見出し画像

組織を変革と共に成長させる技法とは?

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
唐突ですが、「組織」とはなんでしょうか?
辞書によって大同小異あれど、その定義は「同じ目的に向かって活動を共にする人間集団」的な内容になると思います。
多くのビジネスパーソンが所属する「会社」は、その代表ですね。

そして、VUCAの時代と呼ばれる今、「組織」の成長はおろか保持・継続することのハードルが上がり続けています。
本書は、VUCAにおける「組織」を変革し、成長させるための、極めて実践的な叡知が詰まっています(大げさかもしれませんが、私は本当にそう感じました)。

組織が変われない3つの理由 「元気」と「成果」を同時に実現する組織のつくりかた



第1章 組織が変われないつの理由

組織を開発する定義を、本書では次のように引用しています。

「組織開発とは、戦略、組織構造、業務プロセスを開発、改善、強化することによって、組織が変化する能力を構築し、より大きな成果を達成できるよう支援する、重要かつ科学に基づくプロセスである」

41P

ここに見られるとおり、組織を開発するそもそもの目的は「大きな成果」を達成するためです。
では、その達成ためにどうすればよいのか?「戦略的組織開発」を、本書はその鍵概念として設定します。
「組織が変われない3つの理由」は、戦略的な組織開発を阻害する3つのケースを取り上げます。
特に以下の理由3は、多くの企業に見られる状態ではないでしょうか。

理由③実行するメンバーの内発的動機づけができていない
「知的レベルの高いメンバーが正しい打ち手を考えて、実行力の高い現場メンバーが、それを実現させていけばいい」これが難しいことを序章からくり返し述べていますが、日本の組織は、まだこの誤りから抜け出せていません。

68P


第2章 「対立」は変革の原動力である

「対立」なき組織は存在しません。
この章題にあるとおり、この対立をどう咀嚼するかが組織開発の鍵ともなり得ますよね。

組織の中で対立を見るときは、個人間や組織間だけでなく、「ロール間の対立かもしれない」という視点でながめる

96P

組織における対立は、その原因を個人ではなく役割に求める。この視座は組織開発だけでなく、欧米におけるハラスメント対策やチームビルディングでも用いられているものです。


第3章 「今、ここ」だけの認知の限界を乗り越え、正しい方向性を見出す

VUCAを生き抜くためには、過去の振り返りが重要だと本書は説きます。

過去には「私たちは何者なのか」という「企業のDNA」があります。それを把握したうえで、今に戻り、未来を見ていきましょう。

138P

ビジネス判断に迷ったときはまず企業の最上位概念(ポリシー、ミッション等)に立ち戻る。自分のアイデンティティを再確認することで、判断を固めていく。
こうした手法は、リーディングカンパニーの役職員研修でも取り入れられているプログラムです。


第4章 社内の「内発的動機」を育む

本書が極めて実践的であると冒頭で書いた理由は、用いられている数多くのスキーム図がとても明瞭だからです。

組織変革は「変わりづらい部分」から取り組もう(p.167)で紹介されるコングルーエンスモデルや、成人発達理論(メンバーの能力を引き出す)(p.185)で紹介される図などはその好例です。



環境順応型知性:指示を待ち、外部(組織等)に依存するチームプレイヤー、忠実な部下として振る舞う
自己主導型知性:自分なりの羅針盤と視点を持ち、自律的に問題を解決する自己変容型知性:問題を発見すると共に、複数の視点と矛盾を受け入れる。人は相互に依存する存在だと理解し、自己変容と他者変容を同時に取り組んでいく

187P


第5章 「対立」を力に変える施策

ここから始まる「第2部 実践編」の名のとおり、第2部では戦略的組織開発を具体的にドライブさせるための技法が紹介されています。本書でのスキーム図の卓抜さを上述しましたが、この章での「図5-4 プロセス構造分析」はまさにその白眉といえます。
続く「バルコニービュー」は、特に実際に社内ワークショップなどで取り入れたい内容です。

「バルコニービュー」とは演劇場のバルコニーの比喩です。高い場所から起きている状況(ダンスフロアにおける人間模様)を俯瞰して捉えるステップです。

223P


第6章 「今、ここ」だけを抜け出し、正しい方向性を見出す施策

組織開発のために過去へフォーカスする」というモチーフが本書では度々登場します。
この章で語られる以下の一文が、その意義・意味をサマライズしています。

人間は、過去の出来事を忘れる生き物です。困ったことに、私たちはそれに気づかずに「覚えている」つもりでいるのです。多くの場合、組織のキーパーソンたちが出会った頃の「生き生きとしたエネルギー」は埋もれてしまっています。このインタビューを通じて、蘇らせることができれば、それを組織が未来へと進む原動力としていくことが可能となるのです。

265P


第7章 社内の「内発的動機」を育む施策

この章で紹介されるリーダーシップサーベイは、管理職層研修にも活用可能なメソッドです。


第8章 戦略的組織開発の実践事例

最終章である第8章は、ここまで紐解かれてきた「戦略的組織開発」を、実際に実践している企業の実例を取り上げます。

D社E事業部は創業90年の典型的な日系の伝統的製造業であり、売上1000億円、従業員数1600人規模の、完成品の部材を提供している事業部門です。

348P

第1章を復習できるように、「この組織が変われなかった3つの理由」でその実際の原因を踏まえる流れは圧巻です。
個人的に、「「まずはトップが変わってください」というアプローチの限界」(354P)という見出しに唸りました。

この企業が、本書の内容を通してどのように変わったのか?変わりつつあるのか?
ぜひ余すことなく全ページを読み進めてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?