リモートでも成長し続けるチームをつくる。 補完関係を深める「強み弱み1on1」
こんにちは、ユーザベースの酒居です。
ぼくたちのマーケティング組織は2020年3月からリモートワーク主体での働き方にシフトし、早半年以上が経ちました。
リモート下でも成長を続け、成果を高めるためにはどうすればよいか。それはチームワークをいかに高めることができるかに直結することを実感しています。そのため、メンバー同士の補完関係を深め、チームの力を高めていことを目指し、日々試行錯誤を続けています。
そこで、現在メンバー同士の相互理解の強化に力を入れています。今回はその取り組みとして企画した「強み弱み1on1」についてご紹介したいと思います。
リモート下でも成長し続けるチームをつくる
ぼくたちのマーケティング組織は今年3月に在宅ワークへ完全移行しました。リアルな場で集うことがほとんどなくなり、マーケティング施策の実行もすべてリモートで連携しながら進めています。
在宅ワークへのシフト後もマーケティングチームは仲間の力で順調に成長していきました。自社で開催しているオンラインセミナー「H2H(Home to Home)セミナー」は週に2,3回のペースで開催し、例えばSPEEDAにおいては毎回平均1,200名を超える集客を続け、そこからの商談獲得も順調に推移しています。また、7月からはWebマーケティングをチーム化し、チームメンバーの貢献によってWebからのお問い合わせも四半期で過去最高の増加を実現することができました。
チームプロジェクトの成功には「補完関係」が不可欠
ぼくたちのマーケティング活動は単独ワークではなくチームスポーツです。一つのプロジェクトを複数人が関わって企画から実行までを推進していきます。そのため、メンバー同士が補完関係をいかにつくることができるかがプロジェクトを成功させる大きな鍵となります。
ユーザベースは補完関係をつくるために「オープンに弱みを共有し合う」ことを大切にしています。互いの強みを理解するだけでは強固な補完関係はつくれません。自分の弱みを開示し、お互いが相手の弱みを理解し受け入れていくことで、自分の弱みと相手の強み、自分の強みと相手の弱みをどう補完し合えるかを対話していくことができます。これがぼくたちが大切にしている「オープンコミュニケーション」です。
(オープンコミュニケーションについては弊社の佐久間が偏愛的に重視しています。ご興味ある方はこちらもご覧ください↓)
しかし、リアルの場でほとんど顔を合わせることがなくなったことにより、チームメンバー同士の相互理解をする機会が減ってしまったことは大きな懸念でした。
リモートをベースとしたチームづくりには、離れてコミュニケーションをとるため、誤解やコミュニケーションストレスも起きがちになります。そのため、チーム内での相互理解を高めることがますます大切になっていると感じています。
そこで、リモートをベースとしたチームづくりには、「オープンに対話できる場を意図的につくる」ことが必要だと考えています。そこでスタートしたのが「強み弱み1on1」です。
メンバー同士の補完関係をつくる「強み弱み1on1」
強み弱み1on1とは、メンバー同士の相互理解を深めるために企画したワークショップです。
1on1は通常マネージャーとメンバー間でのコーチングやコミュニケーション不足の解消を目的で実施されることが多いと思います。一方、強み弱み1on1は、メンバー同士が2人1組となりお互いの強みと弱みを共有し合う双方向な対話です。
メンバー間の相互理解が深めることで、互いの強みと弱みを理解し、補完関係を築くことができます。その結果として各々が自身の強みに集中でき、チームの生産性を圧倒的に高めていくことにつながります。また、メンバー個人としては心理的安全性が増すと同時にコミュニケーション上のストレスが軽減することにもなるでしょう。
強み弱み1on1は現在月に1回チームでリアルな場で集う際に実施しています。普段リモートベースのチーム運営をしていますが、面と向かって対話できることでより深く話し合えることがリアルな場のメリットです。
強み弱みワークシートの構成
強み弱み1on1は、それぞれがまず「強み弱みワークシート」で相手に対する自己理解を記入して内省し、そこから対話が始まります。ワークシートでは下記の10個の項目を用意しています。
【強み弱みワークシートの項目】
1. 記入日
2. 相手の名前
3. 自分の名前
4. 相手に対する理解度(5段階)
5. 自己開示度(5段階)
6. 相手のここが弱そう
7. それを自分はどう助けられるか
8. 相手のここが素敵
9. 自分はどう助けてほしいか
10. 相手の最も光るバリュー(選択式)
項目の中で、4~7がわかりづらいと思うのでそれぞれについて説明します。
項目4. 相手に対する理解度
