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令和3年度(2021年度)の航空宅配便利用状況から宅配業界の未来への一歩を考える

航空宅配便というものをご存じだろうか?航空宅配便とは宅配業者(集配する荷物を混載便によって国内輸送することで安価利用できる運送会社を指す。ちなみに宅配と言っているが、実際は集配ともに個人宅でも企業でも使える。)が輸送時に飛行機を利用することで速達を実現するサービスの事である。

航空宅配便で最も有名なブランドは『飛脚航空便』である。これは佐川急便の航空宅配便に名付けられたブランドである。他にも宅配業者が提供する航空宅配便は、福山運輸の『フクツー航空便』西濃運輸の『カンガルー航空便』がある。

あとは、航空便を名乗ってはいないが、ヤマト運輸の速達便『宅急便タイムサービス』は、近場であれば飛行機の利用は当然ないが、遠方になれば飛行機の力を借りるため、一部が航空宅配便になるというサービスもある。なお、日本郵政は宅配サービスにおける速達は現在行っていないため、航空宅配便に当たるサービスもない。

また、現在は宅配を行わない日本通運が、宅配を行っていた時代に行われていた航空宅配便サービス『スーパーペリカン便』を子会社である『日通航空』が『エクスプレスハイスピード』というサービスに名を変えて航空宅配便を行っている。なお、『日通航空』は航空宅配便以外の宅配業務は行っていない。

さて、現状における宅配航空便取扱個数が最も多いのは佐川急便の『飛脚航空便』である。平成3年度(2021年度)の取扱個数は約1040万個で、平成2年度も1000万個以上の取扱個数を誇っている。

次に続くのが、ヤマト運輸の『宅急便タイムサービス』による航空便扱い分で、平成3年度(2021年度)の取扱個数は、約900万個であった。実は、コロナ禍の影響で『宅急便タイムサービス』自体の利用を休止していたことも影響あってか、ここ数年取扱個数が微減しており、『飛脚宅配便』との差を広げられたが、当年度は前年度比126%と取り扱いを伸ばしている。

上記の2つのブランド以外は平成3年度(2021年度)の取扱個数は100万個を下回っている。これはブランド力の差もあるが、『フクツー航空便』や『エクスプレスハイスピード』だと個人での利用に制限があったりするなど、サービスに多少の差は存在すると言われている。

航空宅配便のサービスに差が出る要因は、営業所の数と輸送システムによるものと考えられる。特にヤマト運輸が持つ営業所の数としっかり組み立てられた輸送システムは他社と比較にならないともいわれている。これにより『宅急便タイムサービス』の履行に全く問題のない状態にしたうえで、現在『宅急便タイムサービス』の利用促進を進めている。

しかしながら、そんなヤマト運輸が2021年度でやめたサービスがある。『S-PAT9時便』と呼ばれるサービスである。実はこれも航空による輸送を一部適用されるサービスなのだが、『宅急便タイムサービス』が荷物を預けた翌日午前10時までの配達をするサービスだが、『S-PAT9時便』は、それより早い午前9時までに配達を行っていた。

『S-PAT9時便』始まったきっかけの一つに、佐川急便の速達便『ジャストタイム便』への対抗と言われている。『ジャストタイム便』は、『宅急便タイムサービス』同様に場所によっては航空による輸送を適用しながら、荷物を預けた翌日9時から届けることができ、更に30分単位で時間指定ができる佐川急便の看板商品である。

現在もなお、『ジャストタイム便』はあるものの、2021年度に終わることになった『S-PAT9時便』。これはヤマト運輸に限らず宅配業界全体が、労働環境の改善を目指した結果、ヤマト運輸は『S-PAT9時便』を止めることになったんじゃないかと筆者は個人的に思っている。

実は『ジャストタイム便』に限らず速達便や時間配達便は、単価も高いが、それだけの苦労が宅配ドライバーさんにかかると言われている。当然単価の高いサービスなんだからそのくらいの苦労は当然ではあるのだが、元々オーバーワークであるとしたら、そういう高単価の配達を優先して、低単価の配達にしわ寄せがくる可能性がある。更には高単価の配達自体もうまくいかないという最悪のループも考えられる。

これはあまり言わない方が良い話だが、ヤマト運輸が某A社の配達を昔請け負っていたが、元々某社は本の販売がメインで、なおかつこちらのページでも触れているように非常に売れることもあり、かなりの低単価で契約を行っていた。しかし、取扱個数が多い上に、現在幅広く販売しているため荷物が大きくなったこともあり、ヤマト運輸は現在A社の配達を基本的には行っていない。これに関しても配達しても利益が少ないことで結果的に配達ドライバーさんの労働条件を悪くするという判断もあったのではないだろうか。当然経営判断でもあっただろうが・・・。

とはいえ、お客様というのはシビアである。荷物は早く届いてほしいのである。それを考えると現実的な配達ではないんものの、高単価であればドライバーさんに負担掛けても、それだけの報酬を与えることもでき、経営的にも潤うような商品として『宅急便タイムサービス』をヤマト運輸は残すであろうし、『ジャストタイム便』を佐川急便は止めることはないだろう。

そう考えると、労働環境が改善され、経営力が上がるように持っていくためには、やはり宅配業者各社は、航空宅配便をはじめとした高単価商品をもっと売らないといけない。その上で、配達の履行を目的にドライバーさんも増やさないといけない。これをどちらも実現するならば、間違えなく経営改善しながら労働環境の改善もできるであろう。

あとは、仕方がないが単価を上げるか、配達時間が劇的短縮できるような配達システムの改善が必要だが、正直どちらもそう簡単な話ではない。現在インフレ傾向に向かっているため、それを切り口に単価アップの交渉を積極的に行うしかないが、実際には集荷先のお客様自体も配達経費を抑えることで経営改善を目指していたりするので、結局は交渉に難航する。かといって配達システムの改善に至っては一朝一夕ではできないしそれなりの優秀な人材しか思いつかないであろう。

冒頭に、宅配業業者について集配する荷物を混載便によって国内輸送することで安価利用できる運送会社としたが、実際にはいろいろな苦労が重なってこの安い運賃での集配を可能にしているのだ。でもその結果、宅配業者は安価を求めすぎたところはあるのだろう。もちろんお客様は安いに越したことが無い。しかし、それでは宅配業者各社は、持続可能な会社となるのだろうか?

昨今声高に叫ばれている、SDGs(Sustainable Development Goals 日本語訳すると『持続可能な開発目標』)その17つの目標から【目標8】働きがいも経済成長も【目標9】産業と技術革新の基盤をつくろうというものがある。宅配業者が働きがいも経済成長も求めるのであれば、やはり高単価商品の営業か単価の値上げは必要であり、宅配業者にとっての技術革新の一つが配達システムの改善なのです。宅配業者の未来を語る上で、この二つは避けて通れない。

という事なので、ドライバーの皆様には是非とも現実的な一歩として、航空宅配便の営業をお勧めしたいし、宅配業者を使うお客様には航空宅配便を有効的に使ってほしい。例えば、最近九州の通販会社が力をつけておりますが、メインの販売先が関東であるならば、翌日午前につける航空宅配便というオプションをつけてみるのは如何か?当然、配達料は高くなりますのがそれでもいいから早く届けてほしい購入者様はゼロではないはず。

宅配業者の未来への一歩。これが正解とは当然限らないので、他にいいアイデアがあれば、会社内で議論すべきである。そして、やれることから始めなければならないのだ。

#未来のためにできること

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