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沈みゆく船。料理をし続けるシェフでいるか?バケツで水を汲みだす料理人になるか?

パッと見たらなんのことやら、かもしれないのですが、スタートアップで働く方であれば、おそらく誰しもが「あ〜ね」となる話かもしれません。

■こんなことありませんか?

例えばあなたは、社員数5名程度のスタートアップで営業を担当しているとします。日々のKPIは開拓店舗数。昨日の反省から、今日は営業資料をブラッシュアップしたい。

ただ実際そう上手くはいかない。午前中はテレアポリストの更新と新規店舗からのお問い合わせ対応。午後商談から帰ってくると、クライアントからのメールとメッセが結構溜まっている。返信しているうちに時間が過ぎ…。あ、そうこうしているうちに今度はプロダクト関連でトラブルが起きた。。

あれ。もうすっかり日は沈んでいるし疲れ果てているのに、営業資料、何も手付けられてない…

上記は極端な例ですが、部署の区切りが曖昧な小規模な会社で働いている方だと、特にあるあるな話かもしれません。朝手元に10あったタスクが日中で20に増えて、わりと頑張ったつもりなのに退勤するころにまだタスクが10残ってる…という。


■ひたすら"バケツで水を汲みだしていた"ジョイン当時

いきなり自分の話になりますが、もともと、私は上記のように「降ってきたタスクはなんでもやる」スタンスでした。

大学3年の5月からPOTLUCKで働き始めて、初めは営業インターンとしてテレアポをしたり商談に出向いたりしていました。9月のリリースを控えたころ、業務委託やインターンなど含めメンバーは10名弱いたけれど、メインで動いていたのは代表の谷合、エンジニアのウィル、私の3人。

この頃私に「役職」という概念はそもそもなくて、必要だと思ったことはなんでもやりました。

(来月でサービスリリースか。じゃあお店の人にPOTLUCKの使い方説明しに行かなきゃだよな。マニュアル作ってアポ取るか。)
(えっ予約確認メールがシステムの不具合でお店に届いてなかった!?片っ端から電話しなきゃ!)

スタートアップで働くことは「落下しながら飛行機を組み立てる」「バケツで水を汲みだしながらボートをこぐ」などと比喩されますが、本当にそんな感じで、当時はただ目の前のタスクに忙殺されて、「自分の役割は何なのか?」ということは疑問に思うこともありませんでした。


■初めて「仕事の責任」を感じたとき

そんなこんなでしたが、1年たったころ、今までで一番大きな仕事を任せてもらえました。暗闇ボクシングフィットネスのb-monsterさんとコラボできることになり、その企画の実質のディレクターを担当することになったのです。

そのとき初めて「自分の仕事のリーダーは自分」ということを強く感じました。また、この頃から部署的に営業からPRに異動したのですが、今年10月には私の心の支えだったPRの先輩ばっきーさんも一旦抜けることになり、自分がPRのリーダーになって「役職」や「責任」ということも意識するようになります。ここで「POTLUCKのPRの責任は自分が負っているんだ」「POTLUCKがPRで何か問題があったら自分の責任なんだ」という意識が芽生え始めたのでした。

もちろん私は、POTLUCKにジョインする前はバイト以外ロクに働いたことのないような女子大生だったので、広報の経験なんてこれが初めてです。でも、役割として自分が広報の責任者に割り当てられた以上「経験がない」というのは言い訳でしかない。自分は「広報のプロ」としての意識をもって働かなければならない。そんなふうに考えていました。


■「役割」にとらわれ、気付いたら手を上げられなくなっていた

POTLUCKは現状フルコミメンバー5名、全体でも10名弱で運営しています。もちろん人手は十分とは決して言えません。

例を挙げて言うと、5名のうち、カスタマーサポート専任の人はおりません。しかし、基本的に何かお客さまからお問い合わせがあったら最優先で「手が空いている人が即対応する」(大体代表の瞬発力に負けるのですが)というスタンスです。

ただ、今までの自分であれば「こちら対応します!」と即スラック上で手を挙げられていたものの、いつの間にか自分から進んで手を挙げることができなくなっていました。それは「PRという役割以外のことでリソースを割くことで、PRの業務に支障が出たらどうしよう」という「PRの責任者、という役割を全うしなければ」という意識の余り、ほかの業務にリソースを割いて以前のようにタスクが山積みになるのを恐れていたためでした。

