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核エネルギーの軌跡:過去、現在、そして未来への道


 前回は、原子力発電の世界と日本の現状について、簡易なまとめをしました。

 今回は、核エネルギーの軌跡について、まとめてみます。

 アインシュタインが1905年に特殊相対性理論を発表したことは、核エネルギーの利用の始まりでした。その有名な方程式 E=mc²は、質量とエネルギーの関係を示し、わずか1グラムの核物質が石油1トン分、つまり100万倍のエネルギーを生み出すことを意味します。しかし、この強力なエネルギーは最初に戦争の手段として使われ、第二次世界大戦末期には広島と長崎に原子爆弾が投下されることになりました。

 戦争後、この技術は平和的な利用へと転用されました。冷戦時代に開発された原子力潜水艦の技術は、陸上の原子力発電所、特に「軽水炉」へと発展しました。しかし、安全性への配慮が行き届かず、アメリカでは1979年のスリーマイル島原発事故をきっかけに新規の原発建設が停止しました。さらに、チェルノブイリ、福島での事故が起こりました。原爆を投下された記憶と重なり、日本では特に反原発の世論が高まりました。また、核廃棄物の問題も深刻です。長期的な解決策はまだ見つかっていません。

 原子力のもう一つの大きな問題は核武装です。最初の原子炉は核爆弾の燃料であるプルトニウムを生産するために作られ、現在も一部の国が核武装の手段として原子炉を持っています。核兵器は人類を破滅に導く危険があります。

 原子力についてのこれまでの考え方では、主に戦争や電力供給のために核エネルギーが使われたことになります。これに対し、「新しい核の時代」は、核エネルギーをより安全かつ平和的に利用する時代となるような期待がなされています。若干の例示をしましたが、アメリカや中国などは先行しており、日本でも長い道のりを経て、トリウム溶融塩炉の研究を推進しています。

 核エネルギーは非常に強力で、人類にとって大きな潜在能力を持っていますが、その取り扱い方を間違えると重大な問題を引き起こす可能性があります。私たち日本人は核について痛ましい経験をしてきました。しかしながら、 今後のエネルギー危機にあっては原子力についても、経験から多くを学び、より安全で平和的な核エネルギーの利用方法を模索し続ける必要があります。


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