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取材de旅行記:広島編

ライター業の最大の魅力は、他人の金でいろんなところに行けること。運が良ければ泊りがけで地方にだって行ける。僕もこれまで取材で北海道から沖縄まで全国いろんなところに行かせてもらった。2週連続で那覇に行ったこともあるし、札幌の翌週に沖縄に行ったこともある。山形から帰ってきた翌日に松山へ飛んだことも。

オンライン取材が広まり、地方取材の機会が減りそうだけど、今までに取材で旅行した話をシリーズでまとめてみたい。おそらくほとんど食べ物の話になる。食いしん坊だからね。

原爆ドームの思い出からスタート

「取材de旅行記」の記念すべき第1回は「広島」にしようと思う。2019年3月、僕は中学校の修学旅行以来、約30年ぶりに広島の地に降り立った。

久しぶりに訪れた広島は楽しかった。原爆ドームってあんなに近くで見られるの知らなかった。修学旅行でも当然、原爆ドームを見学したが、何も覚えていない。炎天下で待たされたせいで、生徒がバタバタ倒れているのを不思議な感覚で見ていたのだけ記憶している。死んだ人のために生きている人が悲惨な目にあっているのが滑稽だった。

今はだいぶ緩和されたが、あの頃の学校はひどかった。不条理を絵に描いたような場所だった。特に僕が通っていた中学校は、当時生徒数日本一で45人クラスが1学年に16組もあった。だからなのか、教師による管理がすさまじかった。構内で起こったある事件の容疑者に仕立て上げられて、「生徒指導室」と呼ばれる部屋に丸一日軟禁され、自白を強要されたこともある。教師が警察の役割を担うのは教育というのか、はなはだ疑問だった。

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食いしん坊が堪能した広島の味

暗黒の中学時代の話はさておき、30年ぶりの広島を満喫した。食いしん坊な僕としては「旅行=食べ歩き」だ。美味しいものを食べたい気持ちもあるが、それよりもその土地でしか食べられないものを食べたいと思っている。いくらおいしいからといって、広島まで行ってフレンチなんて食べたくもない。チェーン店も同じく。北海道で「サイゼリア」に行かないだろう。旅費を有効に使いたいからね。

余談だけど、一緒に同人誌を作っている臼井総理が、昔、長崎に取材旅行に行った際、同行の編集者が食べ物にこだわりのない人だったようで、リンガーハットに入ってちゃんぽんを食べたという笑い話がめっちゃお気に入り。食べ物にこだわりのない人って、僕からすれば宇宙人なんだよね。

広島の名物料理を知らなかったので、広島でしか食べられないものをグーグル先生に相談した。広島焼きは本場で味わっておかなければいけないとして、グーグル先生と出した結論が「あなご」。宮島の「あなご飯」を食べたかったが、取材当日に原稿を書いて納品しなければならないタイトなスケジュールで、取材後にホテルで缶詰め状態で原稿を書き終わったのが、午後8時だった。居酒屋ぐらいしか空いていないからと「あなごの刺身」を食べられる店を探した。

あなごの刺身は生まれて初めて食べた。淡白な味で美味しかった。そのほかに白焼きも食べた。ご飯を食べながら、さらにグーグル先生に相談したところ、ホテル近くの広島焼きの店が何件か深夜まで営業しているとのことで、そうそうに切り上げて広島焼きの店に向かった。

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広島焼きの概念を一新してくれた「ふみちゃん」

何軒か巡って一番美味しそうなオーラを放っていた「ふみちゃん」という店に入った。広島焼きという食べ物を誤解していた。あれは大阪の「お好み焼き」とは別の食べ物だ。広島と大阪で「お好み焼き論争」を繰り広げているから似たような食べ物かと思っていたが「お好み焼き」の名称を巡って戦っているだけなんだね。広島焼き(僕は大阪人だから断固としてこの名称を使う)は、具沢山の野菜炒めみたいなものだね。お好み焼きのように粉物ではない。ふみちゃんの広島焼きは、めちゃくちゃ美味しかった。後で知ったけど、普段は行列のできる店でけっこう待たされるらしい。すんなり入れたのはラッキーだったのかも。

