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ソフトボールに恩返しをー上野由岐子   日文5年 <感謝の心>道徳教材研究100の5


上野由岐子選手をご存知ですか?

2020年東京オリンピックで
金メダルを取った米国戦の最終回に登板した選手。

上野由岐子のいる日本ソフトボールチームは、2008年の北京オリンピックでも金メダルを獲得。

しかし、その後、ソフトボールは12年間、正式競技から外れた。

燃え尽き、目標を見失った上野さん。

その時、宇津木監督は上野さんに「ソフトボールに恩返しをしなさい。」と言った。

上野さんは、自分のこれまでのことを振り返った。

父や母の応援、仲間の励まし、スタッフとの関わり…を振り返り、
これまで以上に自分の経験を後輩や外に広めていこうと決意したのだ。

そして、東京オリンピックの追加種目になったソフトボールでは、上野選手の心を受け継いだ、若い選手たちが大活躍をした・・・という話です。

さて、教材から思うこと。

心を燃やした後に襲ってくる、虚無。
以前は、できたのにできなくなってくる自分。衰え、ピークを過ぎた感覚。

私は、日本一、なんて大それたことはしていないけれど、その気持ち、分かります。
気づいたら、ベテランになっていた教員としての今の私。
今、何ができるのかという気持ち。


監督の「ソフトボールに恩返ししなさい」と言う言葉。
「感謝しなさい」ではありません。

上野さんに「未来ですべきこと」という視点を与えているのです。
しかし、その言葉によって、上野さんは自分の「過去」をさかのぼり始めます。


父が、練習道具を作ってくれ、練習に付き合ってくれた。母は、遠い道のりを送ってくれ、ぐちを聞いてくれた。チームメイトが、笑顔で支えてくれたこと。社会人チームに行けば、用具係さん、宣伝スタッフ、バスの運転手、球場の応援してくれた観客がいたこと。

全てがつながって、今の上野さんがあることに気づいた時、「自分は、その人たちに十分感謝しただろうか」という気持ちがわき上がったのです。
そして、後輩を育てる活動に打ち込むのでした。

でも、感謝とは、普通は「された人にお返しするもの」ですよね。

どういうことでしょう?

「恩送り」という言葉、知っていますか?

自分が過去に先輩からされた嬉しかったことを、これからの若い人にしていくことです。

私も、思い出します。

教員していて、子供が小さかった時、「お母さん大変なんだから、遠慮なく、帰ってね。」と先輩教員に言われてホッとしたこと。失敗した時も、「私もそういうことあったよ。大丈夫。」と言われて、励まされたこと。

上野さんは、後輩たちに、自分の技術や経験を伝えていくことが、宇津木監督のいう「恩返し」であり、「感謝の形」だと気付いたのです。

未来へつなぐ、感謝。上野さんを支えた周囲にとっても、この上ない喜びになっているのではないでしょうか。

私も、微力ですが、未来に向かって教育のかけらをつなげていけたらいいなあ、と思いました。

さて、授業での発問は以下のようなものを考えました。もちろん反応や深まりによって変えます。全てを発問するわけでもありません。子供の方から問いが生まれることもあります。

○上野さんを支えた人は誰?それぞれがどう支えたの?

○周りの人の支え、上野さんの何につながっているの?(思い、技術、全日本など)

○宇津木監督は、ソフトボールに「感謝」じゃなくて「恩返し」と言った理由は?

○上野さんは支えてくれた人にだけ、感謝すればよかったんじゃないの?

○感謝の形は「ありがとう」というだけなのかな?

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