「相手のことをどれだけ理解しているか」を5段階評価で選択します。項目は「5. 完全に理解できている」「4. ほとんど理解できている」「3. ある程度理解している」「2. あまり理解できていない」「1. 全く理解できていない」で分類します。スプレッドシートなどで作成する場合は予めリスト形式で選択できるようにしておけば便利です。
項目5.自己開示度
4.理解度とは逆に「自分は日頃相手に対してどれだけオープンに自己開示し、自分自身の人間性を伝えられているか」を5段階評価で選択します。項目は「5. 完全に伝えられている」「4. ほとんど伝えられている」「3. ある程度伝えられている」「2. あまり伝えられていない」「1. 全く伝えられていない」で、これも同様にリスト形式で分類しています。
上記「4.理解度」と「5.自己開示度」の項目は相互理解を深める前提をつくるためにとても重要です。これは個人の感覚値になるので人によってばらつきがあります。しかし、あえて自分の主観的な感覚で選択してもらうことで、第3フェーズの「対話」において自己認識と相手の認識にどれだけの相違があるかを知ることができます。詳しくは後ほど「対話」の部分で書きます。
項目6. 相手のここが弱そう
ここは相手の「弱み」だと思うものを書く項目です。これは相手への攻撃や批判が目的ではなく、あくまで相互理解を深めるために、自身が相手の弱みをどれだけ理解できているかを伝えることが目的です。また、「伸びしろ」と「弱み」を分けて対話することも大切です。この点に関しては「対話」フェーズの部分で後述します。
項目7. それを自分はどう助けられるか
上記6で書いた相手の弱みに対して、自分がどう助けることができるのか、補完関係を築くことができるのかを書きます。この項目を6と合わせて、相手へ伝えることで補完関係をどうつくっていくことができるかの対話を生み出すことができます。
上記の項目ではあえて「相手の弱み」や「自分の強み」などの直接的な表現を避けています。直接的な言葉で考えようとすると、どうしても形式ばってしまったり、書きづらくなってしまうことが心理的ハードルを高めてしまう可能性があるため、項目の表記も工夫が必要だと思います。
強み弱み1on1の流れ
強み弱み1on1のワークの流れは4つの段階に分けて構成しています。各段階は下記のようにフェーズを分けており、1回あたり全体で25〜30分で実施しています。
1. ペア決め
普段仕事で関わるメンバー同士で2人1組でペアになる
↓
2. 内省
まずお互いに対する理解度・相手の強み弱みをワークシートへ記入する(所要時間:5〜8分)
↓
3. 対話
ワークシートをお互いに見せ合い、順番に自身の記入意図を伝え合う(所要時間:15〜20分)
↓
4. 模索
期間を決め、それまでにどこまでお互いの理解を伸ばすか、そのためには何が必要かを2人で決める(所要時間:5〜10分)
各フェーズを実施するにあたり、大切にしているポイントをそれぞれ紹介していきたいと思います。
第1フェーズ「ペア決め」のポイント
誰と誰が話し合うかを決めるペア決めはとても大切です。普段の仕事に沿ったペアでなければ、話し合う内容も曖昧なものとなり、生産的な機会とはなりません。ペアはメンバー同士でも、マネージャーとメンバーのペアでもかまいません。
・リーダーやマネージャーがアサインする
はじめて強み弱み1on1を実施する際は、リーダーやチームマネージャーが組み分けをし、ペアを決めることがおすすめです。もちろんこの人と話したいというメンバーがいれば、それを反映してアサインすることも柔軟に対応すれば良いと思います。
尚、ペア案をつくる際、もしマネージャーが誰と誰をアサインすれば良いかわからない場合は、自身がチームメンバーの仕事状況を見きれていないアラートにもなります。その場合、チームマネジメントのやり方を考え直すきっかけになるかもしれません。
第2フェーズ「内省」のポイント
内省のフェーズでは、まず一人で相手に対する認識をワークシートへ記入していきます。普段一緒に仕事をしているメンバーでも、改めて強みや弱みを書き出そうとすると意外と悩むことが多いです。これは自分がどれだけ日頃から相手の理解を深められているかを認識する機会にもなります。
ぼくたちが実践しているいくつかのおさえるべきポイントをご紹介します。
① シートは端的に一言で箇条書きに書く
シートへの記入は端的に書くことがポイントです。文章で長々書くとそれを読み合う会になってしまったり、意図が曖昧なものになってしまう可能性があります。
強み弱み1on1の根底は「コミュニケーション」です。ワークシートはあくまで内省フェーズで自分の考えを整理し、対話フェーズで「会話のきっかけ」をつくるためにあります。
② 「遠慮の枕詞は不要」の旨を事前にアナウンスする
