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Quartelogueについて

はじめに

Quartelogue(クオタローグ)と呼びます.Quarter+logueが語源ですが,造語のつもりで用いています.logueは対話を意味するdia-logueが由来です.
日本語にすると「4つの論理」といったところでしょうか.
この,Quartelogueの枠組みでワークショップや場を開いて参りますので,説明のnoteです.
興味を持ってくださった方は是非ご一読ください.
結論としては「AorB」や「YESorNO」といった二項対立の論理の際に,「A」「B」「YES」「NO」のようなはっきりとした解だけでなく,「A+B」や「YES+NO」のような折衷案や時と場合によるという解,又は「AでもBでもない」「YES,NOで答えられない」「問いが適切ではない」という解を併せ図式化/モデル化したものです.

クオタローグについて図示したもの

定義について

単独解・・・「A」「B」「YES」「NO」

結論が両極どちらかに偏る場合です.ただしその強さや濃淡は場合によるかと思います.「6分4分の割合でAを選択」の場合なども単独解と分類できるでしょう.

止揚解・・・「A+B」「YES+NO」

問いとAB両極それぞれを肯定した上で,両立を図ったもの.所謂「正」「反」「合」における「合」ですから,所謂,哲学用語の止揚(アウフヘーベン)を当てはめました.折衷案だったり,良いところどりだったり,ABどちらも認めた上で共存させる場合がこちらです

脱構築解・・・「非A非B」「非YES非NO」「問いが適切ではない」

問い又はAB両極それぞれを否定したものとなります.問いの否定の場合は,問いが適切ではない場合や解答不能とする状態.AB両極それぞれの否定とは問いを考慮することはできるが,両選択肢どちらも不適切という場合でしょう.眼前にある問いを解体した上で話を進めたり,回答が問いの解体となることから脱構築という言葉を便宜上当てはめています.脱構築とは「ある対象を解体し、それらのうち有用な要素を用いて、新たな、別の何かを建設的に再構築する」という意味で使っていますが,ここでは哲学的厳密性は持ちません.

課題や注意

①真ん中
では,4軸の真ん中は?と思われますが,判断保留や分からないとする解が当てはまると思います
②止揚解と脱構築解の違い
問いによっては両者の差が分かりにくいものも存在するでしょうが,止揚解は問いに肯定的な態度を示すのに対し,脱構築解は問いに否定的であったり前提を崩す性質を持つものになります.その意味では図における上下も定義可能でしょう.
③厳密性の欠如
あらゆる話題や問いに当てはまるとは必ずしも限りません.定義も現時点のものですので今後の精緻化が待たれます.論理学や哲学,TOKや各種思考法からの反証も必要でしょう
④さらなる分類
現在4つに分けていますがより詳細に分けることもできると思います.煩雑性は上がるので現在していませんが必要に応じて微妙な領域(線のボーダーラインなど)の考察を深めることは可能でしょう.

より詳細に分けるには 12領域くらい細分化できそうです

⑤解の重ね合わせや虚数軸の可能性
一面的にさまざまな主張・思考を分類できるとしたが,必ずしも全ての発言をこの枠で捉えようというものではない.重ね合わせやハイブリッドのような形があるだろうし,さらなる軸や,人間の思考の手の届かない虚数軸のようなものを否定しているわけではない.
⑥免責事項?
この図式は独自に考案したものであり,他に取り組まれている事例を知りません.しかし,似たような取り組みがないことを調査したわけではございませんので,何か不都合や問題があればご連絡ください.

具体例(今後追加予定)

貧困に喘ぐ国民にパンの配給をするか(A),国民に我慢をしてもらうか(B)という場合(パンの配給をするか否かというYES NO図式でもありますが分かりやすさのためABにしました)

全員にパンの配給をする!(強いA)
王朝は何もしない!(強いB)
パンではなく,安価なじゃがいもを配給する(A+Bの止揚解)
 (なんでそんなことを聞くのかしら)パンがないならお菓子を食べればいいじゃない(ABの脱構築解)

背景

何故,このような枠組みが生まれたかについてです.特に興味がない方は飛ばしてください.このモデルは急にできたものではなく,いくつかの取り組みやワークショップ・先行事例がありました.
元々は対話の取り組みを永く開催していたましたが,様々な意見や価値観がある中で,オールフラットに話すだけでなく,観点や論点整理の枠組みがあると良いのではと考えたことがきっかけでした.また,中には問いそのものを深堀したり,前提を疑うのが好きな参加者もいました.その意見も共存できないかという問題意識を持っていました.

その後,如何に価値観や論理の違いを楽しむことができるかにフォーカスした際に出会った本が『大人になるためのリベラルアーツ』です.ここではYES/NOで答える形式であるが,絶対的な正解がない問いにフォーカスしています.ディベートとは異なる方法でYES/NOを超克し,思考や論を深めています.

この枠組みを対話的に,ワークショップのような形でできないかと,継続的に取り組んだのが「ディベート対話」でした.(取り組みの開始時期は前後しますが)両方の立場を理解したうえで最終的にどう考えるのか?どう主張するのか?を重視しているため,Quartelogueでいう脱構築解以外の領域をカバーしています.そのためQuartelogueはこのディベート対話の進化系とみなすこともできます.

あとは,高校教育の現場に立って,ディベートの重要性を実感する一方で,その困難さにも直面したことが発想の起点です.ディベートはルールや事前準備などが不可欠で,毎回のセッションも長く気軽に取り入れることは難しいと感じました.長くセッションをする「人狼ゲーム」に対して,一晩で終わらせる「ワンナイト人狼」があるように,似た図式を作れないかと思案しました.
長らくリベラルアーツ協会が模索する対話としての集大成とも呼べるでしょう.

教育的可能性

想定されるメリット

・様々な意見や概念を整理する枠組みとしての活用
・2項対立図式を超えた,止揚と脱構築の共存図式としての価値
・単純モデルによる,分かりやすさ

未だ実践事例が不足しているので,上記の検証も行いながらと考えています.

ワークショップへの活用事例

STEP1 設定する問いを選ぶ
STEP2 それぞれ思考する
STEP3 主張がQuartelogue図式のどこに当たるか開示する 
STEP4 主張を述べる
STEP5 どの主張が一番説得的だったかを検討する
STEP6 ノーサイド(ここから本心で対話するのもアリ)

ディベートのように初めから主張する解を設定する方法もあるでしょうし,オーディエンスがいればSTEP5は投票のようなことをしても良いかもしれません.
また,STEP4の後に他の主張を聞いて,改めて述べた主張を強化する反駁のようなターンがあるとよりディベートの色が強くなることでしょう.時間やメンバー,目的によってカスタマイズ可能です.

リベラルアーツ協会内のイベントや取り組みだけでなく,あらゆる場面での可能性を模索したいと思います.2024年度もどうぞよろしくお願い致します。
ご興味を持ってくださった方はお気軽にご連絡ください.

info@liberalarts7.co.jp

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