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ウェブ広告の目標設定でありがちな「認知目的だからCPAが見合わなくてもいい」について思うこと

ウェブ広告の目標設定について「認知目的だからCPA(顧客獲得単価)が見合わなくてもいい」は、しばしば語られることです。

しかし、本当にそうなのでしょうか?少し考えてみました。

「認知」だけされても購入されるとは限らない

まず「認知」目的だと言いますが、伝える情報が「ブランドの認知」だけだと不足です。

たしかに、知らないものは購入できません。認知は購入の前提条件です。

しかし、認知されても、購入されるとは限りません。

実際、私たちは、電車の中吊り、Twitterのタイムライン、検索結果画面、YouTube……広告を通じて毎日たくさんの新しいブランドと接します。

しかし購入はほぼしません。

しかもそもそも、昨日見た広告は覚えていますか?
視界には入っていたとしても、自分に関係無いなら認知すらしないでしょう。

認知を獲得し購入も検討いただくためには、ブランドが顧客の抱える悩みの解決に役立つことや、それが最善の選択肢であることなども合わせて伝わる必要があります。

もちろん、ブランドの名前が視界に入りさえすれば売上に直結するケースは確かにあります。
例えば、日清食品の「カップヌードル」は、低価格帯のうえコンビニやスーパーですぐに手に取れます。名前を思い出してもらいさえすれば買ってもらえる前提条件が揃っていると思います。

しかし多くのビジネスで、そんな前提条件は揃っていません。認知だけ増えても売上に繋がらないことも多いと思います。

「認知」だけだと後から買ってもらえることはほとんど無い

「認知目的だからCPAが見合わなくてもいい」と言うとき、「後から思い出して買ってもらえるのでは」が前提にあります。

しかし多くの場合、思い出してもらえません。2度とブランドに接する機会もありません。つまり、「後から思い出して買ってもらえる」の前提が成立しません。

例えば、4日前の晩ごはんを覚えていますか?
…ぼくは覚えてません。
それなのに、見ず知らずのブランドを覚えているはずがありません。
(調べたら、UBER EATSでつけ麺を頼んでました……)

後から思い出して買ってもらうためには…「リマインダー」が必要。

ウェブ上で今すぐに買ってもらうことは難しいこともあります。

・購入タイミングが限られている
(例)水道工事、法律相談、BtoBなど

・高単価で、対面営業を介さないと販売できない
(例)不動産、結婚式場など

そんなときは、ブランドを思い出してもらう仕組み、いわば「リマインダー」が必要です。

いくつか例をあげます。

まず、定期的な接点をもつことでマインドシェアを維持し、いざ困ったときの第一想起となるやり方が考えられます。
・アプリでのプッシュ通知
・メールやLINEでの定期連絡、マガジン配信
・SNSでのオーガニック投稿

またシンプルに、電話番号やメールアドレスに直接連絡する方法もあります。
広告というよりセールスの役割ですが、少し時間を置いてフォローしたりもできるので、リマインダーとも言えるでしょう。

なお、これらのリマインダーを活用するとき、広告の目標は「認知」だけではなく連絡先を教えていただく「リード獲得」まで追うことになります。

その他ウェブ広告以外にも、リマインダー的に機能している施策は色々とあると思います。

・水道工事のマグネット
冷蔵庫に貼ってもらえれば、マインドシェアを向上・維持でき、いざ水漏れ時の第一想起になると思います。考えた人はすごい。

・テレビCMで印象深いフレーズを連呼
マインドシェアが維持される出稿量、工夫したメッセージ。(「バイトするならタウンワーク」など)

・小売店の配架率を上げる、棚を確保、ディスプレイを工夫する
店舗を訪れたときにリマインダーとしても機能すると思います。

このようにリマインダーが機能するには、相応のコストや、専門チーム、ノウハウ・スキルが必要になります。

広告は1回きりの出会いと思い、そこで買っていただけるよう設計したい

そういった設計・準備無しに「後から思い出して買ってもらう」を期待することは楽観的すぎるように思います。

例えば、許容CPAの2倍・3倍を許容したり、コンバージョンが付かないのに配信継続した。これは危険です。

そのため、広告に関しては1回きりの出会いと思い、そこで買っていただけるよう設計した方がいいことが多いように思います。

その場合、以下情報も含めて伝えられると良さそうです。
・リンクをクリックして今すぐ購入できること
・今購入した方がいい理由

ウェブ広告は店舗への入り口も兼ねているため、直接の購入を見込んだ管理が適している

ウェブ広告とテレビCMや交通広告などとの違いは、店舗への入り口も兼ねていることです。

広告をクリックすればすぐに購入できます。これは例えば、駅の看板に「どこでもドア」が付いていて、そのまま店舗に行ってショッピングできるようなものです。

そのため、ウェブ広告は消費財メーカーのマーケティングで言う「小売店への配架」や「棚の確保」に近い役割も担うと思います。

例えば「鍵開け」の検索結果画面は、いわば、ウェブ上にある鍵屋さんが集う商店街です。そして、検索連動型広告の1位掲載はその一丁目一番地への出店だと言えます。

そう考えるとウェブ広告は「認知」などマインド上の目的のみではなく、そもそもウェブ上での店舗への入り口を確保し顧客が利用可能にする目的でも大切です。

そのため、ウェブ広告は直接の販売を前提としたCPAで管理した方が適切と思います。

そもそも認知目的ならバナー広告よりもテレビCMの方が優先度は高い

私の観測範囲内の事例にはなりますが、認知目的であればテレビCMの方がウェブ広告よりも効きます。

ウェブ広告でも、YouTubeやInstagram ストーリーズなどのリッチな配信面なら検討の余地があるかもしれません。しかしバナー広告のみで認知拡大は厳しい体感です。

本気で認知拡大を狙うならそもそもウェブ広告が適切なのか?から方針を考え直したいことも多いと思います。

「認知目的」が、ウェブ広告を無理やり出したいがための隠れ蓑になっていないか

よく語られる「認知目的」は、正直なところ、広告を出したいがための言い訳として使われるケースも多いのではないでしょうか。

以下のようなケースです。

・広告を出すことそのものが目的化している
(例)成果は正直出ていないけど予算を減らさず出稿継続したい

・サンクコスト効果(※)に囚われている
(例)制作や準備をすごく頑張ったのにすぐに停止するのはもったいない

(※)サンクコスト効果とは
物事の損切り・撤退判断において、いま撤退しないと今後さらに損失は増える見込みなのに、これまで費したコストやリソースをもったいなく感じ、損切り・撤退ができない心理状態のことを言います。

しかし、前提条件の揃わない安易な「認知効果もあるからOK」は成立しません。

成果がいまいちだった、クリエイティブやLPが噛み合っていない…そういう事実は直視して次のアクションを考えた方がいいと思いました。

終わり。

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