高度に抽象化

12月18日NHKニュースウォッチ9ガンダム特集文字起こし


桑子真帆アナウンサー(以下、真)「さあ、夢中になったかたも、多いのではないでしょうか。アニメ、行きまーす」

ガンダムがザクを後ろから斬る。次のザクはコクピットだけを貫く。

ナレーション(以下、ナ)1979年に産声をあげた、機動戦士ガンダム。

アムロぶたれ、頬を押さえる。ブライト「殴ってなぜ悪いか!」リュウ戦死後の場面。もみあって地面に転がるアムロとハヤト。フラウ・ボゥ「そんなことしてなんになるの!」


ナ)単なるロボットアニメに止まらないリアルな人間模様なども描かれ、若者を中心に爆発的な人気に。

我先にとエスカレーターをかけ上がる人々の行く先にはガンプラ売り場。1/144ガンダムの箱絵。ガンプラを手に取る人々。作例展示/販売の映像。

ナ)誕生から40年、テレビシリーズ劇場版など合わせ67もの作品を世に送り出し日本が世界に誇るコンテンツとなりました。

インタビュー。「Do you like gundamu?」「Yes very much」
(別の人)「design as very cool」

ナ)ガンダムの生みの親富野由悠季監督。

ケロロ軍曹のカップを傾け、手振りを交えながら喋る富野監督。絵コンテ。


富野「(前略)はっきり言いますけど、ファンタジーじゃない。リアリズムの延長線上のなか。(後略)


ナ)半世紀にわたるアニメ制作時代時代の問題意識を作品に込め、若者たちに奮起を促してきました。


コンテチェックをする富野監督。目を閉じて上を向く。「んー」首筋を掻く。

ナ)78歳となった今も、制作現場に立ち続ける富野さん。その思いに迫ります。

映像、スタジオへ。

ナ)誕生から40年を迎えたガンダム。その生みの親が、こちら富野由悠季さんです。若者たちにとって、未来を考えるきっかけになってほしい。ガンダムに込めた思いを聞いてきました。

サンライズ社内。クリスマス風に飾り付けされたシャアザクやガンダム。作業するスタッフ。富野監督、派手なシャツにキャップ(Gのレコンギスタ)。デスクに資料「G-Ⅱ エンディングに向けて」奥に別の「Gのレコンギスタ」資料。

ナ)都内にある富野さんの仕事場アニメ制作スタジオサンライズです。

スタッフの作業風景、ハロ、流れて富野監督のデスクへ。富野監督「仕事場ならここです。ホント掛け値無しに」有馬嘉男アナウンサー(以下、有)、卓上の資料を指差し「あれ?秘密ですか」


富野由悠季監督(以下、富野)「いや、ここれはね、いま、うん、これねこれの2本目の(聞き取れず)、コンテをなんとしても作らなくちゃいけないってその、曲に合わせて(ナレーション:ここで、ガンダムは生まれました。)それが今スケジュール(後略)」


ナ)ガンダムの登場は1979年。

ガンダム本編からの映像。スペースコロニー外観。
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀。アムロアップからガンダム発進。「アムロ、行きます!」
シャア「見せてもらおうか連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」

ナ)宇宙に進出した人類が、地球を巡って争う未来の戦争を描きました。

ビームライフルを手に迫るガンダム、ライフルを撃つ。ガンダムのパンチを避けるシャアザク。手前から奥へシャアのゲルググとエルメス。切りかかるガンダム、ゲルググはナギナタの柄で受け切り返す。ガンダム下に避けバルカン、避けるゲルググ、遠くにエルメス、迫るコアブースターをゲルググ避け、4分割。
宇宙開発プロジェクトのスタッフと共に腕を上げ皆で「行きまーす」。説明する技術者。


ナ)当時の最先端の科学技術をもとに描かれた、リアルな世界。ガンダムは若者の心を掴み、その後、宇宙開発など科学の道を志す人を産み出しました。ところが富野さん、宇宙への関心を植え付けただけでは満足していませんでした。

富野世界展ポスター、対面インタビュー。中央にGのレコンギスタ映画ポスター。背後棚にガンプラやDVDなど。

有)40代から50代にかけて、その、テクノロジーとか、宇宙とか、そのーその最前線で働いてる、その皆さんの中に、ガンダムファンが多いじゃないですか。でガンダムにインスパイアされて、その、宇宙に、あるいはその飛行機に、あるいはその、科学にって人がこれだけたくさんいる。

富野「ホントに多いってことが分かった。それは分かって、まあ嬉しいんですよ。嬉しいんですが……この数年はちょっと絶望もしてます。宇宙進出しても人類は救われない。だって夢の世界でしかない。だから彼らに思ってるのは地球を長持ちさせるための所に行きなさいよ」

