駐在日記: ポーランドの教職員スト
ポーランドでは現在、教職員の賃上げを求めるストライキにより、75%程度の学校が閉鎖されているらしい。
ストライキは昨日月曜から始まり、終わりの見込みは今のところ見えないが、一週間ほど続くかもしれないとのこと。
また卒業試験が4/10から予定されていたが、生徒たちはこのストライキのために試験が受けられるかわからなくなっている。
ポーランドに住むお客さんと話している時に、たまたまこんな話になった。
ストライキ自体はヨーロッパではよくある話だが、学校の教職員のストライキはあまり馴染みがない。
子どもたちは学校がなくなり、早めのイースター休暇がきたと喜んでいるらしいが、共働きの親は堪ったもんではない。
祖父母の家や親戚の家なんかに一週間預けられたりするようだ。
このストライキ、一見教職員たちのただの賃上げかと思ったら、実際にポーランドに住むポーランド人のお客さんに話を聞いてみたら、とても根が深く、思った以上に大変な社会問題であることがわかった。
経済問題は素人だが、教えてもらったことを元に書き残していきたい。
ポーランドは西側をドイツ、チェコに、東側をルーマニアやウクライナと接しており、中欧の一国として挙げられる。
近年では、人件費の安さなどから西欧の車産業や電気機器メーカーなどが工場を移転させている。
また東欧と西欧を結ぶ物流拠点としての役割を果たしている。
西欧諸国とポーランドの関係を簡単に例えるなら、ちょっと前の日本と中国みたいな関係だ。
ポーランドは近年経済発展が目覚ましいが、隣国ドイツと車で行き来できるにもかかわらず、人件費に大きな格差がある。
ちなみにポーランドの平均月収は1000ユーロ(約13万円)程度らしい。ここから税金が引かれると、手取りは800ユーロ(10万円)以下になる。最低賃金は300ユーロ(4万5千円)程度だったと思う。
ちなみにドイツの平均月収は州によっても異なるが大体3000ユーロ程度で、手取りで1800-2000ユーロ程度であるから、ポーランドとの格差は倍以上になる。
しかしながら、EU加盟国であることもあり、ポーランドの物価や生活費はそこまで安くない。
安い賃金と高い物価に加え、EU加盟によって人口の流動性が高まり、若いポーランド人はイギリスやドイツに出稼ぎに出る人が増えているそうだ。
半年ドイツやイギリスで真剣に働けば、ポーランドで家が買える、一年遊んで暮らせるということはよく言われている話らしい。
国内の労働力不足や人口の空洞化は、ウクライナなど更に人件費が安い移民を受け入れることで、今のところ対処しているとのこと。
こんな経済状況の中、現在ストを起こしている教職員の月収はというと、なんと400ユーロ(5万2千円程度)
教員歴20年のベテランでも750ユーロで、月収10万円以下を切る。
教員になるには大学を出て、資格が必要だが、賃金はボランティアレベル。これではストを起こすのも頷ける。
教職員の給与は全て政府の管轄だが、賃上げを受け入れるような動向は今のところ見受けられない。
現政権は子ども手当の支給や法定退職年齢の引き下げ等に財政支出を大幅に増やし、財源不足が指摘されている。議員報酬が高すぎるというニュースも出ているようだが、賃上げしたくても元手がないのが本心だと思いたい。
子どもの教育は国の将来につながる一大事であり、75%ちかくの学校が一斉に閉鎖するのは異常事態だ。
お客さん曰く、ポーランド人は教育を受ける必要がなく、西欧諸国や政府の奴隷になればいいと言われているように感じている。10月に控える選挙で政府が変わればいいが、手当等で恩恵を受けている人たちも多く、なかなか簡単にはいかないだろうとの見方をしている。
この問題は遠いポーランドで起こっていることで済まされず、日本の保育園不足や教職員の長時間労働と似ていて、全く人ごとではない。
お隣の国の事情を聴きながら、日本もどうなっていくのか少し怖くなった午後だった。
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