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On my way〜ひみつの花園〜


日々 たんたんと 楽園をつくりあげたひとたちがいる。

毎日 毎日 すこしずつ すこしずつ

種をまき 苗をうえ 新芽を愛で 木をはげまし

ながい ながい 歳月をかけて。

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あるところに、とても素敵なお庭がありました。
そのお庭は そんなにおおきくありません。
たんぼ2枚分くらいの広さでしょうか。柿畑に囲まれたしずかな場所にひっそりとありました。

外から見えるのは木々の垣根と裏門の南京錠のかかった大きな扉。そのなかに素敵な庭が息づいているだなんて、外からは全く想像がつきません。四方をぐるりと取り囲んだ木々たちは、まるでやさしくその空間を守っているかのようです。

裏門の大きな南京錠がかかった扉をキィーっと押し開くと、おとぎ話に出てくるようなちいさな森と花園が目の前にあらわれます。たんぼ2枚の空間に、たっぷりと勾配差がつけられ、けもの道が縦横にはりめぐらされています。

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あぁ、今日はどの道を行こう ?
このちいさな丘の向こうには何があるんだろう ?
あの角にあるちいさな赤いお花はなんだろう?

何度訪れても、どの季節に訪れても、わくわくする美しい空間。

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春。

すべての地面を埋め尽くすのが、スイセン、チューリップ、ムスカリ、スノードロップ、リュウキンカ、バイモ、、、たくさんの種類のお花たち。かぐわしい香りと彩りに、どの一歩も胸が高鳴ります。

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びわ、ゆず、みかん、すだち、、、たくさんの果樹も無農薬で育てられ、季節の実りをたっぷりと もたらしてくれます。


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柑橘類や柿はとくに、果実がたくさん実るようになるまで、何年もかかります。ゆっくりと時間をかけて育まれたひとつひとつの果樹に、たくさんの愛を感じます。

彼岸のころ、庭のあちこちで顔を出すのは曼珠沙華。その赤や白の可愛いお花は、どの曲がり角で出逢っても楽しい驚きがあります。西側のちいさな森のような雰囲気の斜面では、白の曼珠沙華が群生し、息をのむ美しさが広がっています。

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垣根の東西には、たっぷりと配置された金木犀たち。東風も西風も甘い香りをお庭のなかへ運んできます。

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たくさんの大きな木に囲まれながらも、まんなかにはたっぷりと ひらけた空間が広がります。立派な藤棚の下にはテーブルと椅子があり、そこに座るとまるで植物たちがふわりと抱きしめてくれるような、深い安らぎを感じます。

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そこから先のおひさまがよくあたる場所にちいさな畑と花壇があり、四季折々の香りと色を放ちます。

畑と花壇の奥には、モッコウバラのアーチ。夏のはじめに次々と甘いお花をほころばせ、アーチをくぐるたびに満足の吐息がこぼれます。アーチにつづくちいさな階段をおりると、元修道院の建物の入り口に導かれます。

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この美しい庭は、修道女たちが長い年月をかけて創ってきた場所でした。

元修道院の正門には、そびえたつ立派なモミジバフウ。大きなお星さまのような葉っぱをたくさん茂らせ、秋には 赤や黄のお星さまが はらはら はらはら 地面を彩ります。


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数種類の桜やモミジ、どんぐりのなる木々が点在し、少しずつ違う形の葉っぱやお花、その実にうっとりわくわく胸が高鳴ります。庭の東側には10メートルを越える大きな大きなユーカリの木もそびえ立ち、大きな木々の合間にはたくさんの種類の低木樹が季節の彩りを加えながら息づいています。

ほんとうにたくさんの、わくわくする種類の木たち。なかでもわたしのこころを掴んで離さないのが、大好きな椿たち。

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実にさまざまな種類と色の椿たちが、庭のなかに点在し、そのつやつやの葉っぱたちは1年中、ひかりをたっぷりと すくっています。

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一見、すべてが無造作に配置されているようにも見えますが、毎度足を運ぶたびに、そのひとつひとつの配置の的確さと全体の調和に深い感動をおぼえるのです。

小道は気持ちよく苔むしていて、虫たちの住むちいさな穴があちらこちらに。1年を通して、虫たちが季節の歌を奏でています。

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鳥たちもたくさん飛び交い憩う天国のような庭。修道女のみなさんが愛をこめて、ひとつひとつ、長い時間をかけて創ってきたその営みを、そこかしこで感じるのです。

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ジャスミンのような香りを放っていたお花が、日陰できもちよさそうに咲きほこっていました。「ジンジャーリリー」という名前のお花だそうです。楽水さんがコメント欄でおしえてくださいました😊。


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その天国のようなお庭の外には柿畑がずらりと広がり、楽園の一部を成しています。その柿畑も修道女のみなさんの手で大切に育てられていました。そして広大な柿畑を取り囲むのは、わたしの背丈を越えるローズマリーと山茶花たちで彩られた小道。

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この天国のようなお庭と柿畑は今、少しずつ荒廃し、まもなく閉じられようとしています。

長い年月をかけて育てられてきた柿畑は人手にわたりました。

昨年のある日、たくさんの柿の木たちは、一斉に根元からすべて切られ、更地になりました。

失われるのはあっという間。そのあまりの速さに、こころが追いつかなくて、ただ季節と涙だけが静かに流れていきます。

木はだまって、枯れていきました。

その隣では、すでに地面は固められ、太陽光パネルがずらりとならびました。ユーカリの大きな木も倒れ、モッコウバラのアーチもくずれました。水脈が滞ってきているのでしょう。

台風の最後のひとおしで、何十年もかけて育った木たちが いとも簡単に倒れてしまうのです。


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完全にこの場所が閉じられる前に、最後にゆっくりとお庭をあるいてきました。シオンさんが美しい紫色を空に放ち、風にゆれていました。カナブンたちが秋のきらめきのなか、花粉のベッドでお昼寝をしています。


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クロアゲハの幼虫も おひさまの光を浴びながら、すだちの葉っぱをたべていました。ここはたくさんの蝶も舞うお庭。なかでもとくにクロアゲハがたくさん飛んでいます。農薬にとても弱い青虫たち。無農薬の柑橘類があるお庭はとても貴重です。

そのすだちの木の下では、八重のシュウメイギクたちが蕾をぷっくりとふくらませていました。

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可愛い蕾たちが風に揺れるなか、一輪だけお花が咲いていました。


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大好きな椿たちも今、たくさんの蕾をつけていますが、このお花たちを愛でることができないのがほんとうに残念でたまりません。

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こころにたっぷりその美しさを焼きつけて、この地に天国のような楽園を創った修道女のみなさんに想いを馳せます。

いくつか種もひろい、真っ白な画用紙に庭をスケッチしていきました。

わたしもいつかこの庭みたいなすてきな空間をつくりたい。

そんな願いと、こんな素敵な庭と出逢えたことへのありがとうのきもちをこめて。


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秋の陽気にさそわれて、桜の花がちらほらとほころび微笑んでいました。

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ありがとう。

あなたの愛をありがとう。