見出し画像

「なんでもあり、自由、スタイルはないよ。それがヒップホップ」【dj honda x 晋平太】俺たちのヒップホップを語ろう《後編》

90年代日本のヒップホップを牽引し世界で活動するレジェンド、dj honda。フリースタイルでMCバトルを勝ち抜き数々の優勝歴を誇るラッパー晋平太。「親と子」ほどのふたりが令和のいま、新たなシーンを作りだそうとしている。
過去と現在、そしてヒップホップのこれからを語り尽くす!

※《前編》はこちら

【聞き手・写真=池田宏】

「日本のヒップホップをもう1回世界に持っていく」

——そもそもおふたりの出会いは?

晋平太 初めてちゃんと会ったのは2016年のUMBの司会の時やってた時に、ホンダさんに出てほしくて日本に来るタイミングで会いに行ったんですよ。忘れもしないけど道玄坂の店で、奥の座敷にホンダさんこうやって座ってて。噂ぐらいしか知らなくて、「ホンダさんマジいかつい」みたいな。

dj honda とりあえず飲みなよって。

晋平太 テキーラかけつけ3杯なんです。俺酒飲めないから、でもまあ頑張って飲むじゃないですか。隣に565さんと鬼頭さんいたの覚えてます?

dj honda 大体いるからね。

晋平太 俺目の前で見てて一番怖い先輩っすよ。妄走族は俺がブエノスとかでやってたときのスーパーアイドルですからね。

——晋平太さんの印象はどうだったんですか?

dj honda 別に。とくにない。

晋平太 ラップも聴いてないしね。

dj honda 聴いてない。

晋平太 名前も覚えてもらってなかったんじゃないですか。でも、毎年呼んでました。あるとき俺がMCバトル出てて、ホンダさんがいるから挨拶行くと、テキーラが出てくる。飲めないのに飲むしかないじゃないですか。ステージの袖にホンダさんがなぜかずっといるんですよ。とりあえず1発飲んで1回戦は勝ったけど、2回戦、俺そん時ニガリに負けたんすよ。俺にとって一生忘れられねえ、悔しい、あいつには一生負けたくなかったのに。ホンダさんのおかげで負けたんですよ?

dj honda 酒のせいじゃない?

「俺はホンダさんと一緒にラッパーになりたい」

晋平太 今もそうなんだけど、俺ホンダさんにどう思われてんのかな?っていう。「お前が来るなら俺は一緒に音楽作る」って言ってくれて、ヒップホップのスラングだとLike father, like son(父親のように息子のように)っていう言葉なのかな。俺の生きてるヒップホップっていう世界の親父みたいな人がホンダさんです。ホンダさんのスタジオに行けばやばいビートがあって、じゃあトライしてみろよって。俺はホンダさんと一緒に、ラッパーになりたいんだよね。ラップで食いたいんですよ。

dj honda だからもっと作れって。だってわかんないもん。言ってることがわからない。作ってる俺がわかんないんだから客なんかわかんないよって。難しいスキルじゃない。ただ詰めればいいって話じゃないから。一番シンプルなことが一番難しいし、一番大変なの。それをやんなきゃいけないのがこいつの仕事。だからやれって、いまできなくてもそのうちできるだろって。職人だから、勉強してできるもんじゃないし、教えられてできるもんでもない。とりあえずラップできますじゃ食えないじゃん。DJも一緒だよ。それをずっと続けなければいけないから。ずーっと、何歳でやめるとか引退とかないし、ずーっとだよ。やればやるほど退化してたらやばくない? やるにあたってやっぱアップデートしないと、それなりに。

——アップデートし続けるためには何が大切ですか。

dj honda そりゃもう作るだけだよ。やばいなと思うものを作るだけ。作曲家じゃないから、曲は作れるけど作曲してるつもりはない。ヒップホップだからだね、唯一、そういう音楽じゃない?

——今回ホンダさんとアルバムを作って、どうですか?

晋平太 最高っすよ。最高以外の言葉ある? この「パズル」ってアルバムで、俺の名前は「MCバトルをやった男」じゃなくて、「dj hondaと日本のヒップホップをもう1回世界に持ってった男」になる、それができると思ってるんで。それは俺だけじゃなくて、俺のファミリーは全員思ってる。北海道でその人間の数がどんどん毎日増えてるのは感じてるし、俺の音楽を、ヒップホップだろうがなんだろうが、俺みたいに一生懸命生きてて、それを伝えようとしてる人の声をこの街の人は聞いてくれるから。だから俺は北海道でマジなファンを増やす、それがホンダさんへの恩返し。

dj honda ステップ1だね笑。

晋平太 負けねえやっていう。それがBOSS THE MCだろうがKREVAだろうがR-指定だろうがZORNだろうが、目の前に連れてこい。それがエミネムだろうが目の前に来たらやるしかないんで、引く気はないんですよ。それを、「もうステップ1クリアじゃないの?」ってこの間言われたんですよ。でも当たり前ですよね。「それがスタートラインだろ?」っていう。

熱い思いをdj hondaへぶつける晋平太。ふたりの語りは世代を超え、高みを目指すことへの揺るぎない自信に満ち溢れていた

——最後に、おふたりにとってのヒップホップとはなんでしょう?

dj honda なんでもありじゃない。自由自由。スタイルはないよ。自由で、それを突き詰めてクリエイトしてったらそれがスタイルになるわけじゃん。人のスタイルの真似したってそれは自分のスタイルじゃなくて、それはもうファンなんだよね。ステージに立たないで客席にいる人たちなの本来。なんでもありだから惹かれた、だからやろうと、だから作りたいと思った。それがヒップホップだよ。こうしないといけないっていうのはない。ルールはなし。

晋平太 だからどんなやつがやってもいいし、そういうところが多分シンクロしてんだと思うんですよ。俺は失礼承知で言うけど、マジ毎日怒られるし、迷惑かけて心配かけてるけど、ホンダさんだって俺みたいなバイブスでやれば楽しいでしょ。俺はニューヨークの人にだって負けないスピードで負けないバイブスを打ち込もうと思ってるから。「それで売れなかったら才能ないからやめろよ」って昨日言われて、いいんですか?って。俺はやりますよ。それしかねえし。俺はいろんなことがあって考えて考えて、結局これをやってる自分が最高だろうって。

(初出:実話ナックルズスペシャル2024年冬)


ここから先は

0字
出血大サービスのオススメプラン!毎月30本近く更新される有料記事(計3000円以上)がこの値段で読めちゃいます。めちゃくちゃオトク!

「実話ナックルズ」本誌と同じ価格の月額690円で、noteの限定有料記事、過去20年分の雑誌アーカイブの中から評価の高い記事など、オトクに…