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書籍紹介 柴田哲孝『暗殺』

 柴田哲孝『暗殺』幻冬舎(2024)は、政治家、フィクサー、警察、巨大宗教団体が複雑に絡みあった緊迫感のあふれるサスペンスです。膨大な取材を基にしたフィクションでありながら、現実の事件や社会問題を思わせる事件と重なる描写が特徴です。
 元内閣総理大臣Tが凶弾に倒れ、その場にいた一人の男性が逮捕されましたが、果たして彼が真犯人なのか?という追及が展開されます。
 まず1987年の新聞社襲撃事件から始まります。
 日本民族派右翼の重要人物Tは、元総理Tの選んだ元号「令和」に対する反感を抱きます。
 事件の背後に潜む陰謀が次々と明るみに出てきます。G教会の内紛や自衛隊との関係も絡み合います。その展開に引き込まれます。
 T元首相の暗殺事件では、教団の特殊部隊が自衛隊内で訓練を受けていたという話や、教団が所有するエアライフルが使われた可能性も浮上します。記者たちは、T元首相と教団の間にある深い溝の真相を追い続けていきます。
 第三部では、五・一五事件、下山事件、赤報隊事件と対象事件とが地続きとなっている可能性が示唆されるなど、物語は終盤に向けて緊迫した展開になります。
 第四部では、神道系の右翼組織の会長が国葬の背後にいることが示唆され、T元首相の暗殺がとある団体や宗教団体による陰謀である可能性が浮かび上がります。また、T元首相が米国大統領との間で結んだ武器購入の密約の描写もあり、現実の政治とフィクションが交錯します。
 本書は、ただのミステリー小説を超えて、現実の事件や社会の見えていない部分に切り込んでいこうする緊迫感のあふれる展開内容に一気に読み切ってしまうような内容です。


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