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書籍紹介 大岡静二、佐藤力『縄文へ還ろう 三内丸山遺跡と五大文明への道』

 大岡静二さん、佐藤力さんの『縄文へ還ろう 三内丸山遺跡と五大文明への道』たま出版 (2021年)では、縄文文化は日本に留まらず、世界に誇るべき文明であるという視点が展開されています。著者たちは、縄文文化を「世界五大文明」の一つとして再評価すべきだと力強く訴えており、その基盤となる三内丸山遺跡の重要性を説いています。本書では、この遺跡を中心に、縄文時代の豊かで平和な社会が描かれ、現代社会に対する提言がなされています。

1. 縄文文化が持つ独自の価値

 著者たちは、縄文文化を「世界五大文明」の一つとして認識し、その価値を世界に広めることの重要性を述べています。

縄文文化と向き合っていると、その魅力に知らず知らず吸い寄せられ、それがまた自分を楽しくさせてくれます。縄文は、まさに世界に冠たる文化であり、世界四大文明に勝るとも劣らぬ、『世界五大文明』の一つに数えられてもおかしくない文明なのです。
縄文人の『ムラ』から縄文人の『ポリス』、さらに縄文人の『まほろば』として、この三内丸山遺跡の情報を世界に発信していくことは、私たち日本人に課せられた課題であり、本書を読まれた暁には、読者の方々にもご協力をいただきたいと願うものです。

出所:本書(P4)

 エジプト、メソポタミア、インダス、黄河文明と同じように、縄文文化も自然との共生、平和な社会、高度な技術力に基づいており、三内丸山遺跡はその象徴的な存在です。縄文人は千五百年以上にわたり、自然と調和した生活を送り、争いのない平和な社会を築きました。

2. 三内丸山遺跡と縄文人の生活

 三内丸山遺跡は、縄文時代における大規模な集落で、千五百年もの長期間にわたって繁栄した場所です。著者たちは、この遺跡が縄文文化の中心地であり、理想郷「まほろば」として機能していたと強調します。縄文人は、自然のリズムに合わせて暮らし、家族やコミュニティとの団欒を大切にしていました。

縄文人たちには、このような四季それぞれの家族団欒があったことでしょう。現代では、こうした団欒は薄れてきてしまっているように感じられます。縄文人たちの食事は、現代人から見ると実に贅沢なもののように思えます。野草類は季節によって変わり、常に臨機応変で創意工夫の連続です。

出所:本書(P26)

 自然の恵みを活かした創意工夫が凝らされた食生活を送り、四季折々の野草や木の実、豊富な魚介類が食卓を彩りました。

3. 祈りと自然崇拝

 本書では、縄文時代の宗教観や精神性についても触れられています。縄文人は常に自然への感謝を祈りの形で表現し、祈りは彼らの日常生活の一部となっていました。

縄文人たちは、どんな場面でも天への祈りと感謝の仕草を忘れない。動植物たちも一生懸命生きていることを知っているのだ。ただし、祈りの仕草は人それぞれ、思い思いのものだ。声を出したり木を叩いたり、あるいは水の入ったひょうたんが空っぽになるとそれも叩いたりした。

出所:本書(P27-28)

 満月の夜に土器を叩き、その音が宇宙や神に届くと信じられていました。この儀式は、感謝の念を込めて行われ、現代人に失われがちな自然への畏敬と感謝の心を思い起こさせます。

宗教のはじまりは、こうして土器を叩いて、感謝の念よ宇宙に届け、という思いだったのではないかと思います。
満月の夜、月を眺めながら思い思いに土器を叩いて、月に宇宙に感謝したのです。

出所:本書(P54)

4. 縄文文化の持続可能な平和

 著者たちは、縄文文化を「持続可能な平和社会」として評価しています。三内丸山遺跡に住む縄文人たちは、自然と共生し、資源を巡る争いがない平和な社会を築いていました。
 現代社会が環境破壊や精神的な荒廃に直面している中、著者たちは、縄文人たちが築いた持続可能で無駄のない生活が、私たちが直面する問題の解決に大きなヒントを与えると考えています。

今こそ、地球浄化に立ち上がる時期なのです。…縄文時代の何の汚れもない自然の生活を思い出し、魂を回帰させるべきではないでしょうか。

出所:本書(P55)

5. 三内丸山遺跡が示す未来

三内丸山遺跡は、日本国内でも最大規模の縄文遺跡であり、その遺物から縄文人の高度な技術力と創造力が明らかになっています。

土偶や土器、高い技術と手間が必要な漆器が生まれた背景には、縄文人たちの高度な思索と、自然と平和への祈り、高い技術力や変化への対応力があったのだろう。…三内丸山地区には、二千点以上の大小様々な土偶が出土している。

出所:本書(P99-100)

 著者たちは、この遺跡が示す未来を、持続可能な社会のモデルとして捉え、現代にも多くの示唆を与えるとしています。

6. タイトル「縄文へ還る」から

 本書のタイトル「縄文へ還ろう」は、過去への回帰を意味するだけではなく、未来に向けた提言となっています。
 著者たちは、縄文文化の中にある自然との調和や持続可能な生活が、現代社会が直面する環境問題や精神的な荒廃を乗り越えるための鍵であると信じています。縄文人の知恵を学び、自然との共生という感性を取り戻そうとすする中で、未来は良いものなっていけるのでしょう。
 著者たちは、日本だけでなく世界に向けて縄文文化の価値を発信し、持続可能な未来を築くために必要な精神性を取り戻すことを呼びかけています。


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