また、「記入は端的に書くこと」を事前に全員へ伝えることも重要です。特に「遠慮の枕詞を入れない」ことをアナウンスする必要があります。ちょっとしたことですが、これによって記載時の心理的安全が大きく高まります。
遠慮の枕詞とは弱みを書く際に遠回しに書いたり、不要な気遣いの修飾語を入れることです。例えば「○○さんは直接会話するととても良い人だとわかるんですが、テキストコミュニケーションが少しきついように感じています」のような文。この場合では端的に「テキストコミュニケーション」と書くのが会話を創出しやすいので不要な遠慮の枕詞は記入せず、どんどん項目を書き出すことに集中した方が良いと思います。
③ 他責でなく自責で考える
ワークシートを記入するにあたって大切な観点が「他責ではなく自責で考える」ことです。たとえば、理解度を測る項目で「あまり理解できていない」を選択した人は、相手の理解を深めようと普段からアテンションが張れていない可能性が高いです。他責に考えると問題が自分の影響の輪から出てしまい、アンコントローラブルな課題となってしまいます。
相互理解を深めるためには、まずは自分の課題を見つめ直し、そこから会話を始めることがファーストステップだと思います。
第3フェーズ「対話」のポイント
いよいよ最も重要なフェーズ「対話」です。
対話の時間は1組あたり15〜20分で実施しています。この時間配分は人や状況に応じて時間を延長することもあります。
もし15分も話すことがないと思う場合は、お互いの関係性を見直した方が良いかもしれません。普段から共に仕事をしていて、お互いの強みや弱みを書き出せないということは、お互いが相手の人となりを理解できずに仕事を進めている可能性があります。
ここでも実施の際に大切にしているポイントをいくつかご紹介します。
① 補完関係を深めることを目的に対話する
対話の目的は感情のぶつけ合いではなく、お互いの理解を深め良好な補完関係を築いていくことです。なので相手の人間性を否定したり、誹謗中傷するものではあってはいけませんし、そこから相互理解は生まれません。互いをどう認識しているのかを前向きに景色交換していくことが大切です。
② 対峙するのではなく、一つのワークシートを見ながら隣り合って話す
オープンに話し合うためには、座席配置や話し方の工夫もポイントです。心理学的な観点でも対峙した座席配置では寄り添いあった会話がしづらい傾向にあります。そこで、一緒にワークシートを見ながら隣り合って会話することで、率直なコミュニケーションが苦手なメンバーでも自分の意見を伝えやすくなります。
③ 相互理解にはまず前提認識を揃えることが重要
相手の強みと弱みを伝え合ったとしても、お互いの前提認識が揃っていなければふに落ちた対話はできません。まず「4.理解度」と「5.自己開示度」の共有でお互いの前提認識を揃えることがキーです。
例えば、お互いの理解度や自己開示度がまだ低い段階にあると両者が分かれば、強み弱みを伝え合う以前にお互いの人となり理解するためのコミュニケーションがまだ不足していることが分かります。それを把握した上で対話をしていく必要があるでしょう。
また、自己認識と相手の認識にギャップがあることが分かる場合もあります。自分は相手に対してほとんど理解できている(理解度4)し、ほとんど伝えられている(自己開示度4)だと考えていても、実は相手からすると理解度は2(あまり理解できていない)で、自己開示度も2(あまり伝えきれていない)という認識相違があるかもしれません。その場合は、お互いが「なぜそう思っているのか」という前提の景色を共有し合うことが大切です。
そもそもお互いの認識にどれくらいの距離があるのかが分かることで、その後の対話が円滑になります。
④ 相手の弱みを指摘することではなく、理解の伝達が目的
相手への理解度と自己開示度の前提認識を共有し合い、お互いの景色交換ができたら、相手の弱みだと考えている点とそれを自分はどう助けれられると思うかについてお互いに話し合っていきます。
「6.ここが弱そう」の項目、つまり相手の弱みだと考えている点を伝えることにハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。しかし、ここで大切なことは相手の弱みを「指摘」することではありません。指摘ではなく「自分は相手の弱みを理解していることを伝達する」ことが目的です。
そこで、「6.ここが弱そう」と「7.どう助けられるか」はセットで伝えることが大切です。6の項目だけを伝えると「弱みを理解していることの伝達」ではなく、どうしても「弱みの指摘」に思ってしまいがちです。なので、「自分は相手のここが弱みだと認識しているから、その点を自分がどう補完できると思っているか」を伝えることが大切です。
⑤ 「相手の強み」と「自分の弱み」の共有で締める
6と7の項目は相手の弱みの理解とそれを補完できる自分の強みの伝達がメインでした。「8. ここが素敵」と「9. どう助けてほしいか」の項目では反対に、相手の強みの理解とそれで助けてほしい自分の弱みの伝達が目的になります。
