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『魔の黄金』

監督:谷口千吉
出演:森雅之、志村喬、宇野重吉、星美千子、相馬千恵子 他

貧乏山師が金を掘り当てて大金持ちになり人里へ下りるがやがて転落していく、まさにタイトルどおりのおはなし。

森雅之は志村喬と組んで、一攫千金を狙って山生活をしています。
金を掘り当てた時の二人のはしゃぎっぷりといちゃつきっぷりはちょっと他では見られないというか、何だかレアなものを見たという気持ちになるんですが(笑)やがて志村喬は遺言を残して亡くなってしまう。
その遺言は、息子に金を分けてやって欲しいということ。

モリマはモリマで、かつて貧乏だった故に自分を捨てた女に会って見返してやりたい。もちろん志村喬の息子も探してやりたい。
そんな気持ちで金をどっさり抱えて山から下りてくるわけですけど、なんせ長いこと山ごもりしてたんで浦島太郎状態です。
日本が戦争していたことはちらっと里へ下りた時に聞いて知ってはいるけど、ほんとに「戦争していた」ということしか知らない。これはある意味幸せだね。

凍傷で手の指が数本なくなってるし、どうやら足もそうらしい。

髪もヒゲも伸び放題のボーボーモリマ。大股でのしのし歩くし、まさかのズーズー弁。
とりあえずお洋服を購入。さらに「モダン・ボーイ型ですよ!」とおすすめされるがままにお帽子も購入。でも髪もヒゲもそのままで見た目は小汚い次元大介。
ここまでの流れ、連れてこられた宇宙人感満載でかわいいです。

そうして「一度泊まってみたかった」というホテルに宿泊し、髪もヒゲもさっぱり切って見た目だけはいつものモリマに変身!
このホテルで従業員の星美千子に出会うモリマ。彼女は恋人との子供を身籠ったものの、恋人には冷たく扱われ、そして貧乏だった。

大金持ちになったモリマは一躍時の人となって自分を見返した女・相馬千恵子とも再会。
今のモリマに寄ってくる人は皆お金目当て。
そして結局、相馬千恵子もその一人だった。

宇野重と知り合い意気投合するも、それがきっかけで相馬千恵子に騙されていたことに気付いてしまう。それみろ、バカだね…って悲しくなる。

お金ではなくひとりの人間として見てくれたのは、宇野重と星美千子だけだったんだよね。

貧乏では確実に不幸で、お金はないよりあった方がいいけども、あれば幸せとは限らない。お金は人を狂わせる。金持ちになった本人もその周りにいる人も。
自暴自棄になったモリマに星美千子が「あなたは金持ちで私は貧乏で」「どうして金なんて持ってきたのよ」と泣きながら詰め寄るシーンはすごく良かった。
星美千子、ラストでがっつり雪に埋もれてたけど一体いつから埋もれてたんでしょう…

さて、森雅之が参加した谷口千吉作品は、この『魔の黄金』と『カモとねぎ』の2作のみ。
『カモとねぎ』も、これはモリマじゃなきゃできないけどこんなモリマ他では見れない!っていう最高のモリマでしたが、この『魔の黄金』のモリマも最高なのです。

この頃のモリマはお金持ちのニヒル坊っちゃん的な役が多くマンネリとも言われてましたけど、そんなモリマをヒゲモジャにして雪まみれにさせて小汚くさせてズーズー弁喋らせようぜ!なんて誰も考えなかったのでは?
「エヘへエヘへ」と笑いながらベッドで遊ぶモリマ、お風呂で歌うモリマ、後ろから「だーれだ♡」ってされるモリマ、めそめそ泣くモリマ、踊るモリマ、「もすもす!」って電話するモリマ、アクションするモリマ…

とにかく一つの作品の中でいろんなモリマを見させてくれる谷口千吉には足を向けて寝られないしモリマもっと谷口作品に出てほしかったし、カモねぎの時も思ったけど谷口千吉って結構なモリマファンでは?ファンが喜ぶツボを押さえ過ぎてるよ。

星美千子はめちゃくちゃ可愛くて、宇野重はいつもの素敵な宇野重で嬉しかった。
相馬千恵子の悪そうな顔も絶品です。

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