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日々是暴食★トラウマめし【第40食】境港の蟹丼と米子ソープ街の牛骨ラーメン

 2020年の7月に鳥取県の境港、米子へ旅行に行った。ちょうどコロナが蔓延してきた時期で、4月には緊急事態宣言が出た。外にでれず、モヤモヤしていたので夏休みで旅行に行った。不要不急クソ喰らえでしょう。取材もなかなかできず暇だったのかもしれない。

 境港は鳥取県といっても、西の端の県境で、橋を渡れば島根県である。米子空港からJR堺線の目玉おやじ列車に乗り境港駅まで移動。水木しげるの故郷なので、とにかく鬼太郎推し。あちこちに妖怪のオブジェや看板がある。

目玉おやじ列車。鬼太郎列車などいろんなパターンがある
シートにもおやじが

 境港駅に隣接する「みなとさかい交流館」は島根出身・高松伸の設計。高松氏らしい無機質で、存在感のありドーンとしている。築十数年で雨漏りなぢがあり大規模な修繕をしたそうだが、同氏設計の島根県玉造温泉にある「ゆ~ゆ」というスーパー銭湯にも行ったが、こちらも雨漏りなどの老朽化で廃止が検討されているそうだ。かなり妙な構造の建物で機能的にも使いづらそうな変わった建物で、むしろ残してほしいものである。

みなとさかい交流館の特徴的な外観
水木先生の像

 バスで美保神社へ向かう。場所は近いがこちらは島根県の松江市になる。「えびす様の総本宮」だそうで海上安全や商売繁盛のご利益があるらしい。ちょうど雨が上がり、森には薄く霞がかかっているようだった。コロナの影響が観光客も少なく、なんだか神妙な気持ちになった。ああ、神様がここにはマジでいるなと感じる。

海から少し歩いた森に囲まれれた美保神社
静かで神秘的。過去イチにパワスポ感を感じた

 「山陰には神様が本当にいるから行った方がいい」と知人のカメラマンさんがよく言っていた。これのことかもしれない。夜になれば妖怪もいると思う。幼少の水木さんに妖怪の話をして聞かせた「のんのんばあ」はここいらの漁村の生まれなそうだから間違いない。出雲大社へ行く人は多いが、せっかくなので美保神社へも行ってみるのがオススメです。

美保関の街並み。濡れた石畳が風情あり
日本海の漁港。なんでしょう、この感傷的な感じは

 境港はベニズワイガニの水揚げ量が日本一なのだそうだ。食うしかない。コロナでどの店も営業短縮中だったが、海鮮丼が食えそうな「海月丸」に閉店ギリギリで飛び込んだ。1番映えそうなやつを頼んだらとんでもないボリューム。蟹味噌が美味でズルズルと下品にいただく。ご馳走様でした。

映える海鮮丼。約3千円

 電車で米子駅へ移動し、皆生(かいけ)温泉行きのバスへ乗った。宿は、菊竹清訓設計の「東光園」。昔から泊まってみた買ったので夢が叶った。

東光園のファサード。うーんカッコいい!

 菊竹の尖りすぎた60年代に造られたメタボリズム建築は、老朽化から取り壊しが相次いでいる。実際、1964年完成の東光園も中に入るとボロボロではあった。鳥居など和の意匠を鉄筋コンクリートで表現し、5•6階を7階の大梁で吊り上げるという大胆さ。今見ても攻めすぎている。

巨大なコンクリの柱と部屋スペースが交差。力強い
ロビーもオシャレ
庭園から見た東光園。左の全階を貫くエレベーターがアクセントになっているのがよくわかる

 4階部分がぽっかり空いている空中庭園、ガラス張りの階段、最上階のスカイルームなど、見どころが多い。次世代の建築家に衝撃を与えたという、戦後日本を代表する名建築が皆生温泉というソープが林立する地方の温泉街にあるミスマッチもよい。

4階部分に相当する空中庭園。風が吹き抜ける構造になっている
本館と別館を繋ぐ渡り廊下は水漏れも
眺めの良いスカイルームも約60年を経過し綻びが目立つ

 宿泊したのは別館の和室、6千円。おそらくコロナ禍で値段は安かったはず。昭和そのままの年季の入ったスタンダードな部屋だがWi-Fiはバリバリ飛んでいた。大浴場もいかにも古めかしい岩風呂で良かった。

別館の和室。昔ながらのホテルといった感じ。寝るときは布団を敷く

 素泊まりにしたので夕飯は近所で空いていた「ラーメンいちばん」というラーメン屋にお邪魔した。当時酒は提供していたのだろうか? 忘れてしまったがビールを飲んだような気がする。米子は牛骨ラーメンが有名だそうなので食べてみた。予想に反してすごくアッサリ。牛骨の出汁はそれなりに効いているが、豚骨のようなギトギトさはない。もやしも入っていた。ご飯と生姜焼きもいただく。ご馳走さまでした!

定食も豊富なラーメン屋さん
あっさりした味わいの牛骨ラーメン

 廃業して廃墟になった店もチラホラあるソープ街を散策。なんというか、山陰で唯一というソープ街は、何というか忘れられたようなただただ暗い雰囲気のある街だった。呼び込みのこれまた大ベテランと思われるお父さんに誘われ、老舗と思われる「H」で遊んでみることにした。それも旅でしょう。

老舗ソープの待合室。残念ながら最近潰れたようだ

 売りは20代だが明らかに30代後半のややぽっちゃり系のお姉さんは、よく喋るベテランの嬢だった。近県の出身だが、他地方へも出稼ぎに行くそうで、コロナで減った客入りを嘆いていた。イチャイチャ系ではなく、お仕事しっかり系のサービスを70分コースで堪能させていただきました。今回調べたら、このお店今年のはじめに閉業されたよう。たった4年で変わってしまうものだ。米子のソープで無常観を味わう。

 明朝、皆生温泉のビーチを歩いてみた。遠くに大山が見える。米子の人のふるさとの山か。そういえば大山の地鶏って有名だったな。食べそびれた。

侵食によって失われたビーチを復活させたそう
朝から営業しているお店も

 チェックアウトして、敷地から出る前に東光園のファサードをもう一度目に焼き付ける。やはりカッコいい。現在、東光園は設備修繕のために休館しているらしく、HPも見れない状態だ。従業員も再雇用を前提に一旦解雇されたそうだが、思いのほか修繕作業が長引き再開の目処はまだ立っていないらしい。このまま閉館とならないことだけを祈る。

またいつか泊まりに行きたい!

 コンビニで購入した大山白バラ牛乳を飲み、バスで米子駅へと向かった。今日は松江に行く。

〈続く〉

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。

https://x.com/kikuchi_BURGER

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