目を瞑って手振りをしながらコンテ切る監督。

ナ)宇宙をテーマにしながら、富野さんが伝えようとしたのは地球の未来でした。

打ち合わせ風景の映像。

ナ)その後も人類が抱える問題をリアルに描いてきた富野さん。根底にあるのは地球の資源は有限であるという思いです。この先長く地球で暮らすためにはどうすればいいのか。答えを託すのはガンダム世代の大人ではなく若者たちだと考えています。

富野「地球を永遠に使えるって言うくらいに、極端な言葉を使うんですけれども永遠に使えるぐらいの気構えでやってくってのは宇宙開発をして、火星に行って人類を移民させるなんて言うよりももっと厳しい仕事なんですよ。大人たちは全部すでに、もう30年40年50年の人生を抱えているからそこには考えたくないってそれだけの話です」


有)大人はなかなか変わることが出来ない、大人に革新を求めることは難しいと、分かったと。だから子供なんだということ」

富野「です」


有)子供にはその可能性はありますか。子供は地球を持続可能に使うことができる

富野「と、思えるようになったのは今回のグレタさんの発言以後のところで、若い人たちがああいう風に動き始めれば」


声をあげる子どもたちの映像からグレタ·トゥーンベリさんへ。

ナ)富野さんが口にしたのは、地球温暖化対策を訴えるスウェーデンの16歳グレタ·トゥーンベリさん。人類が直面する問題を解決するのは、こうした若者たちだと言います。

映像、インタビューに戻る。

富野「この解答は君たちに任せるから、なんとか頼むから、君たちそれからもう一つその次の代くらいまでこの40~50年の間に、出来たら解きほぐしの作業に入ってもらえないか」


有)いや、その、僕も含めてですけれども、その想像力が足りなすぎると。自分の生きてるその時間軸、あるいはせめて息子の娘の時間軸までは考えるけれども、その先のことには想像力が無さすぎるってこういうことですか

富野「簡単に言っちゃえばそういうことですね。絶対大人には出来ないってことがわかった。だからそれを子供に託すしかないっていう回路になった」


Gのレコンギスタ。コクピットのベリル「3方向同時、(手を翳し)スコード!」光が広がり、敵の武器が溶ける。Gセルフ、サーベルを抜き相手の銃を切る。迫るミサイルを切るGセルフ。軌道エレベーター。


ナ)富野さんが今取り組んでいるのが、Gのレコンギスタです。舞台は、初代ガンダムから数千年先の未来。新たなエネルギーを宇宙に求め、それを地球に運ぶエレベーターを描いています。環境問題などを訴える作品です。

映像、インタビューに戻る

有)今、新しいガンダムで、どんな子どもたちに見てもらいたいのか。子供達にどんな刺激を与えたいと思っているのか。


富野「もうおじさんたち本当に申し訳ないって。解決策が無いからね。考えてよていうのが、あの、Gレコって作品なんだってさ、で、それでいいんですよ。本当にそれを願っています。我々には手におえないんだよね、それでこんにちまでの科学技術と文明論が限界だったことがわかるから。だけどホントその解決策を手に入れられないから、とりあえずこの作品を見てる間くらい楽しんで見てくれ。だけどさ、見終わったらちょっと考えてくれない?っていうのが僕にとってのGのレコンギスタです。」


着色された画像をモニタでチェックする監督。

ナ)若者に未来を託そうと作品を作り続けてきた富野さん。78歳になった今も熱い製作意欲は変わりません。

映像。インタビューに戻る

有)次はどんな作品を作るんですか?

富野「それは極秘ですが、1本はシナリオちゃんとあります。で、それがなんかちっとも作るところに行かないんで今もう一本目を考えて始めてて(腿を叩きながら)」

有)おお、すごいですね

富野「(大笑いしながら)やりたいんだもん、死ぬまで。それこそ」


映像スタジオに戻る。

桑「(手振りを真似しながら)エネルギーがこうあふれでてるっていうのがよくわかりました。あの私ガンダムの初心者でもこんなにその現実社会との親和性が高いんだって驚きました」

有「それが富野さんの世界ですよねー」

桑「そうですね」

有「あのーアニメだからこそ、複雑でわかりにくい専門的な科学の話も、シンプルに、分かりやすく伝えることができるはずだと、こう話していました。あの富野さんに、大人は変わらないから大人たちはもう変えられないからっていう話はね、ちょっと反論もしたくなったんですけどあのノーベル賞のあきらさんのエピソードを僕思い出したんですよね。ファラデーの本に刺激されたって話ありますよね」

桑「蝋燭の科学、はい」

有「蝋燭の科学なんですよ。その、ガンダムを見た若者たちも、その蝋燭の科学を見たように、地球の未来のために立ち上がって欲しいな、とこう思いました」




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