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一人でもできる! パーフェクト宅飲みガイド(抄・その3)(機関誌『自炊のひろば』創刊号より)

【注意】この記事は、自由炊事党機関誌「自炊のひろば」創刊号(2019年11月発行)に掲載された記事の一部を、見本として掲載するものです。都合により予告なく公開範囲を変更しまたは公開を取りやめる場合がありますので、ご了承ください。

(その1・その2の記事はこちら!)

いよいよ当日!

 ここまで十分準備を重ねてきたが、いよいよ当日である。当日はとにかく慌ただしい。朝のうちにする仕込みを済ませてから夜を待つのみである。

当日朝~数時間前までにしなければならない仕込み

 米を炊く、冷たいデザートを冷やすなどは、はじまる数時間前までに完了させなければならない。ただ、基本的には前述の行程で終わっていないものがあれば片付けるというものがメインとなる。
 また、部屋の掃除や食器類の準備なども忘れてはならない大切な準備である。コロコロなどをかけて床に落ちた髪の毛やホコリを極力取り除き、テーブルにふきんをかける。余裕があれば取り皿・コップ・箸も出してしまってよい。

 ミートソースとホワイトソースを冷凍していれば冷蔵庫で解凍する。液漏れに注意

開店準備

 お客様とは最寄駅集合にしておく。早く来て休んだり手伝ったりしたい場合や遅れたりする場合は直接来られるように住所を伝えるが、基本的には迷子が出ないよう駅まで迎えに行こう。そして、最終の買い出しもここで行う。冷蔵庫の容量の関係で冷やして飲む飲み物を保存できないため、冷たい状態で買って部屋に置いておくという方法をとりたいからだ。お客様と一緒に、ビールや缶チューハイ、炭酸飲料、ジュースなどを買い、家に向かう。

家に着いたら

 家に着いたら、まずはお客様を席に案内し、取り皿・箸・コップを配る。お手洗いの場所も案内しておくとスムーズである。上着があれば、適宜ハンガーを貸して預かる。一品目はまだつくっていないことが多いので、しばらく歓談して待ってもらう。

◆サーモンとチーズのブルスケッタ
バゲットは薄い斜め切りにして軽くトーストする
 ①を大皿に敷き詰め、チーズとスモークサーモンを1きれずつ載せ、粗挽き胡椒を全体に振る
◆鮮魚のカルパッチョ
レタスをちぎって大皿に敷き詰め、短冊切りしたキュウリ1本、くし型切りにしたトマト1個、角切りにしたアボカド1個を載せる
刺身のサクを薄く切り、①に載せる
オリーブオイル、レモン汁、醤油を適当に混ぜ②にかける。粗挽き胡椒を振る

これで1~2品目までできた。ようやく乾杯ができる。乾杯したら前菜から順に飲み食いするが、店主は油断できない。すぐさま次の料理に取り掛かり、またお客様のおかわりなどにも目を配る。とりわけお酒を飲まない人のグラスには氷が必要なので注意されたい。

食べながら作る料理

 鮮度維持や冷蔵庫の容量などの関係で、食べながらでないと作れない料理も多い。お客様と一緒に会話を楽しめないのが残念だが、食事を楽しんでもらうためにあえて存在感を薄くして料理人に徹する時間も必要である。食べ終わった皿を流しに運びながら、食べるペースに応じてどんどん料理を作っていこう。また、事前に作ってあった料理は順次温めて出していこう。最後まで出せば、あとはのんびりできる。

◆ポルペッティーニ
玉葱1個、生ハム、イタリアンパセリはみじん切りにする
挽肉500g、卵1個、小麦粉少々、塩胡椒、ナツメグ、①、粉チーズ大3をよく混ぜる
 ②を一口大に丸め、強火に熱したフライパンで焦げ目をつけながら全面を焼いていく。脂は半分捨てる
トマト缶を加えて蓋をして煮込む
◆カルボナーラ
玉葱1個をスライスし、電子レンジで2分チンする。ニンニクはみじん切り、ベーコンは短冊切りする。
フライパンにオリーブオイルを熱し、弱火でニンニクとベーコンの香りを出してから中火に切り替え、玉葱を炒め、色づいたら生クリーム、コンソメ大1を加えて煮込む
大鍋 に熱湯を沸かし、塩を加えてスパゲッティを茹でる
 ②の火を止め 、卵5個を割りほぐし、大量の粉チーズと粗挽き胡椒をかけておく
パスタのゆで汁少量を④に加えつつ、湯切りした麺をたっぷり④に絡める
◆自家製ミートソースのラザニア
オーブンを200℃に余熱する
ラザニア麺 、ホワイトソース、ミートソース、チーズを3層ほど重ねる。順番は適当でよいが、一番上はチーズに。
②をオーブンで25分焼く。

料金の精算と解散

 宅飲みの良いところは、普段できない話を人目を気にせずできるところだ。しばしば盛り上がり、時間を忘れてしまうことすらある。しかし、遠方から来てくれたお客様をはじめ、電車で来た人たちは終電の時間を気にかけなければならない。東京であれば概ね0時前くらいに出れば帰れるが、ダイヤ乱れなどの不測の事態にも注意されたい。
 そして、帰る前に忘れてはならないのが、精算である。材料費を人数で割り、10の位を切り上げるくらいで十分だろう。ただし、米や調味料などの分も計算に入れなければならない。たくさん余ったらその分を勘案しなければならない。こういった計算が面倒であれば、一律料金とするのも手だ。あまり余ってしまえば何か買ってこんど友達の家に集まるときに差し入れてもいい。レストランハシモでは原則としてそのときの材料費を算出して精算しているが、営業方針はそれぞれのやりやすい方法に任せたい。
 歳や学年・期が違う人が集まった場合の傾斜配分や、少食の人・お酒を飲まない人への配慮なども、その場に任されている。筆者の場合は、全体で徴収する額を決めておいてその中で差をつけている。また、差し入れをもらった分は考慮しない。

閉店と片づけ

 いよいよ全員が帰って閉店である。もしかしたらもっと話したいお客様や運悪く終電を逃したお客様が残って泊まっていくかもしれない。しかしもし自分が元気であれば、すぐに片づけをはじめたい。まずは余った食べ物を適切に保存する。使い捨てではない器の場合、グラス→箸→器の順に洗っていく。油っこい食器はティファールで沸かした熱湯や麺のゆで汁などでしっかり油を落としてから洗うときれいに洗える。特にグラスはビールの泡つきやドリンクの味を左右するので重要であり、そのためには日頃から丁寧にスポンジを扱うことが欠かせない。筆者は翌日夜までに洗おうと長めに期間を設け、気が向いたときに少しずつ洗い物を片づけている。

★この記事を書いたのは

秘書 はしも
“きたなうまい店”を自称する宅飲み大好きおじさん。張り切ってコース料理を作るが、デザートまで出し終える頃には酒が回って寝落ちして閉店するのが常。お代を踏み倒されたことは一度もない。あまりにも酒に弱く頻繁に終電を寝過ごした過去と決別し、家飲みの道に足を踏み入れた。ビールグラスに常にエンジェルリングを作ろうと心血を注ぎ、旅行先では地酒と郷土野菜の購入に余念がない。党内ではお茶汲みとコピー取りの担当だったはずだが、酒しか汲んでいないと噂されている。


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