ライブの楽しみ方はそれぞれ

ライブは楽しい。
それは私にとって当たり前ではなくて、だからこそ大切なものだ。

当たり前でない理由としては様々なことが挙げられる。しかしまぁ、それが様々である原因を探ると、私自身の性質によるところが大きい。つまり、とても神経質であること。そもそもライブ以外のシチュエーションで考えたときに、「大きな音」「多くの人」「アルコールを含む混合臭」など、これらは全て私にとってひどく苦手なものだ。
ライブに通うようになってこの様な性質が改善されたかというと全くそんな事はなく、むしろよりライブの空間でのみの無敵性のような側面が強化されていっている感覚がある。

なぜ、そんな苦手な環境に通い続けているのかと問われると、まず好きな音楽を爆音で聴けること。ライブで鳴っている音というのは凄く大きくて、曲のダイナミズムが合わさると、震えるような、背筋が伸びるような、はたまた一瞬で弛緩させられるような、様々な現実と錯覚の境目を味合わせてくれる。
そしてパッケージされていない音に対する自分の反応を最大限に楽しめることだ。これには上記の例も含む。音源では聴こえにくいフレーズもライブではとても良く聴こえたりもする。バンプのギターフレーズなんかは特に。そういうのを記憶として持ち帰って、さらに聴き込むための材料として、より曲のことを知っていける。
また、私の場合はだが、いつしか音楽を大人しく聴くことが出来なくなってしまった。自然と身体が動く。身体のどこかでリズムを取っていないと落ち着かない。これはもう無意識下で行われているからどうしようもないのだけれど、問題は枷をかけなければいけないことにある。例えば街中で、足を踏み鳴らして頭を振っている人間を見かけたときを想像してみてほしい。人によっては通報もやむなしであろう。私も通報はされたくないので、身体の動きを最小限に、人に見られても「ちょっと気持ち悪いやつがいるな」程度で済むイメージで、自分の動きを制限しながら音楽を聴いている。伝わらなくて良い。音楽を聴くことは、とても楽しいけれど少し難儀なものでもある。
この事こそが、私がライブに通い続ける、「音楽が好き」に次ぐ理由だ。ライブの現場では、音楽を楽しむことに対して自由である。人に危害を加えたり、会場で禁じられている行いをしなければ。私にとってはこの、「音楽を聴くのに枷がない」ことが最高で、だからライブが大切な時間なのだろう。


さて、最近では、フェスがある度に話題にあがるように思われる「ダイブやサークルモッシュ」への賛否。
私の態度を明示しておくと、大嫌いです。
ただ私の場合は、自分自身も人よりは大きい動きをしている自覚はあるし、そもそも身体を動かして曲に乗る姿勢自体には全面的に賛成です。
ダイブや(サークル)モッシュは、そもそも人に危害を加えやすい前提があるじゃないですか。だから私はやらないし、自分の近くで起こったら不快に思う。ダイブなんて結局、他人の頭上を転がる訳で、あれを危険だと思えないのは私には理解出来ないし、理解しようとも思わない。モッシュにしても、やりたくない人を巻き込む様なのは論外として、サークルで囲うにしても明確に他者のスペースを侵害して憚らない連中なのだから、近寄らないのが吉だろう。

私は前述の通り神経質なので、爆音とパフォーマンスに集中している時に後ろからヒトが転がってこようものなら只管に不快なので、そういう傾向があるバンドのライブでは前に行かなくなった。
なんか、いますよね。「譲り合い」を言ってくるダイブ等したがりの人ら。お前らは何を譲っているんだ。

どこにいても、「音楽をよく楽しめる」のが理想だと思う。もちろん他者に押し付けるのはあれなんでしょうけど。でも他者からそれを侵害されるのは何よりも嫌だから話題にあがるのだろう。わかる。
私は別に、前方で静かに見る人がいても、後方で身体を動かしながら見る人がいても、それはそれで尊重されるべき在り方だと思う。手を挙げるリズムも、別に誰かと一緒じゃなくたっていい。裏のリズムなのに周りは全員表で手を振ってるみたいなことはザラで、あなたが取りやすいリズムで乗ればいい。
大切なことは、「人に危害を加えないこと」と、「観衆へ届く演奏や演出を阻害しないこと」だと思っている。
前者は既に書いた通りだ。よく言われるのが、「嫌なら後ろで大人見しろ」なんですけど、これで「後ろはマナーがよくて平和な空間なんだな」と一律でなってしまうのも多分勘違いだし、「後ろは大人しく見なければ」みたいなのは押し付けがましいでしょ。曲に合わせて、多少なりとも周りをケアしながら好きに曲に乗ればいいと思う。

後方にも、それなりに不思議な人はいる。
演奏に負けない声量で会話をしようとする人とか、一生スマホを光らせて遊んでる人とか。あまりにも自分が楽しむうえでやめて欲しいと思ったときには、やめてもらうようにしている。意外とすんなりいけるので、抵抗が薄い人はやろう。こちらが声を出す必要はない。肩を叩くなり何なりして注意を引かせて、目を見開いて口パクで「演奏中だろ」とやりながら、やめて欲しい行動をジェスチャーで示しましょう。何度かやっているけど、失敗した記憶はないです。
あと、倒れた人はすぐ助けましょう。これを頭の片隅に置いておくだけで視野が広がるので、他者に危害を加えるリスクも減ると思います。


音楽を楽しむ空間で、楽しみ方はそれぞれだから難しいですよね。個々の感情は千差万別な方が健全だけど、だからこそ譲れないラインを自分の中で持っておきたくて、分かり合えない他者はそれはそれでぶつかりながら距離を見定めるしかない、みたいな。

色々書いたけど、それでもなお私はライブに通い続ける。
結局、今の私にとって、どこにも平和はないですからね。「楽しい」は万人にとって自分だけのものなのでしょう。少しばかりの思いやりを携えながら、勝ち取っていこうと思う。


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