代わりに「カスタマーサポートの担当を日替わりで決めませんか?」という提案をしていました。


■「義務」の仕事と「感謝」の家事

少し話はそれますが、数年前話題になった『逃げ恥』のある回で、「家事は『義務』ではなく『感謝』であるべき」というような話がありました。

要するに、料理でも洗濯でも、「義務=やって当たり前」になると「ありがとう」の気持ちが次第になくなり、逆に「やっていないとき」だけ咎めるようになりる。代わりに、例えばシェアハウスのメンバーが料理を作ってくれたら「ありがとう」どころか今度何かお返しをしよう、と思うのが普通ですよね。それは「やって当たり前」という前提がないからこそ「感謝」が生まれるからです。

とても腑に落ちる話ですが、これは家事が「最悪誰もやらなくても問題ないこと」だからとも言えます。洗濯物が1週間分たまってしまっても来週まとめてやればいいけど、仕事はそうはいきません。

家庭と違って会社には多くのステークホルダーがいて、会社が存続するには信頼が必要不可欠になります。お客さまからの問い合わせを「今みんな忙しいから一旦後回しでいいよね」と先延ばしにしていたら、みるみるサービスの信頼はなくなってしまうでしょう。

話が遠回りになりましたが、私がカスタマーサポートを当番制にしないかと提案したのは、役割を決めて「義務」としてしまえば、やらない人が責められる。精神的にしんどくはなるけど、そうしたほうが、責任の所在がはっきりするし、お見合い状態になることもなくなるのかなと、そう思ったわけです。

■「カスタマーサポートの担当、当番制にしませんか?」がナンセンスな理由

話を戻します。果たして、「カスタマーサポートの担当、当番制にしませんか?」の提案に対して代表はどう答えたでしょうか。結論からいうと、当番制にはしない方向になりました。上記でいう「義務」でも「感謝」でもないわけです。

理由としては単純で、実際お客さまからのお問い合わせは、極端な話24時間いつ来るかわかりません。なので、役割を決めたとて上手くワークしないことは目に見えているからです。

面白いのは、ではどうすればいいのか?という点です。代表に言われて気付いたのは、役割ではなく、メンバー1人1人が「この会社を死なせてはいけない」という意識の元動く必要がある、ということでした。つまり、役割という基準でタスクに優先順位を付けること自体がナンセンスなのだと。

例えば、自分は10名乗りのボートの料理人だとしましょう。そのとき、料理人に求められることはなんでしょうか?平常時「料理を作ること」が求められているのは自明の事実ですが、もしボートが沈みかけた時は?必死にバケツで水を外に運び出し、穴をふさごうとするメンバーを片目に料理を作っているような料理人は、果たして「10名乗りのボートの料理人」として適任といえるでしょうか?船が沈んでしまっては、おいしい料理は何の価値もなさなくなってしまいますよね。


■結論:スタートアップに必要な人材とは?

ただ、むずかしいのが「バケツで水を運ぶ忙しさを理由に、料理を怠る料理人であってはならない」ということです。あるフェーズでボートが豪華客船になった時に、人材採用にお金をかけられるようになって、三ツ星のレストランからシェフを引き抜いてきたらどうしましょう。それまでバケツで水を運んでいてろくに料理の腕がない料理人は、たちまちその会社でいらない人材になってしまいます。

つまり、スタートアップで働くとは「船を沈まないようにしながら、自分の料理のスキルを磨く」ことに近いのかなということです。「そんなんムリぃ」と心の中のギャルが言っているのですが、スタートアップで働くとは、そもそもそういうことなのかなと。

これは何も良し悪しの問題ではなく、スタートアップで働くならその覚悟が必要な一方で、船が沈む不安をかかえず自分の役割を全うすることに注力したいのであれば、沈む可能性が比較的低い、大きめの企業の方が向いているよね、という話です。


・・・なんだかぐだぐだと書いてしまいましたが、この前代表と話していてとてもすっきりしたことだったので、垂れ流し的にアウトプットしてみました。数年後数カ月後には全く異なる風に考えているかもしれませんが、今の思考の整理として、、。

それではまた~

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