相手の強み、尊敬しているところを認め、言葉で伝えることで信頼関係は増します。さらに、自分の弱みを伝えることでどのような自己認識を持っているのかを自身も考えることができます。相手の強みの理解と共有で締めることで、より前向きに次のフェーズ「模索」へ移っていくことができます。
⑥ クロスで照らし合わせて対話することで相互認識を深められる
自分の認識が絶対的に正しいものではないということを自分で理解しておくことは対話をする上で大切なことだと思います。自己開示するとともに、お互いの強みと弱みがどう見えているのかをフィードバックし合うことで、自己認識を高めるとともに相互の認識を合わせることができます。
そこで、自分のワークシートと相手のワークシートを照らし合わせて見ていくことがおすすめです。ワークシートは自分と相手で対称の関係になっています。それぞれの項目がクロスでつながっていることを意識すると、自分の認識と相手の自己認識は一致しているかもしくは違いがあるかを把握し合えます。
例えば、「9.自分はどう助けられるか」は「自分の強み」だと自身が認識していることと、相手が「8.ここが素敵」で書いた「相手の強み」と思っている点が一致しているか、そこに認識相違がないかを確認できます。
それぞれをすり合わせていくことで対話が抽象的なもので終わらず、より具体的な認識に落とし込んでいくことができると考えています。
第4フェーズ「模索」のポイント
最後のフェーズ「模索」の段階では、「対話」を経た上で、今後さらにお互いの理解を高めるためにはどうしたら良いのかを具体的に話し合います。
ここでのポイントは2つです。
① いつまでにどの段階まで理解度/自己開示度を伸ばしたいかを決める
「今後もっとお互いに理解していきたいね」だけでは、本当の理解促進は実現できません。まずは「いつまで」に「どの段階まで」相互理解を深めるかの目標を決めます。ぼくたちの場合は四半期や半年で期間を設定しています。
次に「どの段階まで」理解を伸ばすかについて考えるにあたっても、定量的に考えることが具体的なイメージにつながります。ワークシート内の「4.理解度」と「5.自己開示度」の項目を活用し、お互いがどこの基準までその期間中に伸ばしたいかを話し合って決めます。
② 具体的な取り組み/活動を決める
①で期限と目標の理解度/自己開示度を決めたら、具体的な「How」を決めます。例えば、「毎週固定の時間に30分間の1on1の時間をつくる。その時間でタスク進捗ではなく、お互いの景色交換をする」ことを決め、その場でカレンダーをとばして時間を決めたペアがいます。
強み弱み1on1で相互理解が深まったとしても、その日だけで終われば本当の意味での改善にはなりません。この「模索」フェーズでいかに具体的な目標とアクションに落とし込んで自分たちの補完関係を築いていけるかが大切です。
強み弱み1on1の効果
強み弱み1on1を実施してみて、メンバーそれぞれがお互いの理解を深めてくれていることを実感しています。ワーク中も規定の時間内に終わらないほど毎回会話が盛り上がっています。
メンバーからも「普段一緒に話していても進捗共有がメインとなってしまい、ゆっくりとお互いの考え方について話せる時間がとれていなかったのでとても良い機会になった」という声や「お互いの理解が深まり、今後の仕事の役割分担や進め方についても相談できた」という声をあげてくれています。
ぼくも他のメンバーと一緒にワークをしてみて、お互いの景色交換ができるとても良い機会になっています。特に理解度と自己開示度の認識がお互いに合致していることがわかった時は素直に嬉しいですし、お互いが理解し合って働けていることを実感しました。また、メンバーへの日頃の感謝を改めて感じる機会にもなっています。強み弱み1on1自体がとても楽しい時間です。
相互理解から生まれた自分たちのValues
そして、このワークなどを通して「自分たちがどんな人たちなのか」を自分たちで言葉で表していきたいという想いが生まれました。
ぼくたちユーザベースには「7 Values」というバリュー(価値観)があります。これは自分たちが目指すべき理想像ではなく、自分たちのあるがままの人となりをそのまま言葉で表現した7つの価値観です。ぼくもこのバリューを仕事における決断の指針にもしています。
そのカンパニーバリューと合わせて、ぼくたちマーケティング部門(MBD)独自のバリューもつくりたい。その考えにメンバーも賛同してくれ、新たに「MBD Values」という3つのバリューを言葉にしました。
これはぼくたちが日頃大切にしている考え方をまとめたものです。このバリューを掲げるだけでなく、普段の会話の中でも自然と言葉が出てくるようになっています。
