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白タク行為で逮捕…「反省してるのでもう働きません」【ヤスデ丸の裁判傍聴ファイル #7】

闇バイト界隈では、金や資産を蓄えこんだ老人を狙えってのが常識かもしれないけれども、実際は年金も下がりまくりで、腰が曲がっても働かなきゃならないほどの、極貧老人が増加中の我が国ニッポン。今回は、そんな老人が生活苦の末に起こしたケースである──

【罪状】道路運送法違反(新件・審理)
74歳の男性。息子と2人暮らし。俗に言う「白タク行為」で、同業仲間もろとも逮捕される

最高月収20万円も、現在は5万円に・・・

酔客の千鳥足が踊る、平日の銀座の夜──タクシー乗り場へ向かうサラリーマンたちに声をかける男。

「9千円でいかがですか?」

 今年7月に“白タク高齢者”として4人まとめて逮捕されたうちの1人が今回の被告人だ。

 現在74歳の被告人は、8年ほど前から常習的に「無許可タクシー業」通称「白タク行為」を行っていたが、警察官の現認により逮捕された。

 この被告人、かつては風俗店やキャバクラ店での送迎を生業としていたものの、退職してからは生活苦に陥り、仕事を探すがなかなか見つからない日々が続く。

「それなら銀座がいいぞ。終電を逃して、長いタクシーの列に並ぶサラリーマンがわんさかいる。タクシー乗り場から少し離れたところで客を取ればいいんだよ。地方に住んでれば住んでるほど狙い目だ。高くなるのは目に見えてるし、相場より安く提示してやりゃ喜んで乗るだろ」

 ・・・・・・とまあそんなやり取りがあったのかどうかは不明だが、既に白タク行為を行っていた同世代の友人の勧めで、夜の銀座に立つようになった被告人。
 老人が夜の銀座で道ゆくにサラリーマンに声をかける。ある意味現代が生み出した “第二の立ちんぼ” なのかも。

「まあぶっちゃけ白タクはいますよね、特に銀座となると。ただ、一般の人がやるのは危険ですよ。大抵の白タクは、店の人間が用意した車ですし、引っ張られることはないんです。話がぜんぜん違いますよ」

 そう語るのは20年以上銀座での飲食業を生業としている男性。
 いわく、銀座の人間や店と繋がりのある “プロ” の白タクドライバーもいるというが、被告人の場合はもちろんただの素人。

 おまけにガソリン代も高速代も自腹というから、当然大した収益になるはずもなく、多いときは20万円だが最近は5万円程度の収入だったという。さすがに生活が厳しかったのか、捕まるまでの数ヶ月は頻繁に銀座に繰り出していた。

 これからは、関係性も良好という同居中の息子さんから援助を受けて生活する予定の被告人。今年で車検が切れるため車を手放すそうで、最後にこう付け加えた。

「もう運転はしたくないですし、仕事は一切しません!」

 ・・・・・・あ、そっち? 仕事をすること自体を辞める、と。頼る相手がいるからいいけど、そうするといない人はどうしたらいいんだろうか・・・・・・とかつい考えてしまう。家も仕事もないからと、軽犯罪を繰り返す老人の裁判も傍聴したことがあるが、切ない気持ちになるばかり。そういう意味では、この被告人はラッキーな方かもしれない。

 すごい覇気で生涯無職宣言かましてきたけど、息子さんはそれで納得しているご様子。とりあえず良い息子さんがいて良かったね。

<著者プロフィール>
ヤスデ丸(やすでまる)
「実話ナックルズ」の女編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。YZF-R3を手放して、車検のないニーハンに乗り換えたい今日このごろ。好きなプロテインは「ウマテイン」ミルクティー味。「1万逃歩日記」「裁判傍聴ファイル」など不定期で掲載中