ふみちゃんの広島焼きは、味もさることながら、目の前の鉄板で焼いてくれるスタッフの手際の良さが見ていて楽しかった。店全体がに活気があって、雰囲気だけでも美味しい。ご飯を食べるのに、店の雰囲気は大切だね。

広島焼きは、帰京する新幹線に乗る前に広島駅でも食べた。ふみちゃんの広島焼きが美味しすぎて、このまま広島を離れたくなかったからだ。だが、残念ながら、ekie(エキエ)にあった「麗ちゃん」という店は、僕の好みではなかった。ここも人気の店でかなりの老舗らしいけど、ふみちゃんの感動を越えられなかった。あのレベルの味なら、東京でも食べられるんじゃないかなと思っている。

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駆け足で巡った広島市内観光

翌日は一日、自由行動。仕事をせず、広島観光を満喫することに決めていた。そのためにスケジュールを開けておいた。

最初に訪れたのは「原爆ドーム」。周囲をぐるっと一周回って、いろんな角度の原爆ドームを見ることができた。その昔、テレビで誰かが「パリ観光で最も感動したのはミロのヴィーナスを背後から見たとき」といっていたんだけど、正面からの絵って写真や映像で見る機会があるけど、わざわざ後ろからは撮らないもんね。僕も札幌の時計台の裏側を見たときに「札幌に来た」と感じたもんね。広島でも原爆ドームを異なるアングルで見て「おお、広島っぽい!」と感動した。

原爆ドームの次は広島城を訪問。歩いて行ける距離だったから徒歩で向かったが、広島の道路って車道と歩道が完全に分離させてあって、市内中心部の道路は横断歩道が少ない。地下道路で対岸に渡るようになっていたのに感心した。戦後、計画的に街づくりが進められたんだろうなと推測した。

広島城の近くに「旧広島市民球場跡地」があった。2009年3月31日まで広島東洋カープが本拠地として用いていた野球場があった場所なんだけど、今はただの空き地なんだけど、外野スタンドの一部が残っているのが、なかなか感動した。小学生のころは野球少年だったからね。

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マニアックな名物料理「ホルモン天ぷら」を食べに!

東京へ帰る前にどうしても訪ねたい場所があった。グーグル先生が教えてくれた「ホルモン天ぷら」が食べられる広島市西区だ。ホルモン天ぷらは、広島市西区の一部エリアに密集しているマニアックな名物料理。広島電鉄の路面電車で「観音町」という停留所までいき、そこから10分ぐらい歩く。ガチで住宅地。観光スポットなんて皆無。そんな場所に「ホルモン天ぷら」を食べさせる店が10店以上あるのだ。「現代のミステリー」レベルの話だ。

僕が行った「福本食堂」は、とりわけ有名な店でメディアでも取り上げられることがあるとか。センマイ(牛の第三胃袋)、チギモ(牛のレバー)、ハチノス(牛の第二胃袋)、ビチ(牛の第四胃袋)、白肉(牛の第一胃袋)の5種類のホルモン天ぷらが楽しめる

だが、近所の常連客しかこない店のようで、店に入った瞬間アウェイの空気が。カウンターには、ホルモン天ぷらが山盛りになっているが、注文の仕方がわからない。キョドっていたら、店のお姉さんが「初めて?」と声をかけてくれ、一通り説明してくれた。山盛りの「ホルモン天ぷら」から好きな部位を取って、まな板の上で自分で切るんだ。お姉さんに頼んで全種類とってもらった。

ホルモン好きの人は絶対に行った方がいい。全身でホルモンを堪能できる。逆にホルモンが苦手な人は絶対に行ってはいけない。たぶん店内の臭いに耐えられないと思う。

ホルモン天ぷらよりも、僕は「でんがくうどん」に感動した。ホルモンを塩ベースのスープで煮込んだでんがくにうどんを入れたもの。麺が柔らかいのが残念だったけど、ホルモンの旨味が出た出汁はめちゃくちゃ美味しかった。お姉さんはホルモンを煮たときにできる塩をお土産にくれた。ホルモン天ぷらにつけて食べるんだけど、これがまた絶品。豚のホルモンなどをカリカリになるまで揚げて塩で味付けした「せんじがら」も買って帰り、家で「ホルモンうどん」を作ったけど、もう最高。ホルモン天ぷらは、また絶対に食べに行きたい料理の一つなのだ!

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