ゆすらうめ〜きみの笑顔がお花にとけて〜
2023年3月20日。
いただいた種から育てていた「ゆすらうめ」が、生まれて初めてのお花を咲かせました。
ゆすらうめの種を贈ってくださったのは美月さん(仮名)。
彼女と出逢ったのは4年ほど前、わたしがまだ信州で働いていたころでした。美月さんが来園されたとき、
「あれ? どこかでお逢いしたかな、、、」
なんとなくお顔と雰囲気が気になって来園カードをよくみると、「香川」の表記が。そのとき、ちいさな島でのヨガ教室の光景がパッと頭に浮かびました。冬休みに香川へ戻ったとき、ちいさな島で開催したヨガ教室に美月さんも参加してくれていたことを思い出したのです。
そのちいさな島で開催したヨガ教室は、美月さんの親友、かおりさん(仮名)が主催してくださったもの。
かおりさんもまた、わたしの働いていた施設にひとりで来てくださり、そこでお逢いしました。香川から来てくれたというだけで親しみがわき、かおりさんのおだやかで優しい雰囲気と笑顔にひきつけられ、あっという間にわたしたちは友だちになったのです。
かおりさんはその頃、末期がんの治療中でした。
体調は厳しい状態でしたが、信州に来られたとき、彼女はよく歩いていました。わたしもまた、森を歩くのが大好きだったので、いろいろな森の散歩コースを案内し、いっしょに森の新鮮な空気をめいっぱい吸いこみ、せせらぎや鳥の歌声に耳をすませました。
ちょうどかおりさんが来園されていたとき、癌で闘病中の方や、癌の方やその家族をサポートする活動を長年行なっている方もたまたま来園されていました。彼らはあっという間に仲良くなり、たのしそうにおしゃべりしたり、情報交換したり、ひだまりのなかでご飯をいっしょに食べたり、、、それはまるで申し合わせたかのようなめぐりあわせで、かおりさんたちの笑顔を見かけるたび、こちらまであたたかなきもちに満たされました。
そして、まるで引き寄せられるようにやってきたそれぞれが、お互いに勇気をもらい、感謝と喜びにあふれて、また自分の生活する場所へもどっていく。人生のなかの出逢いってほんとうに不思議で美しいなと感じます。
かおりさんと私も連絡先を交換し、その年の冬、かおりさんはわたしを招いてくださいました。おだやかな海をながめながらヨガ教室を開催して、ちいさな島をいっしょに歩き、美味しいごはんを食べ、かおりさんのお庭でおしゃべりをたのしみました。かおりさんの優しい笑顔と青い海のきらめきが今でも心のなかにのこっています。
かおりさんは港から元気に手を振ってわたしを見送ってくださいました。そしてそれが、かおりさんとの最期の思い出になりました。
その約1ヶ月後、春のはじめにかおりさんは亡くなりました。
かおりさんは親友だった美月さんに、信州で過ごした素晴らしい時間のこと、そこでめぐりあったひとたちのことをよく語っていたそうです。
美月さんはかおりさんが亡くなったその年、かおりさんが最期にもう一度行きたがっていた信州にひとりでやってこられました。そしてなんと、かおりさんが療養中に来園していたときに仲良くなっていた方もたまたま再来園されていたのです。その方はかおりさんと連絡をずっと取り合っていたそうで彼女が亡くなったことも知っており、かおりさんをしのぶために来園されていました。その方と美月さんは再び、奇跡的な巡りあわせでそこで出逢い、ともにかおりさんをしのびながら時間を過ごされていました。
そしてわたしもまた、かおりさんと歩いた森を、今度は美月さんといっしょに歩き、せせらぎの音を聴いて、いっしょに時間を過ごしました。言葉にならないいろんなきもちも、おおきな森はやさしく包みこんで、わたしは今でもその時間をなつかしく愛おしいきもちでおもいおこします。
そのころ、わたしはちいさな庭をつくりはじめていたのですが、種からいろいろな植物を育てるのに夢中になっていました(今もそうですが。笑)。美月さんは香川にもどったあと、手づくりの美味しいお菓子やパンといっしょに、美月さんのお庭の「ゆすらうめ」の種も贈ってくださったのです。
素敵なご縁でやってきた「ゆすらうめ」さん。
種をまいて10ヶ月後、ゆすらうめは芽吹いてくれました。
それからゆっくり、ゆすらうめは育っていきました。毎年、葉っぱだけでしたが、種をまいてから4年目のこの春、初めてのお花を咲かせてくれました。
うれしすぎて、昨日はたくさん写真をとりました😂📸
ひとつのいのちが運んできてくれた不思議な出逢いとめぐりあわせ。
ゆすらうめのお花のなかに、たくさんのやさしいいのちを感じます。
かおりさんも美月さんも、大好きな森のみんなもそこにいます。
【おまけ】
新入りの可愛い子ちゃんたち♡