが生まれ、行政やまちづくりの事業者からは、それらのアイデアを実装にするにあたって公共空間における規制や制度の問題をどのように解決していくか、周辺住民や地域の事業者をどう巻き込んでいくかという提案がなされていた本ワークショップ。業界の垣根を超えたナイトエコノミー推進の可能性を示す一つの契機となりました。

そこで繰り返し議論されていたのは「夜の街を開くこと」の重要性。夜は多様な人々のライフスタイルを受け入れる舞台であるからこそ、子どもから大人、ナイトワーカーから観光客まで多様な属性を持つ人々が楽しめる夜をつくることが求められているのではないでしょうか。そのために大切なのはこれからの夜をつくる当事者たちが夜の価値を熟知していること。経済活動の場としての夜、多様な人と出会い交流を深める場としての夜、創造的で実験性に富む文化的表現の場としての夜。夜が持つ価値を多角的に捉えて実装していくことが、豊かな都市をつくることにつながるはずです。

JNEAでは、ナイトタイムエコノミーの推進に向けて多様なステークホルダーが対話できる土壌をつくるべく、イベントシリーズ「Voices of the Night」を今後も展開していきます。私たちのビジョンに共感いただける方は、ぜひ活動の輪にご参加ください。