見出し画像

【TVプレイバック】昭和カルトドラマの世界◎前編

視聴者を刺激するような表現がコンプライアンス的にも自粛ムードの昨今のドラマ業界。しかし、昭和の時代には、視聴者のクレームなどお構いなしの過激な演出がなされていた──。今では、絶対ありえないそんなカルトドラマを紹介しよう。

クソドラマ乱発の黎明期

 映画や演劇などに比べて後発のメディア・娯楽であるテレビ番組は、その黎明期、一般の会社員として採用された、良くも悪くも“素人”の局員と、映画・演劇からの転職組や兼業組とがタッグを組むという、今の感覚からすれば信じ難い状況で作られてきた。その上、技術的な意味でも現在とは格段にアナログなもので、それゆえに未知の領域が大きかったことから、ドラマでさえも生放送が多く、それこそ現在ならば起こり得ない事故も多発するなど、まさに「カオス」の状態となっていた。
 しかし、東京五輪を機に、テレビ自体の普及率が急激に高まったことで、テレビドラマもまた、急速に多くの国民が注目する人気コンテンツへとなっていくこととなる。しかしそうした状況となった段階でも、テレビドラマの制作現場は旧態然としたものであり、前出の通り、映画・演劇出身のスタッフが重用される状況がしばらく続くこととなった。実際、当時は、役者などの場合も、人気俳優の多くは、現在の米・ハリウッドの映画俳優のような位置づけであり、テレビ専業の俳優は少なく、多くの役者たちが映画を本業と、そこから出稼ぎに来ているイメージが強かった。こうした認識と体制でありながらも、下手に注目度が上がってしまったことで、地上波ドラマの多くが、“映画の真似事”という感覚で作られ、本数のみが乱発されるという状況が久しく続くこととなる。これは他の業界でいえば、ファミコンブーム時の“クソゲーラッシュ”的な現象と同じようなものであるといえるだろう。
(後編に続く)

取材・文=三ツ木大蔵