強み弱み1on1を通した相互理解の深化は、大切なバリューをつくっていくきっかけにもなりました。
一度で終わらせず、継続的に開催する
現在ぼくたちは強み弱み1on1を月1回程度のペースで実施しています。強み弱み1on1は一回で終わることなく、継続して実施することが大切です。
「良い機会になった」という感想だけでは、本当の意味で目的を実現することはできません。定期的に開催していくことで、お互いの理解がどのように進んでいるかを振り返る機会になります。また、同じペアだけでなく新たなペアをつくり、メンバー間の相互理解の範囲を広げていくことも定期開催のメリットです。
ワークシートを共有するメリットと注意点
強み弱み1on1の後にペア以外にもワークシートをチーム内で共有すれば、メンバー間の理解につながります。また、マネージャーがメンバーの状況を知り、誰にどのようなサポートが必要かを考えるきっかけにすることもできます。
ですが、強み弱み1on1はあくまで2人1組でクローズドな空間でオープンに対話してもらうことが目的です。そのため、後で全体へ共有があることで、率直なコミュニケーションを阻害してしまう恐れがあるのであれば、1on1を実施した相手以外への共有は避けるべきです。
特に、マネージャーが管理目的や評価目的でシートを利用することは絶対にするべきではないです。シートが人事評価対象になってしまう場合、お互いに率直なコミュニケーションができなくなり、意義のある対話ができなくなってしまいます。あくまでメンバー同士がお互いの内容を確認して、相互理解の進捗状況を確認し合うために活用することを促進する環境をつくることが大切です。
「弱みの共有」が「強みに集中できる環境」をつくる
冒頭でも書きましたが、ユーザベースのバリュー「オープンコミュニケーション」を通して、ぼくたちは「弱みの共有」を重視しています。
「弱みを共有する」という考え方をなかなか受け入れがたい方もいるかもしれません。人事評価を考えると、自分の弱みを自ら開示することに抵抗を感じる人もいるでしょうし、相手の弱みを伝え合うことにハードルを感じる方も多いでしょう。
しかし、「弱みの共有」は指摘し批判し合うことではありません。自分の弱みを伝えることで、相手に理解してもらい、補完関係を築くことで自身は自分の強みに集中できるようになります。また、相手に自分の人となりを理解してもらうことで心理的安全性を高めることにもつながります。
また、相手の弱みを伝えることも、相手の弱みを含めて相手の人間性を理解し受け入れていることを伝達するためです。お互いが理解を示し合うことで、心理的安全性は高められ、強固な補完関係を築いていくことができます。弱みの共有は各々が自身の強みに集中できる環境をつくる土台です。
相互理解は「目的」ではない
強み弱み1on1はメンバー間の補完関係を深める取り組みとして実施していますが、大切なことは相互理解をすること自体が目的ではないということです。
相互理解を深めることは、メンバーそれぞれの心理的安全性を高め、補完関係を築くことで「自ら成長し挑戦を創り続けるチームをつくる」ためです。仲良くなること、もやもやを解消すること、それももちろんメンバーが働きやすい環境をつくる上で大切なことです。しかし、それだけを目的にしても、自ら成長し続けられる強いチームは実現できません。
ぼくたちは事業として、組織を成長させ、ユーザーの皆さんにさらに素晴らしいサービスを届けてていく責任と自由があります。だからこそ、「自ら成長し続けるチームをつくる」という目的をぶらしたり忘れてはいけないと考えています。
おわりに:「リアル」な場を再定義する
強み弱み1on1はリアルな場での対話がおすすめですが、オンライン上でもできなくはありません。実際ぼくたちも一度Zoomを使ってワークを実施しました。また、地方在住のメンバーともオンラインで実施しています。
しかし、リモートワークがベースになった現在、リアルな場の価値の再定義が必要だと思っています。これまでオフィスで働くことは当たり前であり、それぞれが仕事をする場でした。でも、リモートが主軸となった今、オフィスを含むリアルの場は、「仕事をする場」から「チームコミュニケーションの場」へと変化していくと感じています。
チームコミュニケーション、つまりチームの相互理解を深め、チームの力を強めていく機会の場。その中で、強み弱み1on1はメンバー同士の補完関係を強め、結果としてチームを成長させる機会になっています。
我々の取り組みがご参考になれば嬉しいです。
今回も長文お付き合いくださり、ありがとうございました。
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読んでくださってありがとうございます。まだまだ試行錯誤の連続ながら、自分たちの日々の取組みから得た気づきをシェアしていきたいと思っています。