![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145473223/rectangle_large_type_2_723f02c51e0ad22c3510bec1d0284441.jpeg?width=800)
難病を抱えるラッパー・T-STONE アンダーグラウンドからメジャーへ── 【1/3】
「ヒップホップじゃないって言われてもいい」
昨年末、六本木のイベントで初めて観たライブは圧巻だった。レジェンドや現役第一線級のラッパーがそろう中、彼ひとりパンクロッカーのような存在感を放っていた。
T-STONE。ヒップホップシーンではすでに知られた存在である。2019年、TiKTokで楽曲「Let's Get Eat」がブレイクし、日本1位を獲得。YouTubeでも500万回再生を記録し、ネットには「極楽浄土、神様どうも」と曲にのせた若者たちのダンス動画が溢れている。
「気づけばビルボートチャートに入っててビビりましたね。でも本音言うと、バズった時はけっこう『別に俺TikTokとか興味ないし』って斜めな感じやったんですよ。でも今は全然モードがちがう。ヒップホップじゃないって言われてもいい。このタトゥーまみれの姿でメジャーに行って『Mステ』でライブしたいんですよ」
![](https://assets.st-note.com/img/1719569056425-ArXW8rGB6O.jpg?width=800)
父と揺られた"ワゴンR”で
1998年、徳島県徳島市に生まれた。生まれた時から父の姿はなく母子家庭で育った。朝から晩まで美容室で働いていた母から、父のことは「遠い所に出張に行っとうよ」と聞かされてきた。たしかに数年に一度、父が「出張」から帰ってくることがあった。
「決まってドライブ連れてってくれるんですよ。オトン、ごっつファンキーなんですよ。爆音鳴らしたワゴンRを走らすことに美学を感じてる人で、僕も幼心に『これがカッコええねや……!』って。その曲がZeebraさんの『BASED ON A TRUE STORY』って気づいたのが小4の時。ヒップホップとの出会いですね」
父親はレゲエも聞かせてくれた。すぐ好きになった。でも自分がやるんならヒップホップだと思った。本格的にラップを始めたのはそれから6年後、T-STONEはもう高校生になっていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1719557484338-lYQmTkzR31.jpg?width=800)
「ラグビーで全国目指して入った高校だったんやけど、怪我で1年間出れんくなってしまったんです。それでも合宿や遠征にはついて行くやないですか。宿で夜『フリースタイルってのがあるんや』ってYouTubeをみんなに見せて、韻のことも自分なりに感覚で伝えたりして、友達と始めたのが最初かな。でも中学時代も友達の家でZeebraさんのインストゥルメンタルをかけながら、その時の気持ちをラップして動画に撮ってもらってたりしました。今考えたら本心ではずっとラップしたかったんですよね」
ラグビー部を退部し、高校も辞めた。細腕ひとつで育ててくれた母親のために、高校だけは卒業しようと定時制に編入した。学校が終わった放課後、夜な夜な足が向く場所があった。
「ネットで調べて、徳島駅でやってるサイファーに参加してみたんですよ。はじめは初めましてやし、緊張したし、『みんなすげー上手いな……』って気圧されました。社会人や大学生とか年上ばっかりやし、あとアンダーグラウンドで活動してるラッパーの人もいて、その先輩たちに初めてクラブとかも連れてってもらって。 それまではクラブってもんがあまりイメージできてなかったんです。実家は市内ではあるけど、繁華街まではチャリで30~40分かかるド田舎やったから」
初めて体験する夜の世界はあやうく、誘惑と魅力に満ちていた。路上で夢中でサイファーをし、クラブのステージで荒削りなラップを歌った。先輩から宅録レコーディングのやり方を教わり、デモテープを刷って配った。ラグビーの夢を諦め、ぽっかり空いていた心の穴を音楽は埋めてくれた。
▼2024年7月2日リリース
3rd EP『藍(アイ)』/T-STONE
![](https://assets.st-note.com/img/1719811508400-3tYyVPWdsp.jpg?width=800)
《収録曲》
M-1.向日葵/Lyric:T-STONE 、Track : ill rain
M-2.メトロ/Lyric:T-STONE,G:nt、Track : NEWLY
M-3.白鷺/Lyric:T-STONE,G:nt
![](https://assets.st-note.com/img/1719571655020-QjjGQdUeYR.jpg?width=800)
1999年、徳島県うまれ。小学5年生で1型糖尿病を発病、中学2年生で父と死別。高校生から本格的に活動を始め、MCバトルコンテスト「UMB 2017~2019」徳島大会で3年連続優勝。20歳で「フリースタイルダンジョン」に出場したことにより知名度は全国区へ。今夏、全曲にギターを取り入れた意欲作の3rd EP『藍』を発表、全3曲収録。
SNS▶Instagram/X/YouTube
取材協力=葛西 彫しの
↓掲載雑誌
【著者プロフィール】
鈴木ユーリ(すずき・ゆーり)
ライター。代表作『ヤカラブ』。『実話ナックルズ』誌上の連載『ゲトーの国からこんにちは』を収録した単行本を刊行予定。X@yuri_suzuKii
ここから先は
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/109514337/profile_ac8eb306d1ddae6847c4adc6d35aa54b.jpg?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
定期購読《アーカイブ》
「実話ナックルズ」本誌と同じ価格の月額690円で、noteの限定有料記事、過去20年分の雑誌アーカイブの中から評価の高い記事など、オトクに…