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17.運命共同体は最強パワー‼︎

術後ということもあって、介護用タクシーで栃木から福島の病院へ向かった。そこは先進医療でも珍しい陽子線の治療が受けられる病院だった。陽子線治療は放射線治療のように陽子線を照射する治療だ。

病院へ到着するとまず、私の体の型をとった。治療台に乗っているときに、体が動かないように固定するためのものらしい。患部にピンポイントで照射するので動いては元も子もないからだ。

ここでもし動いたら変な型になって…違うところに照射されちゃって…そうしたら…別な所がダメになっちゃって…それは大変‼︎と勝手に想像は膨らむ。全身に力を入れてジーーーっと頑張った。

そんなに頑張らなくてもただじっとしていれば良いのだろうが、緊張して変な汗をかいた。

無事に型取りが終わり病室へ通されると個室になっていた。荷物を片づけて一息つきラウンジへ行くと数人の患者さんがいた。話をすると東京、青森、京都、群馬…と各地から来ていた。病名も皆さんそれぞれのガンなので、その点は気兼ねなく話せた。むしろお互い同じ境遇ということもあってか、運命共同体のような一体感さえ感じた。

東京から来ていた女性は「私なんて恥ずかしいけど3つも臓器がないのよ。ハハハ!」と笑って退ける。また、京都からの女性は「彼が京都で待ってくれているの。」と話してくれた。またもう一人の女性は「息子が小学生だから頑張らないとね!」などとそれぞれの人生を垣間見せてくれた。

もちろんみんないろいろな思いを抱えているのだろうが、つらい思いを微塵も見せず、ガン患者の集まりとは思えない明るさだった。

治療は週3日の一回20分程度なので結構な暇人集団。時間があるとほぼラウンジで話し込んでいた。治療時間になると「行ってきまーす!」なんて感じだ。お茶が出る機械が用意されていたので、いつもお茶菓子を持ち寄っては井戸端会議だ。

女性が数人集まったときのおばちゃんパワーは凄い‼︎
独身のドクターを捕まえては

「彼女はいるの?」
「どんな子がいいの?」
「そんなだと結婚できないよ! 」

と身辺調査だ!
場所が場所ならコンプライアンスがどうとか問題になりそうが、そこは患者なのをいいことに、結構なセクハラ⁉︎ ううんパワハラ⁉︎をまき散らしていた。

そんなこんなで人生相談の押し売りをしながらも、楽しい⁇時間が2ヶ月続くことになった。でもこの時間のおかげで落ち込んでいる暇もなく過ごすことができた。


18話目へ続く…


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