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【エッセイ】推薦者よ健康であれ
この世界は多くのカルチャーで溢れていて、自分で拾えるものには限界がある。どんな人でも、観た映画より観てない映画の方が多いという事実を頭に置いておくと、少し気持ちが楽になる気がする。
なるべく「面白い」ものにはふれておきたいので、人からの「この本面白かったよ」「あの番組良かったよ」というオススメにはすぐに飛びつくようにしている。それは元々「飛びつくように」という意識的な行動だったが、いつしか自然と飛びつくようになった。
Twitterは、基本誰かのオススメで成り立っているが、タイムラインを流れる全ての「あれが良い」「これが良い」を正面から受け入れて、飛びつくのは難しい。そこは取捨選択の腕が試されるので、何度も配信ライブを泣く泣くスルーしてきた。
先日も、人から勧められたアルバムを聴いた。それが、フジファブリックの「LIFE」というアルバムだった。フジファブリックは元々ライブを観に行くほど好きなバンドだったが、推薦された時点で「LIFE」は聴いていなかった。私は動向を追っている好きなミュージシャンが多いので、全部の人達の全部の曲は聴けない。いつからか、そこは仕方ないと割り切るようになった。
「LIFE」は良いアルバムだった。フジファブリックのストレートな「良い曲」と、挑戦的な「変な曲」の両方が味わえる、「聴いて良かった」と心から思える一枚だった。
ただ、アルバムを勧めてくれたのは数年前。その数年の間に、その勧めてくれた人はTwitterを辞めてしまっている。直接会ったこともないので、どこで何をしているのか知る術が無い。
勧めてもらった翌日にアルバムを聴かなかったことを後悔している。私の感性から生まれた感想は稚拙かもしれないが、今からでもどうにかして感想を伝えたい。アルバムの完成度はとても高く、聴いて非常に満足した。しかし、推薦者に感想を伝えられないという一点で、私の気持ちは完全には満たされていない気がする。
推薦者に感想を伝えて、そこでようやく自分の気持ちは完成することを、最近になって知った。
その人は、私にアルバムを勧めたことなど忘れている可能性が高いが、もし会えたら「ブルー」という曲が良かったことを真っ先に伝えたい。向こうが私の近況を訊いてきたとしても、まずはそれを話す予定だ。
少し前に、関西に住んでいる知り合いに「ピンポン」というマンガをオススメされた。一巻を買ってそれっきりになっているので、早く読もうと思う。その人がアカウントを決してからでは遅い。
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